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老後が不安なので、株を始めました DAY90【スクリーニングでバリュー株を探す】

―ハルと歩く、Age60の投資録 90日目― 昨日学んだ条件を、自分の手で動かしてみた日。



DAY89で、見るべき場所が具体的になった。

実績としてのEPS。
割安度としてのPER×PBR。
実績・余力・意思という増配の3条件。

知識は増えた。
でも、知識と実践の間には、まだ距離があった。
今日は、その距離を自分の手で埋めてみようと思う。
マネックス証券の「銘柄スカウター」を開いて、実際にスクリーニングをかけてみた。

〈まずは、増配の実績から〉

最初に選んだのは、「長期にわたり増配を続け、今後も増配余地のある企業」というプリセット条件だった。

連続黒字10年、
予想配当利回り2.5%以上、
連続増配10期、
自己資本比率40%以上、
10年成長率7%以上、
配当性向20〜50%。
結果は17件。
その中に、積水ハウスの名前があった。


🌸 私:「知ってる会社が、ちゃんと入ってる」

🌱「増配の実績があるということは、条件をすでに満たしているということです。積水ハウスが候補に残るのは、自然なことですよ」―ハル

安心した。でも、これだけでは終われない。
DAY89で学んだもう一つの柱、PER×PBRの割安度が、まだ入っていなかった。

〈教科書通りの数字は、どこにもなかった〉

分析指標の中の「割安性」に、予想PERとPBRの項目を見つけた。
DAY89のミックス係数、目安は8以下。
とりあえず、PER15倍以下・PBR1.0倍以下という、教科書に近い数字を入れてみた。
結果は、0件。

🌸 私:「1銘柄もない」

🌱「条件を厳密にしすぎたのかもしれません。10年成長率7%以上という条件と、PBR1倍以下という条件は、実は相性がよくないんです」―ハル

ハルの言う通りだった。
10年間ずっと成長を続けている会社は、すでに市場から評価されていることが多い。
PBRが1倍を切ることは、むしろ珍しいのだという。
PBRの上限を1.5倍まで緩めてみた。
やっと7件に戻ってきた。積水ハウスは、その中に残っていた。

ただ、ここでもう一つ気づいたことがある。
ツールには、「PER×PBRを掛け合わせた数字」を直接絞り込む項目はなかった。
7件それぞれのPERとPBRを自分で掛け算してみると、一番低い積水ハウスでも11.13。

DAY89の目安、8以下を満たす会社は、この7件の中に一つもなかった。

🌸 私:「本に書いてある目安と、今の市場は、同じじゃないんだね」

🌱「目安は、あくまで出発点です。今の株価水準の中で、相対的に割安なものを探す、という見方に切り替えるのも、実践的な判断です」―ハル

〈これまでの候補も、当てはめてみた〉

そういえば、まだやっていないことがあった。
これまで監視リストに入れていた、三菱HCキャピタル、INPEX、NTT、大日本印刷、高速。
この5社が、今日の条件にどれだけ合っているのか、一社ずつ確かめてみることにした。

それぞれの銘柄ページを開いて、PER、PBR、配当利回り、配当性向を確認し、ミックス係数を自分で計算していく。

一番、8に近かったのはINPEXだった。約8.9。
三菱HCキャピタルと高速も、悪くない数字が並んでいた。
NTTも、配当性向42.0%と、範囲内に収まっていた。

でも、大日本印刷を見て、手が止まった。配当性向が15.9%。
DAY90の条件、20〜50%の範囲に、そもそも入っていなかった。

🌸 私:「候補の会社の中にも、条件に合わないところがあったんだ」

🌱「数字にしてみて初めて、はっきり見える境目です。名前を知っているから安心、というわけではないんですね」―ハル

なんとなく持っていた安心感が、少しだけ揺らいだ。
監視リストに入れていたというだけで、確かめたつもりになっていたのかもしれない。

後で、ネットで見かけた別の記事にも目を通した。
株探の連続増配銘柄リストには、INPEXの名前があった。
配当利回り3.15%、
連続増配6期、
PBR0.81倍。自分で調べた数字と、ほぼ重なっていた。

🌸 私:「自分で計算した数字と、外の記事が一致すると、なんだか安心する」

🌱「一つの情報源だけで判断せず、複数の視点で同じ結論にたどり着けるか確かめる。それも、大事な裏付けの取り方です」―ハル

〈時価総額を絞ったら、知らない会社ばかりになった〉

もう一つ、試してみたい条件があった。
時価総額。
積水ハウスは時価総額2兆円を超える、いわゆる大型株だ。
大きい会社ほど、条件に引っかかりやすいだけなんじゃないか。
ふと、そう思った。
時価総額1500億円以下という条件を足して、もう一度スクリーニングをかけた。

結果は、また7件。
でも、中身は全部入れ替わっていた。
積水ハウスも、これまで見てきた会社も、一つも残っていなかった。
代わりに並んでいたのは、化学、機械、卸売業、陸運、情報・通信……
これまで一度も名前を見たことのない会社ばかりだった。

🌸 私:「大きい会社ばかり見ていたら、見逃していた会社が、こんなにあったんだ」

🌱「積水ハウスが繰り返し出てきたのは、優れているからだけでなく、時価総額が大きく、データが揃っていて、条件に引っかかりやすかったから、という面もあります」―ハル

〈割安には、理由があった〉

7件の中から、ミックス係数が一番低かった会社と、配当利回りが一番高かった会社の2社を、詳しく見てみることにした。

1社目。ミックス係数は約5.6。
DAY89の目安、8以下をはっきりクリアしていた。
でも、業績ニュース履歴を開いて、手が止まった。
直近3回の決算発表のうち、2回が「事前予想を下回る水準」。
チャートを見ると、予想PERは決算発表を境に一段階下がったまま、戻っていなかった。
配当は14年連続増配。
数字だけを見れば、悪くない会社に見える。
でも、この安さは、業績への懸念を市場がすでに織り込んだ結果かもしれない。
DAY84で学んだ、「株価が下がった理由が、自分の買った理由と変わっていないか」という視点を、そのまま当てはめる場面だった。

2社目は、対照的だった。
ミックス係数は約6.4、こちらも8以下。
直近の決算は、事前予想を上回る水準。
本決算の見通しは上方修正。
目標株価も引き上げられていた。
配当は同じく10期以上の連続増配。
実績配当性向も健全な範囲。
株価は、この1年のレンジの中では中〜やや高めの位置にいた。
監視リストにいれておくことにした。

🌸 私:「同じ"割安"でも、中身が全然違うんだね」

🌱「数字が条件を満たしているかどうかは、スタート地点にすぎません。なぜ割安なのか、その理由を確かめて初めて、判断ができます」―ハル

〈低いミックス係数にも、いくつかパターンがあるらしい〉

1社目と2社目、同じように数字は割安でも、中身がこれほど違うことに驚いて、少し調べてみた。
ミックス係数が低い銘柄には、いくつかの傾向があるという。

市場からまだ評価されていない、いわゆる掘り出し物のケース。
資産は厚いけれど成長が緩やかな、成熟した業種のケース。
そして、将来の収益期待そのものが、市場から見放されて剥落したケース。

同じ「低い」でも、理由がまったく違う。
だからこそ、確認すべきことも決まっているらしい。
直近の数字だけで判断せず、過去数年のEPSの平均で見ること。
ROEやフリーキャッシュフローが、きちんとプラスで推移しているか。
自己資本が傷んでいないか、有利子負債とのバランスも見ること。
そして、8とか22.5とか、目安の数字は業種によっても違うので、一つの基準を鵜呑みにしないこと。

🌸 私:「"低い"だけを見て安心しちゃいけないんだね」

🌱「はい。低いミックス係数は、次に何を確かめるべきかを教えてくれる、入り口の合図です。そこで止まらず、ROEやキャッシュフロー、財務の健全性まで見て、初めて判断ができます」―ハル

1社目が「低いのに危ない」側で、2社目が「低くて、かつ大丈夫」側だった。
今日、その境目を、自分の手で確かめられた気がする。

💬 Satsukiの疑問とハルの回答

🌸 私:「じゃあ、スクリーニングって、あんまり意味がないのかな」

🌱「そんなことはありません。17件から始まって、7件、また別の7件と絞り込んでいく中で、Satsukiさんは知らなかった会社に何社も出会いました。スクリーニングは、答えを出す道具ではなく、目を向けるべき場所を教えてくれる道具です」―ハル




〈今日、一番わかったこと〉


条件を満たすことと、本当に良い会社であることは、同じではなかった。
数字で絞り込んで、そこで安心して終わるのではなく、なぜその数字になっているのかを、一社ずつ確かめていく。
その手間を惜しまないことが、DAY89で学んだ「銘柄惚れを避けるコツ」の、もう半分だったのかもしれない。

明日も続ける。

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