【第7章】 黒雲 〜中①編〜
第1章『 ピエロ 〜前編〜 』
前話 『 黒雲 〜前編〜 』
それから一週間が経った──。
ヤケ食いとばかりに、天然ものの生肉をガツガツ食べまくり、すっかり体力が回復したあたしはふたたび、太陽へ向かって飛び立った。
でも、太陽までもう一踏ん張りというところで、また、あの底意地の悪い黒雲が現れ、強風と豪雨のダブル攻撃を仕掛けてきた。
負けじとツバサを羽ばたかせ抵抗を続けていると、ゴロゴロゴロ……と不気味な音を鳴らしながら、黒雲が渦巻き始める。
「クッソ~~」
あたしはやむなく、ツバサをシュッと折り畳み、地上へ向かって急降下した。
黒雲の嫌がらせに屈して逃げ帰るのは情けなかったけれど、あのイナヅマ攻撃のハンパない電気ショックは二度と喰らいたくなかった。
あたしはそれからもたびたび、天気の良い日を狙っては、
「今日こそ、黒雲が現われませんように……」
心の中で祈りながら、太陽へ向かって飛び立った。
でも、何回挑戦しても、黒雲は必ず、あたしの前に立ちふさがり邪魔をしてきた。
好意的な笑顔で黒雲と話をしようと試みても、あたしのことを敵視してすぐにイナヅマを放とうとゴロゴロ威嚇してくるので、正直、お手上げ状態だった。
「このままだと、ミーちゃん死んでしまうガア。もうあきらめて、オイラたちと一緒に楽しく暮らせばいいガア」
落ち込んでいるあたしをハシブがやさしく慰めてくれるものの、あたしはどうしても『金色のカラス』をあきらめられなかった。
だって、ここまでたどりつくのに、あたしなりに努力をしてきたわけだし……。
「あともうちょっとのところまで行けてるんだもん……」
『つまんな~~い……つまんな~~い……つまんな~~い……』
ふいに頭の中で、
『努力したって無駄なんだよ……無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……』
人間だった頃のあたしの声が、呪いのようにこだまする。
封印していた、バスケ部時代の嫌な過去がよみがえる。
二年生になってレギュラーになれると張り切っていたのに、厳しい練習を積んでも顧問の先生からは認められず、特待生として入部してきた一年生たちにレギュラーの座を奪われ、下働きするように強要された……。
理不尽な顧問の先生や、学校の身勝手な都合のせいで、レギュラーの夢を閉ざされたあたしは、自分の可能性に見切りをつけて、退部届けを提出した……。
あのときに味わった、みじめで、最悪な気分が、あたしの心の中にじわじわと広がっていく。
顧問の先生に阻まれバスケ部のレギュラーになれなかったように、今回もまた、黒雲に邪魔されて『金色のカラス』に会えないかもしれない……。
心の中が、あきらめと不安な気持ちでいっぱいになり、押しつぶされそうになる。
「ダメ、ダメ、ダメ、ダメ!!」
あたしは頭をふって、バスケ部の嫌な過去を振り払うように、
「あたしは……超ミラクルガール……」
小さな声で呟いた。
心が重たく沈んで、気持ちが暗いほうへ引きずられそうになったら、
「あたしは超ミラクルガール……」
魔法の言葉を口ずさむようにしていた。
自分に暗示をかけるように、何度も何度も、魔法の言葉を呟き続ける。
化け猫やオオタカとやり合ったシーンがよみがえり、少しずつ、少しずつ、ヤル気のパワーが充電されていく。
超ミラクルガールは、絶対に逃げたりなんかしないんだから……。
そうよ、強敵だった化け猫やオオタカの壁を乗り越えてきたじゃない……。
超ミラクルガールは、意地悪な黒雲になんて絶対に負けない……。
あんな黒雲なんかに……。
『つまんな~~い病』に取り憑かれていた弱気なあたしを、心の中からなんとか追いだした。
✻
あたしはひとまず、太陽へがむしゃらに向かうのをやめることにした。
黒雲に見つからず太陽へたどり着くことは、無理と判断したからだ。
『金色のカラス』に会うには、黒雲を攻略することが必須条件。
ならば、黒雲攻略の情報を得るため、ハシブたちにきいてまわることにしよう。
「黒雲を攻略するなんて無理だガア! 本気で怒らせたら、何千本ものイナズマで、地上を火炎地獄にしてしまうガア!」
「それに、何千本ものタツマキで、地上を破壊しちまうガア!」
「それにそれに、何千日もの豪雨で、地上を海の中に沈めてしまうガア!」
カラスたちの話は、黒雲の都市伝説的な怖ろしさを伝えるものばかりで、攻略のヒントになるものは無かった。
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