【第8章】 金色のカラス 〜中編〜
第1章『 ピエロ 〜前編〜 』
前話 『 金色のカラス 〜前編〜 』
「馬鹿者じゃリィ~~ン!! 呪いの言葉が炎となって、おまえを殺そうとしとるじゃリィ~~ン!」
ミサキさんが懸命に炎を消そうと、白銀のツバサであたしの体をはたきながら、
「早く『金色のカラス』を呼び覚まさないと死んじまうじゃリィ~~ン!!」
「もう……いいよ……」
あたしは火の玉となって真っ逆さまに墜ちていった。
あたしの人生……カラスの丸焼きで終了……か……。
最悪な死に方だけど……あのままズルズル……みっともなく生きてるよりは……ずっとマシだよ……。
完全に死を覚悟したそのとき──。
「ニセモノ呼ばわりするなじゃリィ~~ン」
ミサキさんが白銀のツバサを大きく広げ、落下しながら燃えているあたしの体を強く抱きしめてきた。
またたく間に、初代カラスの体も炎に包まれる。
「もう……放っといて……ください……」
ミサキさんから逃れようともがくと、
「ほお~~アイドルになりたかったじゃリィ~~ン?」
ミサキさんの楽しそうな声が耳に飛び込んでくる。
はあ? アイドル……!?
死が迫っているこんなときに、なに馬鹿なこと言って……。
「え……!?」
突然、あたしの頭の中に、おもちゃのマイクを片手に深々とおじぎをする小学生のあたしが現われた。
そして、お父さんとお母さんの前でワンマンショーを開いている懐かしい光景が、ホームビデオのように鮮明に映しだされる。
「驚いたじゃリィ~~ン?」
あたしの体から燃え上がっている炎を、白銀のツバサで抱き包みながら、
「いちおう、神様の使いじゃったもんで、過去を再現するくらいは朝飯前なんじゃリィ~~ン」
ミサキさんがドヤ顔で言った。
「やっぱ……すごいね……神様の使い……って……」
あたしは、ミサキさんへ微笑んで、
「死ぬ前に……楽しかった頃の……想い出を見せてくれて……ありがとう……」
ものすごい落下スピードに意識を失い、そのまま、懐かしい想い出の世界へとタイムスリップした。
あの頃のあたしは、歌番組やバラエティー番組で華やかな衣装を着て歌っている可愛いアイドルたちに首ったけだった。
毎月のお小遣いを貯めて、やっと買った大好きなアイドルのDVDを何百回も見まくって、歌やダンスを一生懸命に真似して、寝ても覚めても、アイドルになる夢で脳内メーカー100パーセントだった。
あの頃のワクワク、ドキドキした、幸せな気持ちで、心の中が満たされていく。
誰になにを言われても、自分は絶対、アイドルになれると信じきっていた。
なのに……なのに……。
「ごめんね……」
マイクを握りしめ楽しそうに歌っている幼いあたしに、
「あなたの夢を叶えてあげられなくて……」
涙があふれだし、死を選んだことで『未来の可能性』を永遠に失ってしまった後悔の念が押し寄せてくる。
「やだよ……」
あたしは閉じていた目をバッと開き、
「あたし、死にたくないよ!」
ミサキさんの目をまっすぐに見つめて叫ぶ。
「おまえはなんで、人間に戻りたいじゃリィ~~ン……?」
ミサキさんが、さっきと同じ問いかけをしてくる。
「人間に戻ったら、なにをしたいのか……」
いまはぜんぜん分からないけど……
「あきらめない……」
あたしの人生を……夢を……
「他の人のせいにしてあきらめたりしない……」
「『ハズレ』の道を選んだって……あたしはあたしのことを信じて生きていくから……」
「こんなとこで、死んでなんかいられないよ~~~!!」
強烈な閃光がほとばしり、ミサキさんと引き離される。
竜巻のような暴風の渦にグルグルグルグルと激しく巻き込まれていく。
ダメだったんだ……でも……。
「あたしの答えが……ハズレだったとしても……」
後悔はしない……絶対に……。
ふたたび、意識が遠くなっていった。
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