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親を扶養に入れられる?税と健康保険で条件が違う

親が退職して年金だけの暮らしになると、「親を自分の扶養に入れれば、自分の税金か、親の保険料が下がるのではないか」と気になってきます。

ここでつまずきやすいのが、ひとくちに「扶養」と言っても、実は性格の違う2つの扶養があるという点です。ひとつは所得税の「扶養控除」、もうひとつは健康保険の「被扶養者」です。この2つは、入れられる条件も、判定に使う「収入」の数え方も違います。片方に入れても、もう片方には入れないことがふつうにあります。

この記事では、親を扶養に入れられるかどうかを、税と健康保険の2つに分けて、自分のケースに当てはめられる形で整理します。数字は令和7年改正を反映した現在の制度に合わせています。

1. 「扶養」は2種類ある——まず物差しを分ける

最初に、2つの扶養の違いを並べてみます。

所得税の扶養(扶養控除)
・効果:扶養している人(あなた)の所得税・住民税が安くなります。
・見るもの:親の「合計所得金額」(収入から控除を引いた後の額)。
・区切り日:その年の12月31日時点の状況で判定します。

健康保険の扶養(被扶養者)
・効果:親が、あなたの加入する健康保険に保険料の負担なしで入れます(親自身の国民健康保険料がかからなくなります)。
・見るもの:親の「これから1年間の見込み収入」(税引き前の年金総額など)。
・区切り:今後の見込みで随時判定します。

同じ「親の年金」を見ているのに、税は「控除後の所得」、健保は「税引き前の見込み収入」と、数える物差しが違います。だから片方の結論だけで決められません。税で外れても健保では入れる(その逆も)が、ふつうに起こります。

2. 税の扶養(扶養控除)に入れられる条件

親を扶養控除の対象にできるのは、次の4つをすべて満たすときです。

1. 配偶者以外の親族であること(父母・祖父母は対象です)。
2. あなたと生計を一にしていること(同居していなくても、定期的に仕送りをしているなどで生活費を共有していれば該当します)。
3. 親の合計所得金額が58万円以下であること(令和7年分から。以前は48万円でした)。
4. 親が事業専従者として給与を受けていないこと。

このうち、いちばん気になるのが3番の所得です。ここでいう「合計所得」は、振込通知に書いてある年金の額そのものではありません。親の収入が公的年金だけの場合は、その年金額から「公的年金等控除」という別の控除を先に引いて、残った額が合計所得になります。公的年金等控除は最低でも、65歳以上なら110万円、65歳未満なら60万円が引けます。

ここから逆算すると、税の扶養に入れられる年金収入の目安は、こうなります。

65歳以上の親:年金収入が168万円以下(110万円+58万円)
65歳未満の親:年金収入が118万円以下(60万円+58万円)

たとえば68歳の親で年金が年172万円なら、172万円から公的年金等控除110万円を引いて、合計所得は62万円です。58万円を超えているので、この親は税の扶養には入れられません。逆に年金が年150万円なら、150万円−110万円で合計所得40万円となり、58万円以下なので入れられます。自分の親の年金額(年額)から110万円(65歳以上の場合)を引いて、58万円を超えるかどうかで当ててみてください。

控除額(あなたの税金が安くなる額)は、親の年齢で変わります。

・親が16歳以上70歳未満:38万円
・親が70歳以上で、別居:48万円(老人扶養親族)
・親が70歳以上で、あなたや配偶者と同居:58万円(同居老親等)

同居している70歳以上の親(同居老親等)がいちばん控除が大きく、58万円です。なお、病気の治療で長期入院しているあいだは「同居」として扱われますが、老人ホームに入所している場合はホームが住まいとみなされ、同居にはあたりません。

3. 健康保険の扶養(被扶養者)に入れられる条件

健康保険の被扶養者にできるのは、次を満たすときです。

1. 親が75歳未満であること。75歳になると親は後期高齢者医療制度の対象になり、健康保険の被扶養者にはなれません(ここは税の扶養と大きく違うところです)。
2. 親の年間の見込み収入が130万円未満であること。ただし親が60歳以上または障害のある人なら、180万円未満まで認められます。年金生活の親はたいてい60歳以上なので、180万円未満が目安になります。
3. 主としてあなたの収入で生計を維持していること。同居の場合は親の収入があなた(被保険者)の収入の半分(1/2)未満であること、別居の場合は親の収入があなたからの仕送り額より少ないこと。
4. 父母・祖父母などの直系尊属は、別居でも被扶養者になれます(仕送りの条件は必要です)。

健保で見る「収入」は、これから1年間の見込み額で、年金は税引き前の総額で数えます。税のように控除を引いた後の額ではないので、同じ親でも健保のほうが収入は大きく出ます。たとえば年金150万円の親なら、税では合計所得40万円ですが、健保では150万円のまま見込み収入として数えます(どちらの基準にも収まる額です)。

4. 年齢と年金額でみる早見表(65歳以上の親)

いちばん多いのが、65歳以上で年金暮らしの親です。年齢と年金の年額の2つだけで、税と健保のどちらに入れられるかが、おおよそ見分けられます。自分の親の年齢帯を、次から探してみてください。

・〜74歳/年金168万円以下 … 税は○(入れられる)・健保も○(別居は仕送りの条件あり)
・〜74歳/年金168万円超〜180万円未満 … 税は×(所得が58万円超になるため)・健保は○(60歳以上は180万円未満まで)
・〜74歳/年金180万円以上 … 税は×・健保も×
・75歳以上/年金168万円以下 … 税は○(年齢の上限なし)・健保は×(後期高齢者医療制度のため)
・75歳以上/年金168万円超 … 税は×・健保も×

(※65歳未満の親は、税は年金118万円以下、健保は60歳以上なら180万円未満・60歳未満なら130万円未満が目安になります。)

○か×かは、税と健保で別々に出ます。「税は×だけど健保は○」「健保は×だけど税は○」という食い違いが、ここでもふつうに現れます。次に、よくある3つのケースで具体的に当てはめてみます。

5. よくある3つのケースで当てはめる

ケースA(いちばん多い):同居・68歳・年金150万円の親
年金150万円から公的年金等控除110万円を引くと、合計所得は40万円です。58万円以下なので、税の扶養に入れられます。同居している70歳未満なので控除額は38万円です。健保も180万円未満で、親の年金があなたの年収の半分未満なら被扶養者になれます。税・健保とも○が付く、いちばん多いパターンです。

このとき、税の扶養に入れると、控除額(この例は38万円)のぶん、あなたの課税所得が減ります。軽くなる所得税は「控除額 × あなたの所得税率」で決まり、たとえば所得税率10%の人なら、38万円×10%でおよそ年3.8万円ほどです。これとは別に、住民税も軽くなります(住民税の扶養控除額は所得税とは異なるため、額は別に計算されます)。もし親が70歳以上であなたと同居している(同居老親等)なら控除は58万円に増え、軽減額もその分大きくなります。

ケースB:別居・72歳・年金175万円の親
175万円−110万円で合計所得65万円となり、58万円を超えるので税の扶養には入れられません。一方、健保は180万円未満なので、別居でもあなたからの仕送りが親の年金より多ければ被扶養者になれます。税は×・健保は○という食い違いの例です。 このとき、銀行振込など仕送りの記録が残る形にしておくことが分かれ目になります。

ケースC:同居・77歳・年金160万円の親
160万円−110万円で合計所得50万円となり、58万円以下なので税の扶養には入れられます。控除額は同居老親等で58万円です。ところが健保は、75歳を過ぎると後期高齢者医療制度の対象になるため入れられません。税は○・健保は×という、逆の食い違いの例です。

なお、親が年金とパート収入の両方を持っている場合は、少し注意が必要です。税では、年金は公的年金等控除を、パートは給与所得控除を、それぞれ別々に引いてから合算した「合計所得」で見ます。一方、健保では両方を税引き前のまま足した見込み収入で見ます。ここでも数え方が分かれるので、片方の物差しだけで単純に足し算しないことが要点です。

6. 判定の順番と、見落としやすいポイント

自分のケースは、次の順番で当てると迷いません。

1. 親の年齢を確認する(70歳・75歳が境目)。
2. 親の年金収入の年額を1つ用意する。
3. その額を、税の物差し(65歳以上なら168万円以下か)で当てる。
4. 同じ額を、健保の物差し(60歳以上なら180万円未満か。75歳未満か。同居なら自分の収入の半分未満か、別居なら仕送り未満か)で当てる。
5. 税と健保は別々に結論を出す。

そのうえで、損をしないために見落としやすいのが次の2点です。

健保の扶養に入れると、親自身の国民健康保険料がかからなくなります。 父母・祖父母などの直系尊属は別居でも入れるので(仕送りの条件は要ります)、別居の親に仕送りをしているなら、検討する価値があります。
税の扶養に入れると、あなたの所得税と住民税が軽くなります。 軽くなる額は親の年齢と同居かどうか(控除38万〜58万円)、そしてあなたの税率で変わります。年末調整や確定申告で、扶養親族として親を記入すれば反映されます。

「税はダメでも健保は可能」「健保はダメでも税は可能」という食い違いは、制度の設計上ふつうに起きます。だから親の年金額は、税と健保の両方の物差しで一度ずつ当てて判断します。

まとめ

・扶養には「税の扶養(扶養控除)」と「健康保険の扶養(被扶養者)」の2つがあり、条件も収入の数え方も別です。
・税の扶養:親の合計所得58万円以下(年金なら65歳以上で168万円以下が目安)。控除額は38万〜58万円。年齢の上限はありません。
・健保の扶養:75歳未満・年収180万円未満(60歳以上の場合)・同居は自分の収入の半分未満/別居は仕送り未満。
・75歳以上の親は健保には入れませんが、税の扶養には入れられます。
・自分のケースは、親の年金額を「税の物差し」と「健保の物差し」で別々に当てて判断します。

(※制度の数値は令和7年改正を反映した現在のものです。実際の判定は、勤務先の健康保険組合や市区町村の窓口、確定申告の手引きでご確認ください。)

親を扶養に入れて保険料や税の負担が変わってくると、次に気になるのが、これから親の介護や医療にどれくらいお金がかかるのか、ではないでしょうか。親の介護費用を在宅・施設の両方で自分のケースに当てて1枚に整理する方法は、別の記事でまとめています。

扶養の判定で親の所得を確かめたなら、その数字はそのまま介護費用の見当にも使えます。同じ要介護度でも、在宅と施設では月の負担の決まり方が違います。その違いを並べた記事はこちらです。
親の介護費用、結局いくら?——在宅・施設を「自分のケース」で1枚に並べる

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