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【温泉】松崎温泉「長八の宿 山光荘」(静岡県松崎町)

今日ご紹介する温泉は、静岡県は西伊豆の松崎温泉にある旅館「長八の宿 山光荘」さん。2024年にこちらに素泊まりで1泊したときのお話だ。

こちらのお宿は、シュールレアリズムの天才漫画家・つげ義春先生が昭和42(1967)年に宿泊し、その作品である『長八の宿』のモデルとした旅館だ。noteでフォローさせていただいているヨシタカさんの記事で、その存在を知った。

私は、つげ義春先生のファンだ。このお宿の存在を知るや、居ても立っても居られなくなり、予約を試みた。残念ながら、そのときは休業中だった。その後しばらくして、再度調べると、いつの間にか営業を再開していた。2024年に念願が叶い、こちらに宿泊できる機会に恵まれた。


外観

お宿のある松崎町は、伊豆半島南西部の海辺にある小さな町だ。時が止まったような、静かな町。なまこ壁の古い建物が多く残り、街並みが美しい。こちらのお宿の壁も、見事ななまこ壁だった。格子状の漆喰の壁が、青空に映える。

どっしりとした立派な建物。江戸時代の造り酒屋を旅館に改装したのだそうだ。

さあ、入口へと進もう。

おお! この門は、まさに!

つげ漫画『長八の宿』に登場するお宿(「海風荘」)の門とそっくりだ!

看板の形や「荘」という文字まで、よく似ている!

期待に胸をふくらませながら、玄関へと進む。

歴史を感じさせる、玄関の家紋。

館内

玄関

扉を開けると、玄関にはスリッパが1組だけ揃えられていた。なんと、この日の宿泊客は私ひとりだけ。つまり、一軒まるごと貸し切り状態だった。

ロビー

こちらが、ロビー。写真左端に帳場がある。なんとも落ち着く空間だ。

ロビーの置物なども、歴史を感じさせるものばかり。

休憩所

こちらが、休憩所。こちらも、古い調度品など、お宝がたくさん飾られている。

テレビの上には、鹿の角が。おお、これは、既視感がある!

つげ漫画『長八の宿』の1コマに描かれている、鹿の角とそっくり!

客室「長八の間」

私が宿泊したのは、「長八の間」というお部屋だ。つげ漫画『長八の宿』に登場するお部屋で、他のお部屋より料金は高いのだが、せっかくなので奮発することにした。

この「長八の間」は、他の部屋と異なり、蔵を利用したユニークな構造になっている。蔵の中は2階建てになっていて、1階には専用の洋式トイレもついている(その他の部屋は、トイレは共同)。そして、漫画のタイトルにも登場する「長八」のこての作品も鑑賞できるという。

鏝絵とは、漆喰を使って立体的な彫刻を施した装飾画だ。「長八」というのは、松崎出身の鏝絵の名人であった入江長八のこと。この松崎町には、長八の作品を展示する美術館もある。

入口

ロビーエリアから、廊下を進み、客室へと向かう。写真左手が「長八の間」のある蔵の壁だ。

こちらが、蔵の入口。この中が2階建ての居室になっている。そして、ここでもまた、既視感!

漫画に出てくる「長八の間」の扉、そのまんま!

階段

蔵の中には、急な階段がある。

そこを上がると、2階の和室への入口。そして、またまた、既視感!

まさに、漫画に出てくるこの階段だ!

2階

2階の和室は2間あった。

奥の部屋には、布団が敷かれていた。ここは、まさに!

漫画に出てくる、この客室!

漫画にも出てくるふすまは、まるで古美術!

調度品もレトロで、味がある。

長八の作品

上述のとおり、この蔵の部屋には、長八の鏝絵が施されている。1階から2階の窓を見上げると、左右、真ん中、屋根の裏に、豪華な装飾が見える。

こちらは1階から撮影した写真

2階の窓から首を出してみる。

真ん中の鏝絵は、漫画のものとそっくり。

居室からみて左手の虎の鏝絵。立体的で、躍動感にあふれている。

これも漫画に登場する。

居室から見て右手の虎の鏝絵。

こちらも漫画に登場する。

天井には、龍の鏝絵。

別の窓には、スズメの鏝絵も。

1階

蔵の1階には、居間になっており、テーブルと座椅子がセットされていた。

トイレと洗面台もついている。

「水」という文字が刻まれている屋根瓦。火事よけの願いが込められたものだろう。

 

お風呂

こちらのお宿には、男湯と女湯がある。この日のお客は私ひとりだったので、両方とも好きに使ってよいと言っていただいた。なんという幸せ!

男湯

まずは、男湯へ。

岩を使ったワイルドな湯船だ。またまた、既視感。

やはり、漫画で描かれていた岩風呂だ!

壁には、蟹のような模様が刻まれていた。鏝絵のように立体的ではない。

お湯は、無色透明、無味無臭。そしてちょうどよい湯加減だった。白い析出物が岩にたくさんこびりついていたのが印象的だった。

女湯

また、女湯へも行ってみた。こちらは、男湯とはタイプが異なり、伊豆石を使ったすっきりとした浴場だった。

温泉分析書

こちらが、温泉分析書(令和4年)。源泉は、町営6号泉(松崎6号)と9号泉(松崎13号)の混合泉。泉質は、カルシウム・ナトリウムー硫酸塩温泉。泉温は52.8度(使用位置42度)。PH値は8.6。加水、加温、循環ろ過、消毒無しの完全源泉かけ流しだ。

そして、昭和45年の温泉分析書も掲示してあった。かなりの年代物だ。源泉は町営温泉6号泉。旧泉質名は、含石膏ー芒硝泉。

(おまけ)つげ義春先生関係資料

休憩室の展示

こちらには、つげ義春先生関係の資料がたくさん展示されていた。

つげ義春先生から女将さんに送られてきた年賀状。独特のイラストと直筆の文章が、何とも味がある。

貸してくださった資料

お部屋でくつろいでいると、段ボール箱いっぱいの資料が届けられた。大女将さんのご厚意で、こちらのお宿を訪れたつげファンに、滞在中に貸してくださるのだという。

資料を広げてみた。

1968年の『ガロ』1月号。

料金は150円だ。

このお宿を舞台にした『長八の宿』が掲載されていたまさにその雑誌ではないか。感無量だ!

昔のパンフレットのレプリカ

こちらは、チェックアウトの際にいただいた、昔のパンフレットのレプリカだ。

このパンフレットも、まさに、漫画で取り上げられていた。

チェックアウトの際、つげ義春先生がこちらに宿泊された際に対応された大女将さんに、初めてお目にかかった。ご年齢は、なんと98歳(2024年時)。自ら帳場にて会計をしてくださった。マスクを付けていらっしゃったが、白髪と色白のお肌がとても綺麗で、思わず見とれてしまった。

大女将さんは、つげ先生との思い出を語ってくださった。つげ先生が宿泊した時分は、お客さんがとても少なかったこと。それが、『長八の宿』が『ガロ』に載ってからは、お客さんがどんどん増えていったこと。先生にお礼を言いたくて、東京の先生の自宅をアポなしで訪問したこと。それを知ったつげ先生は、無許可で漫画に描いたことで苦情を言いにきたと勘違いをしたこと。なんという素敵なエピソードだろう!

1960年代にタイムスリップしたような、昭和の香り漂うお宿。長八の鏝絵。たくさんのつげ先生関係資料。98歳の大女将。何もかもが特別で、感動しっぱなしだった。つげ作品の不思議な世界観にどっぷりと浸ることができた。まさにここは、つげファンの聖地だ。この宝物のような場所で、どうかできるだけ長く営業を続けていただきたいと願う。

素晴らしいお宿でした。お世話になりました!

こちらのお宿についての松崎町温泉旅館組合のページは、こちら。

私の他の温泉系記事へは、以下のリンク集からどうぞ!

つげ義春作品についての私の読書録の記事もどうぞ!

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