アキラの青春物語 第19話
第19話:告白
〜電話の向こうで、俺はもう逃げなかった〜
ミホからの着信は、突然だった。

いつものように電話に出て、
いつものように少し話す。
でもその時、俺は友達と一緒にいた。
「今、ちょっと友達と遊んでてさ」
そう言って、
いったん電話を切った。
部屋に戻ると、
周りの空気が変わっていた。
「今の誰だよ?」
「え、女?」
「彼女じゃね?」
茶化す声。
ニヤニヤした顔。
でも俺は、逃げなかった。
「……好きな人」
そう言った瞬間、
その場が一気に沸いた。
「は!? マジで!?」
「告白しろよ、今!」
「今しかねぇだろ!」
正直に言えば、
俺は怖かった。
告白には、トラウマがあった。
中学の頃、
勇気を振り絞って伝えて、
言葉が足りなくて、
沈黙して、
振られた記憶。
だから分かっていた。
俺ひとりじゃ、また逃げるかもしれない。
でも今回は、
人の力を借りてもいいと思った。
逃げないために。
前に進むために。
俺は、もう一度ミホに電話をかけた。
「……ミホ」
「うん?どうしたの?」
声を聞いた瞬間、
心臓がうるさく鳴り出す。
俺は、はっきり言った。
「好きです」
ちゃんと、言えた。
逃げずに。
沈黙せずに。
でも――
ミホの反応は、すぐには返ってこなかった。
間があって、
少し戸惑ったような声。
煮え切らない。
迷っている。
その空気に、
周りの友達がザワつく。
「代われ!」
「行け行け!」
気づいたら、
友達が電話を奪っていた。
「アキラ、めっちゃいいやつだからさ!」
「真面目でさ、ちゃんとしててさ!」
「絶対大事にするから!」
無茶苦茶だ。。。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
再び電話が俺に戻る。
「……もう一回、言うね」
俺は深呼吸して、
もう一度、言葉を選ばずに言った。
「ミホと、付き合いたい」
少しの沈黙のあと、
ミホが言った。
「……私で、いいの?」
その一言で、
全部が報われた気がした。
「もちろん」
即答だった。
その後のことは、
正直あまり覚えていない。
どうやって帰ったのかも、
何を話したのかも曖昧だ。
ただ、覚えているのは――
身体の奥から、
とんでもない力がみなぎる感覚。
マラソンなら、
42キロ全力で走れそうだった。
水泳なら、
息継ぎなしで100メートル泳げそうだった。
野球なら、
150キロストレート100球連投出来そうだった。
それくらい、
世界が軽くなっていた。

翌朝。
学校でミホと顔を合わせた瞬間、
俺は目を逸らしてしまった。
恥ずかしくて、
直視できなかった。
すると――
後ろから、ちょんちょん。
振り向くと、
ミホが笑っていた。
「昨日は、ありがとう」
「今日、一緒に帰ろうね」
それだけで、
一日中、俺はニヤニヤしていた。

中学の俺だったら、
この瞬間まで来られなかったと思う。
告白する前に、
怖くなって、
理由をつけて、
きっと逃げていた。
でも今は違う。
この一年で、
俺はちゃんと成長していた。
人と向き合うこと。
言葉を重ねること。
関係を育てること。
それを、
ミホとの時間が教えてくれた。
イザワへの告白は、
憧れだった。
ミホへの告白は、
関係だった。
同じ告白でも、
意味はまるで違った。
だからこの告白は、
勢いじゃない。
奇跡でもない。
積み重ねた日々の、
自然な続きだった。
アキラという男の物語は、
ここでついに――
恋を「掴んだ側」になる。

