【第7章】 黒雲 〜中②編〜
第1章『 ピエロ 〜前編〜 』
前話 『 黒雲 〜中①編〜 』
あたしは次に、オオタカのところへ向かった。
『空の番人』オオタカならなにか攻略法を……。
「知らんホォ~ク。空の番人であるワレでさえ、黒雲にはめったに近づくことが出来ないホォ~ク」
オオタカの言葉に肩を落としながらも、
「じゃあ、アナタにとっての牛肉みたいに、黒雲にもなにか取り引き出来るような大好物ってないのかな?」
わらにもすがる思いでたずねると、
「ホォーーーーホォ、ホォ、ホォ!!」
オオタカが大笑いした。
「黒雲に好物なんてないホォ~ク。ワレのときみたいに、黒雲となにかを交換するのは無理ホォ~ク」
それでも、あたしはめげずにオオタカへ質問した。
「じゃあさ、そもそもの話になっちゃうんだけど、黒雲はなんで、あたしが太陽へ向かうのを邪魔するのかな?」
「ホォ~~ク?」
オオタカがあきれた顔で、
「そんなの、月から太陽を守るように、黒雲が頼まれてるからホォ~ク」
当たり前のように答えた。
「え?」
ビカビカビカ~~~ッ。
脳内がフラッシュする。
「な、なにそれ! 初耳なんだけど!! どういうこと、どういうこと?」
「どういうこともなにも……」
あたしの食いつきに、オオタカがたじろぎながら説明してくれる。
「太陽は誰にでもやさしいから、自分を燃やして発する光エネルギーを、地球も含めてすべてのものに等しく分け与えてるホォ~ク。特に、月は太陽から光エネルギーをもらって輝いていて、太陽のマブダチだホォ~ク」
「ふんふん、それでそれで?」
「それで、マブダチの月はお人好しな太陽のことを心配して、太陽の光エネルギーを牛耳ろうと近づく悪党がいたら排除するように、破壊者の黒雲へ頼んでいるホォ~ク」
オオタカの説明を聞いたあたしは、月の明かりが太陽光の反射によって光っていることを、理科の授業で学んだのを思いだした。
太陽と月がマブダチ、なのはなんとなく分かる。
でも、納得出来ないことが、ひとつ。
「じゃあさ、なんで、黒雲は月の言うことを素直にきいてるの? あんなに底意地の悪い黒雲が、月の願いを聞き入れてる理由が分からないんだけど?」
「そんなの、黒雲がイナズマを放つための光エネルギーを、月からもらってるからだホォ~ク」
オオタカがあきれたように首をふりながら、
「おまえ、ちゃんと学校の授業を受けてるホォ~ク?」
「そ、そんなのちっとも科学的じゃないよ~~!」
反論するあたしに、
「ホォ~~ク? カガクってなんだホォ~ク? 頭の悪さにガクガクしちゃってるホォ~~ク?」
オオタカがさらに馬鹿にしてくる。
「あのねえ~~雲がイナズマを発するメカニズムは……」
学校で学んだ知識を説明して、オオタカをギャフンと言わせようと思ったけれど、やめた。
だって、あたしが人間からカラスに変身させられたこの世界は、ぜんぜん、まったく、科学的ではないからだ。
それよりも、黒雲攻略のナイスアイディアが浮かんできた。
黒雲が、月の言うことをきくんだったら……。
「黒雲があたしの邪魔をしないように、月へお願いすればいいんじゃん! シンプルイズベストじゃん!」
「それは、無理ホォ~ク!」
オオタカが首を横にふり、
「黒雲は、月が光ってる夜に光エネルギーをもらうから、月の近くにずっといるホォ~ク。おまえが月へ近づいた瞬間、黒雲からイナズマ攻撃を受けるホォ~ク」
「ん? ちょっと待って……」
オオタカの説明に違和感を覚えたあたしは、
「黒雲が毎夜、月から光エネルギーをもらわなければいけないってことは……もしかして、黒雲は月からもらった光エネルギーを一日しか保有出来ないの?」
また馬鹿にされるのを覚悟で訊いた。
「当たり前だホォ~~ク!」
オオタカの残忍な顔が目の前まで迫り、
「底意地の悪い黒雲が光エネルギーをずっと持てたら、月の頼みなんて素直にきくわけないホォ~ク」
呆れたように言うなり、ブワッと大きく羽ばたいて、
「これも、カガクじゃないホォ~~ク?」
あっという間に地平線の向こうへ飛び去っていった。
「ずいぶんと馬鹿にされたけど、黒雲攻略の大きなヒントをオオタカから教えてもらったんだから、前進、前進。『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』っていうもんね……」
あたしは、オオタカから教えてもらった情報を頭の中で整理して、
①黒雲は毎夜、月が光ってるときに、イナズマ用の光エネルギーをもらっている。
②黒雲は、月からもらった光エネルギーを一日しか保有することが出来ない。
二つの重要情報に集中して、黒雲攻略のアイディアを模索することにした。
「黒雲は毎夜、月が光ってるときに、イナズマ用の……」
コツン。
「ん?」
なんか分からないけれど、いま頭の中で、コツン、と音が鳴った。
「黒雲は毎夜」
ここは無音。
「月が光ってるときに」
コツン。
お?
「月が光ってるときに」
コツン。
おお?
「月が光ってるときに」
コツン。
「……で?」
無音。
「……いやだから、『月が光ってるときに』からの、『コツン』の意味が知りたいんだってば〜〜〜!!」
『おまえ、ちゃんと学校の授業を受けてるホォ~ク?』
オオタカの馬鹿にした顔が浮かぶ。
「なんでいま、オオタカ? ていうか、月とか太陽とか、理科の点数まあまあいいわよ、あたし! ナメんなよ、オオタカ!!」
ん……?
理科……?
突如、脳内に浮かんでいたオオタカの顔が、理科の教科書にすげ替わり、パラパラパラとページがめくられていく。
そして、最初から決まっていたかのように、あるページで教科書パラパラが停止した。
「これって……」
月の満ち欠け表じゃん──。
「あたし……黒雲の弱点、見つけちゃったかも……」
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