多職種連携がうまくいかない。本当の原因は"情報"ではありませんでした。
― 車椅子選びをもっと簡単に。誰でも使える「シーティング連携マトリクス」を無料公開します。
シーティング連携マトリクスを作った理由
おはようございます。
私がこのnoteを書き始めた理由は、「シーティング連携マトリクス」(記事の下から無料でダウンロードできます)を、一人でも多くの医療・介護・福祉に携わる方に知っていただきたいと思ったからです。
毎日の仕事で、
利用者さんに合う車椅子が分からない
多職種で情報共有がうまくできない
カンファレンスが報告会で終わってしまう
そんな悩みを、少しでも減らすお手伝いができればと思っています。
シーティングとは?
私は26年間、高齢者や脳卒中の方を中心に作業療法士としてリハビリテーションに携わってきました。
その中で学び続けてきたのが
**「シーティング」**です。
シーティングとは、
「その人が安全で楽に座れる姿勢をつくり、できることを増やすための技術」
です。
単に車椅子を調整することではありません。
その人が少しでも自分らしく生活できるように、姿勢や椅子、クッションなどを調整し、生活全体を支える技術です。
現在はシーティング講師として、全国で普及活動も行っています。
シーティングをすると何が変わる?
正しいシーティングによって、さまざまな変化が期待できます。
認知症のBPSD(行動・心理症状)が落ち着く
食事の食べこぼしが減る
腰痛や身体の痛みが軽減する
褥瘡(床ずれ)の予防や治癒を促進できる
寝たきりによる廃用症候群を予防できる
活動量やADL(日常生活動作)が向上する
つまり、「座る」ことが変わるだけで、その人の生活そのものが大きく変わることがあるのです。
医療・介護現場が抱える課題
病院や施設には、医師、看護師、介護士、リハビリスタッフなど、さまざまな専門職が働いています。
それぞれが専門的な視点で利用者さんを評価し、毎月カンファレンスで報告しています。
しかし実際には、
「報告はするけれど、その後どうするかが決まらない」
という場面を何度も見てきました。
病院では主治医が方向性を示してくれることもあります。
しかし、施設や在宅ではリーダーが明確ではないことも多く、多職種が持っている情報を一つにまとめることが難しいのが現状です。
私は、その原因の一つは
「多職種の情報を一枚で整理・分析できるツールがないこと」
ではないかと考えました。
シーティング連携マトリクス誕生のきっかけ
ある日、特別養護老人ホームでシーティングの指導をしていたとき、若い介護士さんからこんな言葉を掛けられました。
「先生の話は理想論です。現場では使えません。
最初は驚きました。しばらく考え、そして、気付きました。
現場が求めていたのは、
「難しい知識ではなく、誰でも簡単に判断できる方法」
だったのです。
「勉強しなくても、今持っている情報だけで、おおよその方向性が分かる。」
そんなツールがあれば、もっと多くの人がシーティングを実践できるのではないか。
そう考え、2018年にシーティング連携マトリクスの原型を作成しました。
その後、多くのシーティング有識者の協力をいただき、2021年には
『シーティングでわかる生活ケア ― マトリクスを活用し最期までその人らしく』
の巻末付録として「シーティング連携マトリクス2021版」を出版することができました。
(詳細はピポ・サイエンス出版ホームページをご参照ください。)
介護士さんが持っている力
私は介護士さんには、素晴らしい強みがあると思っています。
それは、
利用者さんへの深い思いやり
毎日の細かな観察力
好みや生活リズムをよく知っていること
食事量や排泄パターンを把握していること
わずかな体調変化にも気付けること
こうした情報は、実はシーティングを考える上で非常に重要です。
専門知識が足りないのではありません。
持っている情報を整理し、活用する方法がなかっただけなのです。
シーティング連携マトリクスの特徴
シーティング連携マトリクスには、次のような特徴があります。
紙1枚ですぐに使える
多職種で情報共有しやすい
問題点を整理・分析しやすい
ケアやリハビリの方針を立てやすい
利用者さんに合った椅子や車椅子を選びやすい
シーティングやケアの効果を評価しやすい
詳しい使い方は、私が作成したYouTube(日本語版・英語版)でも紹介しています。
ぜひご覧いただければ幸いです。
最後に
シーティングは、一部の専門家だけが行う特別な技術ではありません。
利用者さんと毎日接し、小さな変化に気づける皆さんだからこそできるシーティングがあります。
私のシーティングの師匠である光野有次先生は、こんな言葉を教えてくださいました。
「この人にシーティングが必要だと気づいた時点で、もう答えは見えている。」
私は、この言葉にシーティングの本質があると思っています。
多くの人は、「シーティングは難しい」「専門知識や高度な技術が必要」と思いがちです。しかし、それらはシーティング全体から見れば、最後の仕上げの部分です。
本当に大切なのは、「この方にはシーティングが必要だ」と気づくこと。
気づくことが、シーティングの始まりです。
そして、その気づきを多職種で共有し、その方に合った椅子や環境につなげていくことが、より良い生活への第一歩になります。
その「気づき」と「情報共有」を、誰でも簡単に行えるようにしたい。
そんな思いから生まれたのが、シーティング連携マトリクスです。
このマトリクスが、利用者さんの「もっと楽に座りたい」「もっと自分らしく生活したい」という願いをかなえるきっかけとなり、そして現場で働く皆さんの「どうしたらいいだろう」という悩みを解決する一助になれば、これほど嬉しいことはありません。
ぜひ、皆さんの現場で活用していただき、一人でも多くの方の笑顔につなげていただければ幸いです。
シーティング連携マトリクスは、非営利目的であれば自由にご活用いただけます。
ご質問や活用方法についてのお問い合わせは、下記までお気軽にご連絡ください。
