見出し画像

11日だけ、ハナちゃん

Aさんの家に、野良子猫が来るようになった。はじめはベランダに来ていたのでそこで餌を与えていたが、そのうちに家の中に入ってくるようになった。
Aさんちには先住の猫がいて、同居は難しそう、引き取れないかと、共通の友人Tから打診。
とりあえず、猫は2匹も3匹も同じかなと、チャーリーとガブリエルと仲良くできなかったら返す、ということでTを介して預かった。

先住2匹と新参子猫、全然同じじゃなかった。
ハナちゃんが来た翌日、チャーとガブが家出した。

足をかじるハナちゃん

多頭飼育で新たな子を迎える時は、部屋を隔離して先住とすぐに会わせないようにするのが鉄則なんだそうだが、初動を間違えた。
ケージが、物理的にチャーやガブのいる場所にしか置けないため、その位置に置いたままシーツで目隠ししたのだが、知らない猫がいる、ってすぐバレた。

それにハナちゃん、ケージに入れると出して出してぇ!と猛烈に暴れて鳴くので、つい根負けして出してしまったから、ガブは「なに?だれ?」と目がテン。

でも、ガブはすぐに帰って来た。
ただ、めんどくさそう。ハナちゃんはガブに向かっていつでもちょっかい。やんのかステップばっかり繰り返していて、うざったそうだ。そのうちハナちゃんに追いかけ回されるようになった。
ガブは全力疾走でニャングルジムに逃げ込み、出てこない。

遊びたそうにちょっかい。ガブはしんぼう。
しつこい! 狸寝入りを決め込むガブ

数日後、チャーもごはんを食べに帰って来たけれど、「ベランダで食べますおうち入りません」。甘えにも来ない。

ハナちゃんはまるでエネルギーの塊。
動くものなんでもにじゃれつく。

夜、ケージの中のハナちゃんはとてもうるさい。出たいんだなぁ。
ここを、心をオニにして昼も出してはいけないんだそうだが、ダメだった。外に出してジャラシで遊んで、すると負けじとガブが参加して、いい感じなんじゃないの? と思われる時も多々あったのだが・・・。

ハナちゃんは隣で食べてね(ハナちゃんは大人のご飯が食べたい・・・)

さらに数日後には、チャーも家の中でご飯を食べるようになったが、すぐに出ていってしまう。

チャーとガブが拗ねないように、二人が帰って来た時は二人が一番大事だよと最大気を遣い、ちゅーるを大盤振る舞いして、でもハナちゃんともたくさん遊んで、ハナちゃんが脱走したら大急ぎでバタバタ二人で大汗かいてとっ捕まえて、できる限り、できるだけのことをやってみたのだが・・・。

下のご飯台だとハナちゃんがうざったい?
ご飯の準備をする台の上で一斉に食べ始める二人


チャーの方が食べるのが遅く、ハナちゃんにちょっかいを出される


テツのご飯台の足を切って、そのまま猫用のご飯台にしたのだが、
ハナちゃんが占拠。
降りてください

ハナちゃん、小さなお手てで一生懸命砂を掻いてトイレを済ませて、終わるとすっ飛んで走ってきて、ジャラシに全力でじゃれついて、人間のトイレやお風呂は出待ちして(これがかわいいんだ、、チャーもガブもやらない行動だ)。

兄ちゃんたちのご飯の余ったやつをこっそり食べて「あなたのご飯はこっちだよ」と、兄ちゃんのご飯皿から引き剥がして、「子猫用」はおいしくなかった?
出かけるよ、と言って外出し、帰ってくると兄ちゃんのベッドですやすやと眠って待っている。
ちょっと読書に夢中になっていると、遊べ〜と言わんばかりに「にゃ〜」と鳴く。


でも、今のままではチャーとガブが心配。そのことをTに話す。
Tは大いに理解し、ダンナさんの職場で新しい引受先を探してもらった。
(※Tは以前の記事で紹介した、迷い犬を保護した友人です)

ハナちゃんは、AさんもTもTのダンナさんも、そして私も、誰の面識もない方のところへ行くことになった。

お魚、紐を引きちぎって咥えて歩いたハナちゃん

ハナちゃんがうちにきて11日後。

Tがお迎えにきた。この後その方の職場で落ち合うのだそうだ。
ハナちゃんが使っていた小さいトイレ(ガブのお下がり)を軽く掃除して持って行ってもらう。
それからハナちゃんが大好きな魚のぬいぐるみ。
「ハナちゃん、これ、お守り。これはハナちゃんのだよ。いつまでも持ってな。取られるんじゃないよ」
これでいつまでもひとり遊びができた。そのぬいぐるみをキャリーバッグに入れてやる。
バッグの中から、「にゃ〜にゃ〜」。
大きな声で鳴いてる。狭いところに閉じ込められるの、嫌だよね。

オイラだって泣きたいよ。
ごめんよ、うちでお世話できなくて。せっかくうちに来てくれて、慣れて来たところだったのに、本当にごめん。
でもね次のお家はお姉ちゃん猫さんがいるんだって。お世話してくれる人も健常な女の人、私らよりも頼りになるよ。猫のベテランさんで女の子の子猫が欲しかったんだって。
望まれているんだよ、きっとうちより幸せになれる。

大事にしてもらえるから泣かないで。




最近そんなことがありまして、子猫は手放した次第です。
3匹が仲良く過ごしてくれたら素敵だな、なんて夢見てしまったけど、チャーとガブが安心して帰ってこられるお家であるために、決めました。

でも、でも、毎日ハナちゃんのことを考えてしまう。
今頃遊んでもらっているかな、と。
新しい家は街中だそうで、多分完全室内飼いができる環境ではないか、そうTに聞いて安心した。うちでも完全室内飼いを目指したが難しく、せめてハナちゃんだけはとガンバってみたが、10日で2回脱走したので、自由猫になるのは時間の問題だったかもしれない。
新しい家族に預けて正解だった、と思う、いや、自分に言い聞かせる。

たった11日間のチャレンジだったなぁ。
ハナちゃん、幸せになるんだよ!

のびのびしていたね


* * *


さて。こんなことがあってふと思う。
はなこさんの記事でコメントのやり取りをさせていただいたのだが(はなこさん、勝手に引用してしまってごめんなさい)、

>>いっしょに暮らす動物って社会的には、彩りとか、ちょっとオマケみたいな位置づけと思われがちですけど、時にトリックスターというかゲームチェンジャーというか、人生を別の方向に導くような大きな役割を果たすことがあるような気がします。もちろん、ホンニンたちにはそんな自覚はないんでしょうけれど

こんな話をされていた。

この言葉を聞いて、本当にそうだ、その通りだ、、と、さまざまに思い浮かぶことがあって、彼らにそんな意図はなくても、「あなたは私を変えたよ」って思う時がある。

テツもそんな存在だった。
ただの捨てっ子の雑種だって言えばそれまでだが、私を変えたんだから、ただの犬ではない。
私は体のことがあって、動物は飼えないとずっと思い込んでいた。それを変えたのもテツだし、犬との暮らしがこんなにも豊かなものだと教えてくれたのもテツだった。

一緒に那須へいく決断をさせ、テツと一緒に暮らせる家を探し歩いた。一軒家じゃなきゃダメだって、キンちゃんにそれは譲らなかった。
キンちゃんは分かってくれて、惜しみなく協力してくれた。
もしかしたら保健所に連れて行かれていたかも知れなかった野良坊が、私たちを動かした。

そしてハナちゃんも。
また両手に収まるような子猫がひとりぼっちでさまよって、よくもまぁ、車に轢かれずにAさんちにたどり着いて、たまたまAさんが猫好きで保護ができて、うちにきて思い切り甘やかされて、そして女の子が欲しいと望んでいるお家に嫁いだ。
(NNNの匂いがぷんぷんする!)

もちろん我々寝不足だし、常にチャーとガブを優先させねばと動くのは疲れるし、野グソ派のチャーとガブで忘れていた毎日のトイレ掃除も、障害的に体がこたえた。
でも、だから、それ以上にハナちゃんのいる暮らしは賑やかで楽しかった。喜びと幸せを家中に振り撒いて行ったハナちゃん、更なる幸せの家へと出て行ったんだね。
それはあなたが持って生まれた魅力のなせること。

チャーリーはいつもテツに吠えられていたっけ。
近づくと「シャー」。明けても暮れてもどれほどご飯のお世話をしても「シャー」。
でも本当はとっても甘えん坊で優しい。知らなかったな、キミがそんな穏やかな性格だったなんて。
どんなに暑い日でも快適な家の中ではなく、玄関先やベランダの日陰に陣をとっているのは、家とガブを守ってるつもりなのかな。

チャーリーが連れてきたガブリエルは、やって来た当初まだまだ子供で好奇心旺盛だった。チャーリーみたいに慎重でも人見知りでもなく、すぐに家の中に入ってきて、今もインドア派。
どんなにハナちゃんにちょっかいを出されても、やりかえさない。追いかけられても追いかけない。
そしてチャーには、ベッドも一番ご飯も譲ってしまう、優しい気遣いさん。

みんな、一体どうやって大きくなったの? どうやってご飯を食べてきた?
赤ちゃん時代を知らないチャーリーとガブリエルだけど、ハナちゃんのような天真爛漫な遊び盛りの時があったはず。
お母さんはどこにいったの?

チャーにベッドを横取りされても、そばで眠るガブ。獣医さんによると、チャーは2歳くらいだそう。ガブの面倒見がいいので、てっきりいい歳のおっさんだと思ってたが、ガブとはそんなに歳の差がなかった。


ガブリエルを保護した時、でも飼えるかどうか自信がなく、保護団体さんが月一で行っているTNRに連れていったのだった。もしうちで飼えなくても、サクラカットがあれば地域の誰かが見てくれるかも、そう思って。

手術が終わって連れて帰ると、ガブはぐったりしょんぼりして、ごめんよ、あなたの大事なタマタマをとってしまった、ショックだったね。ごめんよ、一生面倒見ますって、誓ったんだった。

みんな、来るべくして来たように思われ、ただの付属物でも行きずりの小動物でもなく、どうかこの子らの魂が、肉体の有無に関わらず永遠に幸せでありますように、と、そう祈らずにおれない存在になった。

だから、ハナちゃんが嫁ぎ先で幸せだろうかと(うちより幸せに決まってると思うのだが)、毎日気に病んでしまう。

病院の帰り道に、おっぱいの大きな野良犬がまるで助けを求めるような眼差しを、雨の中投げてよこす、そんなのを見かけ・・・、
山奥にある市のクリーンセンターに粗大ゴミを出しに行った帰り道に、カラスと戯れる、でもガリガリに痩せた野良犬を見かけ・・・、
近所の産廃処分場に、全員を保護したはずがしきれていなかったか、毛が禿げた皮膚病の野良犬を見かけ・・・、

どうすればいいの? 何をどうすればいいのか、せめて場所を覚えて帰って保護団体さんか市役所に、保護して欲しいと通報するしかない、そんな自分の身体的な制約を恨めしく思うと同時に、なぜ、命は生まれ、生きて死ぬのか、何が幸せで何が不幸なのか不運なのか? 苦しみや悲しみは飢えや孤独、故なのか、考えてしまう。

考えても詮無いことなので普通は考えない疑問が、延々と頭に渦巻くここ数日。

犬や猫も、運のいい奴とそうでない奴がいるんだよ。
人間も同じだろ?

それは慰めなのか諦めなのかわからないけど、そんなふうにポツリと言う人がいて、「そうだよね」とため息混じりに相槌を打つ。

後日譚

チャーリー(写真右)は、ハナちゃんが嫁いだ日の夜から、家に帰って来て眠るようになりました。
時々ガブに抱きついて寝て(暑そう!)、明け方になると私たちのベッドの端に二人飛び乗って、ヒトが起きてくるのを待ってるようです。

うちは、みんなゆっくりしていて静かだなぁ。
ハナちゃんの騒々しさを思い出し、ふっと笑みがこぼれます。





いいなと思ったら応援しよう!

わたりねこ 最後まで読んでくださってどうもありがとうございました!

この記事が参加している募集