会社員生活は敗者のゲーム?
最近、仕事において僕のマネジメントが至らないがゆえに大きな損失を出しているプロジェクトがある。もちろん、上司から強く責められており反省しつつ悩み続けている状態だ。
この調子だと今期の評価は低く、任せてもらった重要な仕事は他の社員の手柄になるんだろうなと思っていた。副業を調べたり転職先を探したり、キャリアのリスクヘッジを考え始めていたくらいだ。
ところがこの前、ひとりの社員がメンタル不調で会社を休み形成が変わった。
その社員は僕が過去に担っていた仕事に取り組んでいたが、あまり出来がよくなく結果にも繋がっていなかったらしい。そのことを僕が知らぬ間に上司から強く言われていたようで、その責任からメンタルが弱ってしまったのだそうだ。
そして結局その仕事は僕のもとに舞い戻ってきた。「やっぱりお前がやってくれ。大変かもしれないけど頼んだよ。」と。
休んでいる社員には申し訳ない気持ちになるが、何もしていないにも関わらず、こうして僕の評価は高まったのである。
この現象はどこか身に覚えがあるな、と考えていたところ、思い出した本が一冊ある。チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』だ。
この本は株式投資に関わるもので、そのなかでもインデックス投資という広く分散されたファンドに資金を積み立てて長期的に継続することで、低リスクで資産を増やしていく方法を紹介している。プロの投資家が個別株投資をしても、素人が何も考えずに行うインデックス投資にトータルのリターンでは勝てないと言われている。
新NISAも始まり今では王道となったインデックス投資だが、この本はその古典的名著だ。
この中で著者のエリスは、インデックス投資のことをテニスに例えて説明している。
テニスには2種類のゲームがあり、一つはプロテニスプレイヤー同士のゲームで、もう一つはプロではないアマチュアおよびその他大多数のゲームである、というものだ。
プロのテニスでは、長いラリーが繰り返された末に強力なウイニングショットで勝利が決まる様な、「勝者の行動」によってゲームの展開が左右される。
一方で、アマチュアのテニスでは素晴らしいショットなどはなかなか見られず、得点はほとんどが相手のミスによるものだ。
つまり、アマチュアの試合は全てが「敗者のゲーム」であるということを言っており、投資の世界もこれと同じで、プロではない投資家は「勝者のゲーム」(個別株投資)に参加してはならず、「敗者のゲーム」(インデックス投資)でミスをしない運用を心がけるべきだというのが本書の主張となる。
これが、上述の僕の社内での出来事とリンクしてしまった。大きなプロジェクトを担うことになりチャレンジをしていたが、そのチャレンジの失敗に落ち込んで転職していたら、投資で言うところの市場からの撤退、つまり勝者のゲームでの敗北を意味していただろう(転職の場合は別の市場に移動するだけだが)
しかし、少し踏ん張って会社に居続けていただけで、自分が何かを変えたわけでもないのに、他の社員がミスをして相対的に自分の評価が高まった。テニスで言うところの相手のミスで得点を重ねたようなものだ。
もちろん優秀な社員ばかりで構成されているプロフェッショナル集団の会社ではこうもいかないだろうが、「敗者のゲーム」の様相を呈してしまう会社は多いだろうと思う。
あまりポジティブではない働き方かもしれないけれど、会社員として働くことも「敗者のゲーム」だと思って辛い時期を耐え忍べば、自然と時間が解決してくれるケースは多くあるんだろうな、と思ってしまった。
身も蓋もない言い方をしてしまうが、所詮は会社員だ。大切なのは勝つことではなく、負けないことなのかもしれない。
