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【古代史探求】国宝キトラ古墳壁画の公開(第40回)〜国宝キトラ古墳壁画、白虎の公開に寄せて〜

奈良文化財研究所と文化庁が、国宝キトラ古墳壁画の一般公開(第40回)を発表した。今回展示されるのは西壁の「白虎」である。この機会に、キトラ古墳という古墳そのものについても、あらためて整理しておきたい。

一、公開の概要

会期は令和8年(2026年)8月1日(土)から8月30日(日)までで、8月12日と26日の水曜日は閉室となる。会場は奈良県明日香村、国営飛鳥歴史公園キトラ古墳周辺地区内にある「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」内の、文化庁キトラ古墳壁画保存管理施設である。入場は無料だが、事前申込制となっている。

申込は二段階に分かれており、第一次応募はインターネットまたは往復はがきで6月30日から7月5日まで、第二次応募は7月14日から8月29日まで、電話または公開ホームページから受け付けている。定員に空きがあれば当日受付も行われる。主催は文化庁と独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所である。

二、キトラ古墳とは何か

現地風景(筆者撮影)

キトラ古墳は、奈良県高市郡明日香村、藤原京の南に広がる古代の皇族・貴族らの墓域に位置する、小規模な二段築成の円墳である。上段の直径は約9.4メートル、下段は約13.8メートル、高さは上下段合わせて4メートルを少し超える程度と推測されている。築造年代は7世紀末から8世紀初頭頃と考えられており、被葬者は特定されていないものの、当時の高官・貴族級の人物とみられている。

「キトラ」という名の由来には諸説ある。石室を覗いた際に亀と虎の壁画が見えたことから「亀虎古墳」と呼ばれたという説、古墳南側の小字「北浦」が訛って「キトラ」になったという説、あるいは古墳が明日香村阿部山集落の北西方向にあることから、四神のうち北を司る玄武(亀)と西を司る白虎(虎)にちなんで「亀虎」と呼ばれたという説などが伝えられている。

三、石室に眠る極彩色の壁画

昭和58年(1983年)11月7日、石室内の調査によって北壁の玄武の壁画が発見され、世間や学界の注目を集めた。これは、極彩色壁画を持つ古墳としては高松塚古墳に次ぐ、日本で2例目の発見だった。その後、平成10年(1998年)には東壁の青龍・西壁の白虎・天井の天文図が、平成13年(2001年)には南壁の朱雀と四壁下部の十二支が、それぞれ確認されている。

石室内部には、18個の凝灰岩の切石を組み上げた構造の中に、天の四方を司る神獣「四神」が方位に対応する形で描かれている。東壁に青龍、南壁に朱雀、西壁に白虎、北壁に玄武という配置である。特筆すべきは、高松塚古墳では盗掘によって南壁の朱雀が失われてしまったため、日本国内で四神の図像がすべて揃って現存するのは、このキトラ古墳壁画のみだという点である。

四神の下段には、獣頭人身で表された十二支の像が描かれている。北壁中央の「子」を起点に、時計回りに各壁3体ずつ配置される構成になっており、損傷が激しいため、現時点で図像の存在が確認されているのは子・丑・寅・辰・巳・申・午・戌・亥の9体である。

四、東アジア最古級の天文図

石室の天井には、内規・赤道・外規からなる三重の同心円と黄道を備えた、本格的な天文図が描かれている。東には金箔で太陽が、西には銀箔で月が配され、日像・月像とともに星々の位置が精緻に示されている。

この天文図は、中国式の星図体系に基づきながら実際の観測結果を反映した図像として、現存する世界最古級の例とされる。中国・蘇州に伝わる南宋時代(13世紀)の「淳祐天文図」よりもおよそ500年古く、現存するものとしては東アジア最古の天文図にあたるという。古代バビロニアやエジプト、ギリシアにも天体を記録した資料は存在するが、その多くは写本や文献上の記述、あるいは象徴的な意匠として伝わるものであり、観測に基づく星の実位置を科学的に描いた図像がそのまま現存する例としては、極めて希少な存在なのだとされている。

五、特別史跡から国宝へ

キトラ古墳は平成12年(2000年)に国の史跡に指定され、続いて特別史跡に指定された。壁画の保存修理のため、石室内の壁画は平成22年(2010年)までにすべて取り外され、仮設修理施設で平成28年(2016年)まで修理作業が行われた。出土品は平成30年(2018年)に重要文化財に指定され、壁画そのものは同じく平成30年に重要文化財、翌令和元年(2019年)には国宝に指定されている。

発見から国宝指定まで、実に36年もの歳月が費やされたことになる。極彩色の壁画を保存し、後世に伝えるための修理と研究の積み重ねが、この指定の背後にはある。

おわりに

一つの円墳の石室に、四方の守護神と十二支、そして東アジア最古級の天文図が凝縮されている。7世紀末から8世紀初頭という、日本古代史の中でも国家の骨格が形づくられていく時期に、これほど精緻な宇宙観が石室の中に描き込まれていたという事実には、あらためて驚かされる。

今回公開される西壁の「白虎」は、四神の中でも保存状態が比較的良好とされる壁画の一つである。事前申込制ではあるが、興味のある方は文化庁のホームページから詳細を確認してみてほしい。

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