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「ハゲちらかす」は、何が散らかっているのか

「ハゲちらかす」って言葉がある。

自分は絶対使わない。
関西ノリなのはわかるが、さすがに酷い言い方だと思う。

しかし、構造が面白い言葉でもある。

まず最後の「かす」がわからない。
もちろん、「このカス!」と言ってるわけではない。

「散る」は、勝手に起きる状況で、
「散らす」になると、手を加えて動かすことになる。
「散らかす」は、散らすに「かす」を付けている。
さらにチカラを入れて動かした状態。

結果的に
「やりすぎて、とんでもないことになった」というニュアンスがある。

「ハゲちらかす」は、この最後のやつに相当する。
やりすぎるくらいハゲてしまった、という意味だ。

「ハゲる」は、散ると同じように「勝手に起きる」こと。
それを一番凄い「やりすぎてとんでもない」とくっつけてしまった。

自分ではどうしようもないのに「やりすぎだ」と責められている。
理不尽この上ない。

そもそもこの「かす」、それ自体がネガティブなわけではない。
「動かす」「乾かす」など、他動詞化するときよく使う。

これも考えてみれば、
放っておけば勝手に乾くものを、おせっかいにも手を加えて乾かした、というニュアンスがないわけではない。
どこかに「やらかす」感じが含まれている。

「散らかす」もこの「やらかす」も、
結果的にはネガティブなんだが、どこかちょっと哀しみを含んでいる。
やっちまったな、的な後悔がちょっとだけ見えるのだ。

“決して悪気はなかった”的な、人間の弱さが滲み出ていたりする。
いわゆる「アイロニー」ってやつだ。
これは哀しいのと同時に、どこか可笑しい。笑ってしまう。

笑ってやることで、許している。

そう考えると、「ハゲちらかす」で笑おうとする気持ちも、少しだけわかる。

自分ではどうしようもない事態に陥ってしまったことを、やらかしてしまったとあえて言うことで笑ってしまおう。

そう言うと優しいような気もしないでもない。
いや、やっぱりキツすぎるとは思うけど。

この「散らかす」は結果、やりすぎてしまった状態を表現しているから、言葉が絵的な表現になっている。
言葉だけで、とんでもなく散らかってしまった部屋が見える感じがする。

「ハゲちらかす」も同じように、そういうふうになってしまった状態を視覚化する効果があるのかもしれない。
それは決して、抜けた毛髪が散乱しているわけではなくて、「かなり情けない状況になってしまった男」を視覚化しているわけだ。

だから、実際に部屋は散らかっていない。
散らかっているのは、気持ちの方だったりするのである。

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