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【読書録】『嫉妬論』山本圭

今日ご紹介する本は、山本圭氏の『嫉妬論』(光文社新書、2024年)。副題は『民主社会に渦巻く情念を解剖する』

著者は、立命館大学法学部准教授で、政治思想がご専門の研究者だ。嫉妬というテーマを掘り下げた珍しい本だということで、手に取った。

重いテーマであり、読了するまで、かなりの時間がかかった。嫉妬について細かく丁寧に解きほぐしており、とても読み応えがあった。とりわけ古今東西の哲学者、思想家などの嫉妬に関する著述を織り交ぜながらの考察は、説得力があった。読み終えて、以下のようなことを学んだ。

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嫉妬とは、自分より優位にある他人の幸福を苦痛に感じることであること。なお、自分より下位の他人の成長による、自分との差異の減少(=下方嫉妬)もある。

特徴的なのは、自分とかけ離れた対象ではなく、自分と類似点のある他人に対して抱くものであり、自分と比較することにより生じるものであること。

自分の幸福レベルが変わるわけではないのに、嫉妬の対象である他人を、自分と同じ、あるいは平均レベルに落としめようとするネガティブな感情であること。

ミュニティーで嫉妬をかわす4つの戦略としては、「隠蔽」「否認」「賄賂」「共有」という手段がある。

嫉妬の効用もある。個人レベルでは、嫉妬感情を手掛かりに、自分が誰と自分を比較しているのかをひもとくと、自分が何者なのかを知る手がかりになる。

社会のレベルでは、不正を告発したり、社会の不平等を是正するエネルギーになる。

嫉妬は、資本主義や民主主義と切ってもきれない関係にある。

ソーシャルメディア全盛時代の現代においては、万人が万人に対し幸福を誇示する状況が常態化していることから、嫉妬感情が生まれやすい世の中になっている。

著者の考える嫉妬に耐性を持つための処方箋として、社会が多元的な価値観を許容すること。個人レベルでは、比較をしないことに尽きる。比較をやめられないなら、一面的な比較だけではなく、徹底的に比較をして、一見幸福そうに見える相手の他の面をも見ることにより、嫉妬心を和らげられる。

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読みながら、今までの半世紀の人生のなかで、自分が他人に嫉妬した場面や、他人から嫉妬された場面を、いくつも思い出した。

振り返ってみて、自分の他人に対する嫉妬心に関しては、年齢を重ねるにつれて、割とうまくつきあうことができるようになったと感じている。

どういう物差しで比較しても、上には上がいて、下には下がいて、キリがない。他人の幸福や成功を妬んでも、何ら自分の幸福レベルが上がるわけではない。幸せは、ひとぞれぞれだ。他人軸で幸福を測って不足を嘆くのは、何の意味もないし、単なる時間の無駄だ。

さらに、幸せそうに見える人は、そのレベルに至るまで、ものすごい努力を重ねてきたかもしれない。もしかすると、見えないところで苦労や悲しい思いをしているかもしれない。

そうであれば、素直に他人の幸福や成功を祝福しようではないか。そうすれば、自分のポジティブな言動に、自分でも気持ちが良くなるし、相手も喜ぶ。好意の返報性という言葉もあるし、損得の面から考えても、お得なはずなのだ。

そんな風に考える癖をつけると、気持ちが軽くなり、幸福そうな他人にネガティブな感情を抱くことは、ずっと少なくなった。

しかし、他人から嫉妬されることを防ぐのは、容易ではない。今までの人生で、おそらく嫉妬が原因であると思われる意地悪をされたり、ハシゴを外されたり、怖い目にあったりすることが、何度かあった。

現代社会において、嫉妬はなくなりようがない。それに、嫉妬の特徴として、平均より優れている人を平均にまで引き下ろす負のエネルギーが生じる。本当に厄介だと思う。

本書では、上記のとおり、コミュニティーで嫉妬をかわす4つの戦略として、「隠蔽」「否認」「賄賂」「共有」という手段が記載されていた。そういわれてみれば、確かに私も、謙遜したり、旅行のお土産を配ったり、ご馳走したりと、知らず知らずのうちに、嫉妬をかわそうとする行動に出ているような気がする。

それでも嫉妬をかわせないときは、どうすればよいのだろう。私は、いざとなれば、最終手段として、コミュニティーそのものからの「逃避」という、いわば第5の手段を取らざるをえないのではないか、と考えている。

コミュニティーに所属する限り、そこには他人がいて、他人との比較が否応なしに生じる。だから、嫉妬も生じる。コミュニティーに共通点があればあるほど、比較しやすくなるため、嫉妬感情の発生する可能性は高そうだ。

私の経験上、自分より少し背伸びしたコミュニティーに入った初期の段階で、「初心者ですので、教えてください」というスタンスでいれば、他人から嫉妬されることは少ない。でも、そのコミュニティーに馴染み、中心メンバーになっていくと、嫉妬されやすくなる。コミュニティー内で嫉妬され、意地悪をされると、それが職場であれ、サークルであれ、とても居心地が悪くなる。つらい思いをすることもある。そんなときは、自分が潰れるくらいなら、そうなる前に逃避すればよいと思っている。

しかし、いつも逃避できるとは限らない。それに、逃避ばかりしていて、何らのコミュニティーに属さないというのも、現実的ではない。引きこもりか、世捨て人になってしまう。人と関わらなければ、生きてはいけない。結局、どうすれば嫉妬をされずに、うまくやり過ごせるのか・・・。

そういったことを、じっくりと考えさせられる一冊だった。人間や人間社会の本質に迫った良書だ。実用書ではないため、自分や他人の嫉妬心をすぐに解消するためのハウツーが書かれているわけではない。しかし、嫉妬とは何かについて、本書を読みながら徹底的に考えておけば、いざというときに、嫉妬という感情をメタ認知でき、上手につきあえるのではないか、という気がしている。

ご参考になれば幸いです!

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