合理的な資産形成と不合理で庶民的な生活
酒を飲みながら「どうすれば金持ちになれるか」を考えていることがある。その酒を買わずに貯蓄して投資すればいいのは明白だが、何かしら自分のなかで正当化させる理由をつくって飲んでしまうのだ。実に不合理だと思う。
その一方で、僕は自分の人生をできる限り合理的に生きていこうと考えている。矛盾しているように聞こえるかもしれないが、本当にそう思っているのだ。
合理的にしようと思っているのは、お金に関わる資産形成と仕事におけるキャリアプランのことであり、これらを何の設計もないまま不合理に動いてしまうと大変なことになってしまう。だからせめてここだけは合理的に設計して暮らすことを最低条件にしている。
というのも、世の中にはお金に関わる価値観が不合理な人間が多数いると気づいたからだ。典型的なのが「株を買うのはギャンブルだから怖い」と言いながらも、毎年「夢を買う」と言って宝くじを買っている様な人たちだ。別に彼らの自由なので何か言える立場ではないが、株式の平均利回りと宝くじが当たる確率を少し調べれば、どちらが再現性の高い夢の買い方であるかは一目瞭然である。
不合理な人間が多数派を占めているということは、合理的な戦略を取るだけで多くの人を上回ることができるということでもある。負けないことこそが勝ちを意味する。だから、資産形成においては合理的な方法を採用して、証券口座の自動積立設定で対処し、自分の不合理な心理が入る余地がないようにしている。
僕が合理的と不合理を強く意識したのは行動経済学の本を読んでからだ。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンやリチャード・セイラーの本も面白いが、個人的に強く影響を受けたのはダン・アリエリーである。
行動経済学という学問は、既存の経済学が人間は合理的に行動することを前提として分析されていることに疑問を持つことから始まっている。全人類が合理的に行動するのならば説明がつくが、人類には金持ちになりたいといいながら酒を飲む人間がいたり、資産を増やしたいのに株式ではなく宝くじを買う人間がたくさん存在するのだ。
アリエリーの語り口はユーモラスであり、不合理な人間を受け入れながら指摘をしている人間味がある。様々な実験を通して、いかに人間が不合理な人間であるかを説明してくれる。
この本を読んでいると、不合理なことを考えている自分や他人を許すことができるようになる。「人間だもの」とはよく言ったもので、金がないなぁと言いながら税率の高いタバコを吸っているおっちゃんも愛らしくみえてくるわけだ。(もちろん本書はそういった人を許すことを目的としているわけではない)
合理的に生きたいのか、それとも不合理に人間らしく生きたいのかと言うと、回答するのは難しいかもしれない。
ただ、現代は行動経済学の様に人間が不合理であることを説明できる理論もあれば、そんな人間が合理的に人生設計できるだけのテクノロジーもある。
合理的に生きることは人生の成功を助けてくれるはずだが、人生を楽しむためには不合理を受け入れることも重要になりそうだ。
