インドで大きな反響を呼んだ、コルカタ医師暴行殺人事件【1】✮コミックエッセイ✮
昨年2024年8月9日、インド・西ベンガル州の州都コルカタにあるRGカー医科大学病院で、31歳の女性研修医が性的暴行を受け殺害される事件が発生しました。本事件はインド国内外で大きな反響を呼び、女性の安全や医療従事者の労働環境に対する抗議行動を引き起こしました。
この事件は、女性研修医の悲惨な死を通じてインドの医療現場や社会全体における女性の安全性の欠如を露呈しましたが、深堀りして調べたところかなり闇の深い事件でした。抗議行動は政府に一定の対応を迫りましたが、依然として根深い女性差別や法の不備、医療環境の改善には継続的な取り組みが必要ですし、そもそもインドの汚職蔓延体質を改善していかねば根本的には解決しないでしょう。
本事件の衝撃とその背景にある問題を忘れず、被害者の無念と社会の変革への訴えを風化させないためにも、事件から一年が経過したこのタイミングで再掲載&共有します。何の罪もない(寧ろ正義の心があった)彼女の命が奪われた事実と、そこから生まれた抗議の声を未来につなげ、誰もが安全に生きられる社会を築くための一歩になるよう願いを込めて。
※:Ⅰ〜Ⅳの各漫画と本文は、昨年2024年初出時点の情報で書かれています。
※:被害者女性の名前と顔が御遺族の意思等に反し拡散されてしまった事実があり、当サイトではそちらの情報公開は控えております。
Ⅰ.事件前日8/8〜当日8/9 ✴️

2024/8/19追記:セミナールーム(3階は大きめの会場だった)で休む前に病院内の人物と患者の治療について話しており、3時頃には寝ている姿が確認されている。
2024/8/23追記:検死報告書の内容によれば骨折はなく精液は誤った噂であり「外性器と内性器」の重量だったと釈明。しかし医療専門家は「報告書の調査結果は抗議活動中の医学生や研修医の主張と一致しており、外傷から強姦と殺人は一人の人間の犯行ではなく複数の人物が関与している」と主張。
Ⅱ.二面性がある犯人の人物像 ✴️

サンジェイ・ロイが見ていたポルノビデオは人が通常見る類のものではなく捜査官は「彼は倒錯した精神の持ち主だ」と語っている。また、義母のドゥルガ・デビさんは「娘が告訴状を出した時に警察が行動していれば、31歳の医師はこのようなことにならなかったかもしれない」と話している。2022年8月8日と2023年5月13日に告訴状を警察に提出したドゥルガ・デビさんの娘(サンジェイ・ロイの4人目の妻)は、本事件が起こる前年2023年8月10日に癌で亡くなった。
サンジェイ・ロイは酩酊時非常に態度が悪いという近隣住民の話や、警察関係者である事を利用し仕事を仲介するとお金を騙し取ったり、警察のバイクを使い無料でガソリンを調達していた話もある。
1.Xで頂いたご質問と回答
🇮🇳夫「カーストは関係ない。でもそういう見方をしてる人もいる。今回抗議活動が大きくなったのは教養レベルが高い医者同士でサポートできているからだと思う。医者が人の命を助ける仕事なのでその人達を助けようと一般の人もサポートしてるかも。インドではお金が有るか無いかがすごく大事」(続く) https://t.co/kxadUdXXSw
— 津籠茶里🇯🇵🙏🇮🇳夫 (@sari_tsugomori) August 18, 2024
インドでは医療従事者を守る厳格な法律がないらしく、それも相まり今回大きいムーブメントになっているかもしれません!
— 津籠茶里🇯🇵🙏🇮🇳夫 (@sari_tsugomori) August 18, 2024
Ⅲ.不審点だらけの学長と病院の暗黒面 ✴️

大規模な抗議行動を引き起こしたコルカタの医師強姦殺人事件は、最高裁に持ち込まれた。インドの最高裁は元学長と警察当局を激しく非難するとともに、西ベンガル州政府の不適切な初期措置に対しても疑問を呈し激しく非難。(2025年1月20日、コルカタ地裁はロイに対し終身刑を言い渡す。罪状は強姦、過失致死、殺人)
RGカル医科大学病院は元々私立病院で、1886年カルカッタ医科大学として設立、私立としてはアジア初の私立医科大学だった。1958年に国立病院に。
1.元学長による過去の怪しい行動
2023年1月…検死の為に運ばれてきた遺体が死者両親の事前同意なしに「解剖実習」(←もしや撮影に‥‥)に使われていたとされ、ゴーシュ氏は内部調査を行うことを約束。←その後不明
2023年5月…西ベンガル州政府は、RGカル大学の学長をサンディプ・ゴーシュ氏から別の博士に交代任命する命令を出した。しかし校長室がゴーシュ氏によって施錠されていたため、新学長は職務を遂行できなかった。24時間以上経過した後にこの異動命令が覆されゴーシュ氏が学長として留任。←??
2021年…ゴーシュ氏の監督下にあったRGカル医科大学病院での不正財務疑惑に対し西ベンガル州政府が調査を行うと発表したが、BJP(インド人民党)はこの調査が適切にされるかどうか疑わしいと非難。
コルカタ強姦殺人事件の最高裁判所審理が始まる数時間前には、西ベンガル州政府保健局がゴーシュ氏に対し「特定の悪徳請負業者」との間に「犯罪的つながり」があり、病院敷地内の複数の工事で「共謀入札」が行われていたとして告訴状を提出。←他にも複数の財務不正があった模様
🇮🇳夫「地元警察みたいにゴーシュを拷問すれば良いのに。なぜCBIは優しく聴いているのか」←
最高裁判所で活動する弁護士のウジャワル・ガウル氏とロヒット・パンディ氏、テランガナ州の医師一人が最高裁判所に送った書簡、以下引用
“This case is not merely a bizarre violation of an innocent life, it is an assault on the very soul of our nation, an egregious affront to the ideals of justice and humanity that our great Constitution upholds”
訳:❝この事件は、単に罪のない人の命を侵害した奇妙な事件というだけでなく、我が国の精神そのものに対する攻撃であり、我が国の偉大な憲法が掲げる正義と人道の理想に対する甚だしい侮辱である❞
2001年の事件も相当闇が深く悲しい内容でした(泣)。
Ⅳ.類を見ない大規模抗議活動やストライキ ✴️

1.医療従事者達の過酷な環境
インド国内の医師や看護師は性別を問わず、患者やその家族から医師が暴行を受けているという報告が再び注目されている。インドでは医師の30%、看護スタッフの80%を女性が占めており、男性同僚よりも被害を受けやすいのが実情。
病院設備や警備体制にも問題がある。女性医師専用の休憩室やトイレがない病院が多く、女性医師は施錠できない部屋で長時間勤務の後休憩しなくてはいけない。部屋で休んでいる最中に知らない男達が侵入してきて「患者をみて欲しい」と突然身体を触られ起こされた女性医師や、集中治療室での夜勤中に政治家の名前を振りかざした男達が押し入り薬物を要求された医師もいる。
2.日本での抗議活動
当時日本での抗議活動について、SNSコミュニティでの意見では、「素晴らしい提案だけど日本でやっても意味ない、ソーシャルメディアで声を挙げた方が効果的だ」「日本人へのインドのイメージが悪くなる」という意見が多くあった。
3.インド医師会による過去10年間で最大規模のストライキ
インド医師会は2024年8月15日夜に、RGカル医科大学病院事件とその後起きた身元不明の暴徒による同病院での破壊行為に抗議するため緊急を要する以外の大半の診療科を17日朝から24時間全国で業務を停止すると発表。
4.抗議活動を邪魔した暴徒
2024/8/21時点で暴徒はSIT(インドの特別捜査チーム)により37人逮捕されており、暴徒による破壊行動は組織的に計画されたものと見られている。地元警察がいたにも関わらず暴徒が中に病院内に侵入し破壊行動ができたことに疑問の声も挙がった(地元警察の役立たず感または故意に暴徒を見逃した=なぜ?誰の指示で?)。
※インドの特別捜査チーム(SIT)は、重大犯罪の捜査のために任命される特別チーム。インド最高裁判所、インド連邦政府、州政府は事件に関与する捜査員への指揮権を有する。
5.デモ抗議に参加した被害者同僚医師の言葉
I think this incident has ignited so much rage and touched so many people.
Often in our society, many people tend to blame the victim.
They say 'why was she out with a guy?' or 'why was she wearing that dress?' or 'why was she out at that hour in the night?'
It is reprehensible to hold a woman accountable for the man's actions in any case. Now many of us are wondering who will people blame?
It’s time we as a society took a step back and asked ourselves this question: whose fault is rape, really?
訳:❝この事件は多くの怒りを呼び起こし、多くの人々に影響を与えたと思います。
私たちの社会では、多くの人が被害者を責める傾向があります。「なぜ彼女は男と出かけていたのか?」「なぜ彼女はあのドレスを着ていたのか?」「なぜ彼女は夜のあの時間に外出していたのか?」などと言います。
いずれにせよ、男性の行為に対して女性に責任を負わせるのは非難されるべき事です。今、私たちの多くは、人々は誰を責めるのだろうかと疑問に思っています。
私たち社会は一歩下がって、自分自身にこう問いかける時が来ています。【レイプは本当は誰のせいなのか?】❞
Ⅴ.余談:性犯罪者の再犯率について思うこと
痴漢とか性犯罪する人達って過去に成功体験ある人多い気がします(被害者としての経験から)。被害者が泣き寝入りしてるか、私のように深く気にしないようにしているかで、過去に性犯罪または性犯罪まがいのことをしてる人は常習犯がかなり多いと思います(IMO)。女性だけでなく男性も危険な目に遭う今の世の中‥‥皆様お気をつけてください。
本シリーズ『コルカタ医師暴行殺人』は続きます。
# 関連記事
# 初出・更新履歴
本記事は「コルカタ医師暴行殺人【1】事件前日8/8〜当日8/9(初出:2024年8月19日)」「コルカタ医師暴行殺人【2】二面性がある犯人の人物像(初出:2024年8月20日)」「コルカタ医師暴行殺人【3】不審点だらけの学長と病院の暗黒面(初出:2024年8月21日)」「コルカタ医師暴行殺人【4】類を見ない大規模抗議活動やストライキ(初出:2024年8月22日)」をnote用に本文を書き直しまとめたものです。
# 当サイトについて
当サイトは、インド人夫が語るインドカルチャーやニュース、私達国際結婚夫婦の日常をメインに綴っています(夫がネタ放出、私妻が編集作画)。
夫は北インド出身です。「インドでは――、」とよく語りますが、インドは広い上に多民族多宗教多言語国家のため、南インドなど地域により異なる場合があります。その点ご留意いただき、北インドのインド人はこういう感覚なのか〜という感じで読んでいただけると幸甚であります。基本的には楽しんでもらえるような記事を発信していますが、真面目な題材もよく扱いまっす!(参考文献を併せてご覧いただくとより詳しく知ることができます。)
# 参考文献
1) Alka Jain. Kolkata doctor rape case: CBI investigation reveals that ‘victim worked for 48 hours at a stretch’. Mint(閲覧日:2024年8月18日)
2) Times of India: Kolkata doctor rape-murder: Post-mortem report highlights brutal assault, confirms multiple injuries, signs of struggle.(閲覧日:2024年8月18日)
3)Times of India: Kolkata doctor death: Who is Sanjay Roy? Civic volunteer arrested in RG Kar Hospital rape-murder case.(閲覧日:2024年8月19日)
4)Ravik Bhattacharya, Atri Mitra. Kolkata doctor’s rape-murder: Accused’s wife complained of assault twice, police took no action. The Indian Express(閲覧日:2024年8月19日)
5)Rajesh Saha, Sahil Sinha. Kolkata doctor's rapist had liquor before crime, used to watch porn: Sources. India Today(閲覧日:2024年8月19日)
6)Avijit Gupta. Kolkata Rape-Murder Case: Accused Sanjay Roy Revealed Details Of The Incident. newsX(閲覧日:2024年8月19日)
7)Money Control:Kolkata rape-murder accused Sanjay Roy's mother: 'Been in trouble ever since I gave birth to him’(閲覧日:2024年8月19日)
8)Times of India: 23 years ago, a medical student at RG Kar Medical College was found dead, police claimed it was suicide but High Court ordered probe after allegations of murder for trying to expose a porn ring: Details.(閲覧日:2024年8月20日)
9)Economic Times: Kolkata doctor rape-murder case: CBI keen to know call details of ex-principal of hospital; grill him for third day.(閲覧日:2024年8月20日)
10)ARUNIMA. 'Answers Changing Every Round’: Ex-RG Kar Principal Sandip Ghosh Falters in CBI Questioning. NEWS18(閲覧日:2024年8月20日)
11)MADHUPARNA DAS. 'Criminal Nexus, Collusive Bidding': FIR Against RG Kar Ex-Principal Sandip Ghosh On Health Department Complaint. NEWS18(閲覧日:2024年8月20日)
12)Ananya Bhatnagar. 'Why Was FIR Filed Late At Night': SC Questions Initial Action, Ex-Principal's Role In Kolkata Rape-Murder Case. NEWS18(閲覧日:2024年8月20日)
13)The Telegraphindia: Nostalgia marks start of RG Kar centenary.(閲覧日:2024年8月20日)
14)Kalyan Ray. IMA announces 24-hour closure of non-emergency services from 6 am on Aug 17 amid Kolkata hospital vandalism. Deccan Herald(閲覧日:2024年8月21日)
15)Deccan Herald: IMA condemns vandalism at RG Kar Hospital, calls emergency meet with its state branches.(閲覧日:2024年8月21日)
16)Soutik Biswas. Indian women lead night protests after doctor's rape and murder. NEWS18(閲覧日:2024年8月21日)
17)Nivedita Dash. Kolkata rape and murder: 9 arrested for mob violence during protests at RG Kar Medical College IndiaTV(閲覧日:2024年8月21日)
18)Siddhartha P Kar. Siddhartha P Kar. Addressing underlying causes of violence against doctors in India. The Lancet(閲覧日:2024年8月20日)
19)Soutik Biswas. Rape and murder of doctor in hospital sparks protests in India. BBC(閲覧日:2024年8月21日)
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