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欠けた部分があっても、生きていく理由を見つけられる。「発達障害のよりみちが、それでも生きる理由。」


小学校1年生で学習障害(LD)と診断された長男

長男は、発達障害と言われたことがある。

小学校1年生の夏休み頃になっても、ひらがなが覚えられなかった。
担任の先生から「発達に遅れがあるかもしれない」と子どもの発達相談センターを紹介され、発達検査(S-M社会生活能力検査)を受けた。

当時、ひらがなを点線にそってなぞるだけの簡単なプリント1枚の宿題に、つきっきりで2時間以上かかる毎日だった。
こういうものなのか、小学生の子育てって大変だな、と思っていた。
他の子は学童で一人で宿題をやってきていると聞いて、すごいなあと感心していた。

やはり、何かがおかしかったのだ。

検査の結果、学習障害(LD)の傾向があると診断された。

バツがたくさん並んだ解答用紙を目の前に、親子で先生の話を聞いたけれど、何も頭に入ってこなかった。

🔽長男が小学校6年生の頃のブログ記事が残っていた。このときは中学校ではうまくやれると思っていたみたい…。

長男の20年間と重ねて読んだ一冊

それから14年。
長男はもうすぐ20歳になる。

中学校は不登校、高校は通信制。
そして今、自分で選んだ専門学校も不登校。

不登校になってから、自分でも何かがおかしいと思ったようで、心療内科にかかった。
初診は親が同伴する必要があるとのことで同行したが、長男は小学生の頃はおろか、高校時代の記憶すらあいまいだった。
療育に通っていたことも覚えていなかった。

診察の中で、小学校1年生の頃に受けたWISKの結果を見せたら「正常範囲ですね」と言われた。

学習障害ではなかったのか?
いや、正常範囲なのに、勉強ができなかったり物事が覚えられなかったりするからこそ、学習障害と言われたのか。

心療内科は、彼の望む診断をくれなかった。
つまり、うつや適応障害だとは言ってくれなかった。

通院はもうしていない。
衣食住を親に頼りながら、現状を誰かのせいにして生きている。

彼なりに考えているのかもしれない。
不安もあるだろうし、うまくいかないモヤモヤを抱えているだろう。

長男が、よりみちさんのように、才能を見つけ、育てて、開花させられる道はあるのか。
欠けている部分があったとしても、それ以上に尖った部分を伸ばせる可能性はあるのか。

他責の人生をやめて、自分にできることを最大限追求する人生を生きてほしい。
親の庇護下にいられる年齢はとうに過ぎた。
内面も成長しなくてはいけない。

そのヒントがどこかに隠れているのではと、本を読みながら考えていた。

この本が描くのは、孤独の中で光を探し続けた物語

『発達障害のよりみちが、それでも生きる理由。』は、絵本作家よりみちさんが自身の半生を綴った手記である。

発達障害の特性から、学校生活、仕事、人間関係まで、社会の中でつまずき続けた著者。
ことばが下手だった子ども時代、不登校になった思春期、就職してうつになり描けなくなった時期。
努力しても報われず、誤解され、心が折れ、何度も「もう無理だ」と思った。

それでも彼は、生きることを手放さなかった。
本書は、発達障害を抱える一人の人間が、孤独と混乱の中で必死に光を探し、誰かのために絵を描くことで"生きなおしていく"物語である。

父の余命宣告と葬儀、障害者雇用の面接での葛藤、そして「よりみち」という名前をつけた日。
X(Twitter)で障がいを開示して名乗ることの怖さと希望。
初めてのイベント開催、赤字と応援。
亡き父へ誓う生き方、人生の描き方。

苦しみの中にも、小さな光が差す瞬間がある。
絵の先生との出会い、キャンバスの匂い、スパゲッティボーイやホームさんとのネット上での繋がり。

そして何より、絵が彼を離さなかったこと。

著者のよりみちさんは、「はじめに」でこう書いている。

これは、私の話です。
でも同時に、あなた自身の"地図"を描くヒントになるかもしれません。
悔しさを抱えたままでも、大丈夫。
この本が、あなたにとっての"よりみち"にそっと寄り添えたら、それほど嬉しいことはありません。

『発達障害のよりみちが、それでも生きる理由。』はじめに

欠けた部分があるすべての人へ

この本は、欠けた部分のあるすべての人に読まれるべきだ。

発達障害の有無にかかわらず、誰もが何かしらの欠落を抱えて生きている。
それは能力かもしれないし、環境かもしれないし、運かもしれない。

完璧な人間などいない。
大切なのは、欠けた部分をどう受け止めるか。
そして、それでもなんとか生きていくこと。

よりみちさんは、自分にできることを最大限追求し続けた。
『アート』と『ことば』で生きるという選択をし、世界が応えてくれた。

長男は、専門学校を不登校になってから、iPadでデジタルイラストを描き始めた。
今はまだ立ち止まっている彼も、いつかよりみちさんのように立ち上がる日が来るだろうか。

この本を読んで思うのは、人生に「正しい時間割」などないということだ。
よりみちさんも、何度も立ち止まり、描けなくなったけれど、それでも絵が彼を離さなかった。

欠けた部分のない人なんてこの世にはいないから。
「あなたにも、生きる理由がある」と伝えてくれる。
生きづらさを抱えるすべての人へ。
読み終えた後、自分自身の地図を描きたくなる一冊だ。

シーアのプロフィールはこちら

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湯浅邦枝|インタビュー・ブックライター 気に入っていただけたら、SNSでシェアしていただけると励みになります!