夏の午後、歯科衛生士さんと過ごした時間……。
それは恋人とのひとときに似ていると気がついた。
【おことわり】
聖なる医療に性愛を見出す、おばかなエッセイです。
ついて来れる人だけ読んでください💕ーーーーーー
コロナ禍のせいで、運動はおろか、歯医者さんさえサボりまくった。
それだから衛生士さんとは三、四年ぶりの再会であった。
ちなみに衛生士さんも筆者も、女性である。
かつてわたしは友人と、彼氏に口の中を見られることは、
大事な部分を見られるよりも恥ずかしいと、語り合ったことがある。
銀歯も徐々にセラミックに交換し、かなり白っぽい口の中にはなったが、それでも恥じらいを感じる。
もし「あーんして」と言われたら、いまでもできないかもしれない。
けれども、衛生士さんに言われたら、開けるしかない。
時にはお口の画像を大写しにされ、神経、骨の髄まで見られているときもある。
今日だって、歯周ポケットをほじられた。(ほじられたくて通っているのだが)
わたしは気づいた。
自分が、衛生士さんに絶大な信頼を寄せていることを。
わたしの歯を守ってくれるのは、わたしを幸せにしてくれるのは、
この人しかいないのだ。
どんなに歯磨きが上手でも、
プロにしか取れない汚れ、プロにしか見えない兆しがあるのだ。
言われるがままに背もたれに身を預け、横になり、目を覆われて……。
ねぇ、衛生士さんはどこにいるの?
どこから攻められるかも、わからない……。
これってまるっきり、一人でこっそり見た
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』みたいじゃないか?
「上の奥から行きますね……。」
囁きとともに、コトが始まる。
(ミスターグレイは、教えてくれないかもね(笑))
「大きく開けてください……。」
クールな声で、強めに言われる。
頬に、痛みを感じる。開けっ放しは結構しんどい。
よほどの時は 30秒ほど休ませてもらえるが、
「あと少しですよ……。」
ふいに優しく言われると、耐えるしかない。
唇に指が触れたり、時には軽く引っ張られることもあるし、
頭そのものを、右に左に動かされることもある。
今日も「まっすぐ向くんだ。」とイケボで言われた(ような妄想をしたが、実際は「まっすぐ向いてくださいねー。」という明るい声がけだ。)
口の中には唾もたまっていく。(吸ってもらえるが)
そんなこんなで、衛生士さんに身を委ねるこの治療は、
映画で見た恋のひとときと、酷似していると気がついてしまった。
(あくまでわたし目線(笑))
ちなみにレントゲン技術さん(男性)にも、束の間の疑似恋愛をしたことがある。これも、歯に関する場面だ。
その時は、上手に「イーーっ」とできるように、小さな綿を手渡された。
技師さんは優しく、噛むように言った。わたしは言われるがままに
まゆだまのようなそれを、上下の前歯で噛んだ。
これだけのことだが、あの手際の良い3分間に、わたしの心は完全に持っていかれた。
どうもわたしのなかには、誰かにリードしてほしいという気持ちがあるようだ。
独身だし、東京にいるので、基本は独力で頑張るようにしてきた。
自分なりに考え、答えを見つけてから、誰かに相談するようにしてきた。
だから医療現場のように、何も考えずにただ身を任せられると、
安心して、束の間の恋に堕ちてしまう。
困ったものだ。
思えば若い頃、形成外科で頭を縫ってもらったことがある。
抜糸の先生が、オペの先生がどんなに上手か、
傷を見ながら話してくれた。
その際にも、オペの先生を思い出して恋焦がれた。
もちろん、デートしたい、とかじゃない。
次の診察でまた会えることが嬉しかったのだ。
この感情の適切な名前は、まだわからない。でも多分、なんとか症候群と呼ばれている気がする。
学校の先生たちだけじゃなく、個性豊かなお医者さんたちを素敵と感じる人も少なくないはずだ。
そもそも男性陣の多くは、ナースを崇拝してるじゃないか(平成時代の話?)
やっぱりこれって普通のことなんだ(笑)
そう決めつけて、エッセイをしたためるにいたった。
喫茶ルノアールでこんなことを考えているのは、たぶん私だけだろう。

2025/8/2 追記
続編ができました。今度の恋のお相手は、演奏家😉
