家なしで始まった父娘の車生活。最低限の荷物で走り出した日|1年半のキャンピングカー旅
「家をなくす。」
そう決めた僕は、娘と一緒にキャンピングカーで宮崎の家に向かっていました。
これから、車が僕らの家になる。
家に到着して目に入ったのは、生活が突然止まったような部屋でした。
出ていった妻と長男の荷物がすっかり無くなり、僕と娘の荷物、そして家具や家電が息を止めたように残っていました。
数ヶ月前まで当たり前にあった家族の姿は、もうそこにはありません。
でも、余韻に浸っている時間はない。
僕はすぐに、荷物の断捨離に取り掛かりました。
キャンピングカー生活とかバンライフって、言葉だけ聞くと自由で優雅で楽しそうかもしれません。
でも僕の場合は、もっと地味で、もっと切実なことでした。
子育てしながら、車を家にして暮らす。
ゼロから生活を立て直す覚悟でした。
この記事では、家がなくなった日から始まった僕と娘の車内生活で、僕がしてきた工夫を、実体験のまま書き残します。
車中泊やキャンピングカー生活に興味がある方や、いつか災害などで「車で暮らすかもしれない」と感じたことがある方へ。
僕の経験が何かのヒントになれば嬉しいです。
僕と娘のキャンピングカー旅の記録は、ここにまとめています。
家がなくなった日、最初にやったこと
妻と息子がいなくなった宮崎の家では、感情はもちろん揺れます。
数ヶ月前まで当たり前にあった家族の気配が消えている。胸の奥が重すぎる。
でも、立ち止まって考えていても、現実は一ミリも動かない。さすがに小6の娘には頼れない。
とにかく僕は、手を動かすことにしました。
車で暮らすとなると、積める量は決まってきます。さすがに家のすべての荷物を車に押し込むことはできません。
だから最初にやったのは、「捨てる(手放す)ものを決める」ことでした。
まず、「捨てる/手放す」ものを決める
真っ先に手をつけたのは、車には物理的に積むことができない大きいものからです。
冷蔵庫、洗濯機、テーブル、食器棚、扇風機、服のタンス、ベッド、自転車。
次に、家では当たり前に使っていたけど、車では使わないもの。
炊飯器(家族用)、トースター、掃除機、食器や鍋の大半。
一番しんどかったのは、お気に入りのものでした。
ギブソンのレスポールカスタムを含むギターたち。
こだわって揃えた家具や椅子。
同じものはもう手に入らないこれらのものは、正直、手放したくなかった。
でも、モノは死ぬ時は持っていけない。そう言い聞かせて自分を納得させました。
次に「車に積む」ものを決める
捨てる/手放すものが決まると、現実がより前に進みました。
残ったもののほとんどは、車で暮らすために最低限必要なものでした。
最低限の服と下着
布団とまくら
タオルや洗面などの日用品
仕事道具のMacBook ProとiPad mini
通信インフラのiPhone
娘の教科書やノート
家をなくして車で生活すると決めたことで、生きていくために大事なものって、実はそれほど多くないことを知りました。
車に積めない必要なものは「外に預ける」
それでも、どうしても全部は持っていけない。
日常の生活では必要ではないけれど、捨てたくない本や服、靴、思い出の品が段ボール数箱分残りました。
それらは、有料の保管サービスに預けました。
「いつかまた生活が落ち着いたら送ってもらおう」と思うだけで、気持ちが少しラクになりました。
AtoZ時期は、座れて寝られればOKだった
家を完全に引き払った日、キャンピングカー「AtoZ(マツダのボンゴトラックがベース)」に荷物を積み込み出発しました。
この時点では、まだ「キャンピングカー生活を整える」なんて発想はありません。
目の前にあったのは、家がなくなった事実、そして今日、明日をどう生きるかを考えることだけでした。
生活より移動
当然、同じ場所に車を停めて生活するわけではありません。
停める場所も毎日変わるし、次の朝に動けない状態になるのが一番怖い。
まずは、移動する状態を常に保つことが最優先です。
だから、最初の段階では、整理とか収納は後回し。
そんな余裕はありませんでした。
最低限できることはこの2つ。
仕事や勉強、食事のときに座れること
体をまっすぐにして寝られること
それさえできれば、とりあえず「今日」を越えられる。
正直、それだけで「家なしキャンピングカー生活」は精一杯でした。
2ヶ月後、ベントラで始まった手作りの生活
AtoZでの生活から約2ヶ月後。
僕と娘は、改造したてのベンツのバン(ベントラ)に乗り換えました。
ここからでした。
本気で「車で暮らす」生活が始まったのは。
ベントラは、まだ「未完成の家」だった
ベントラは、いわゆるバンライフのための車。
でもその頃のベントラは、まだ理想とは程遠かったのです。
改造したてで、設備は整っていない。
生活の仕組みも、当然できていない。
ひとことで言えば、
「家具が何もない部屋に、いきなり住み始めた」
状態。
部屋自体はある。棚も収納もある。
でも、暮らすための配置が何も決まっていない。
僕らはまさに、その状態で走り出してしまったんです。
とはいえ、僕はその未完成な生活をむしろ望んでいたし、どう工夫していこうかとワクワクしていました。
配置が決まると、生活が回り始めた
ベントラに乗り換えた直後は、棚も収納も形だけはありました。
でも、入れる場所があるだけでは生活はうまく回りません。
必要なのは、どこに何を置けば生活がしやすいかを決めていくことでした。
狭い車内だから簡単そうですが、逆に狭いからこそ工夫しなければいけませんでした。
だから、試しては改善の繰り返し。
最初の期間は、毎日模様替えしてるみたいでした。
面倒な作業かもしれませんが、僕にとっては、むしろ楽しかったんです。
よく使うものから、収納場所を固定していく
最初から完璧にはできません。
試してみて分かったのは、毎日またはよく使うものから場所を決めていくことです。
毎日のことといえば、着替えの服やタオル、歯ブラシは定番でしょう。
一番取り出しやすい引き出しや収納場所に、それらを優先して入れました。
そして生活となると、まず毎日の食が中心になります。
僕の場合は、米はほぼ毎日炊くので、小型炊飯器と米はすぐ取れるところに置きました。
ほかの工夫では、食器入れは無印良品のスタッキングできるチェストを2つ買って整理しました。
場所によって、スタッキングしたり横に並べたりしています。
無印良品のシンプルな製品が、ウッド調のベントラの車内の雰囲気に溶け込んだので、ラタンボックスを買って小物入れにしました。
このように食器や小物をまとめるために、気に入った収納ボックスを揃えると、生活が整っていく感じがします。
小さいことですが、車で暮らすにはこういうことが大事だと思っています。
モノがよく落ちる
よく使うもので気をつけないといけないのは、テーブルや棚に置きっぱなしにしてしまうことです。
当然、キャンピングカーって動きますから、よくモノが落ちるんです。
滑り止めシートを敷いておけば、落ちにくくなるものはあるので、保険として棚の上には必ず滑り止めシートを敷いています。
一番の大失敗
今までいろんなモノが落ちて、モノや床が傷ついたりしたことがあるんですが、僕がやった大失敗は当時激しく落ち込みました。
それは、ベントラで快適に動画編集の作業ができるように奮発して購入した、大型(37.5インチ)のウルトラワイドモニターのことです。
価格は10万円以上しました。
使わない時は邪魔になるので、スタンドから外して、1mほどの高さにあるベッドの上に置くようにしていたのです。
ここからは想像つくと思いますが、置いたまま出発してしまい、モニターが床に落下。
ヒビが入って大きく割れ、画面は半分しか映らなくなりました。あっけなく、ただの荷物になってしまったのです。
購入してまだ数回しか使ってなく、とても気に入っていたのでしばらく落ち込んでました…
2台目なんて買う余裕も元気もなかったので、そのまま旅を続けました。
くれぐれも出発時には、モノが置きっぱなしになってないか確認を忘れずに。
天井の空間を有効活用した
キャンピングカーでは、天井付近に棚や収納スペースが設けられているのをよく見ます。
しかし、ベントラの天井は広々としています。
それはそれで快適で、個人的にはその空間が好きなのですが、かさばる毛布やタオルの置き場に困ることがでてきました。
特に夏は、毛布が近くにあるだけで暑さを感じます。
とはいえ、旅をしながら棚を自作するのは無理がありました。
そこで考えたのが、天井にネットを張って吊るす収納を作ることでした。
天井に吊り下げる金具を数箇所固定して、ネットをひっかけるだけ。
ここに入れるのは、次のように軽くてかさばるものです。
毛布
ブランケット
バスタオル、タオル
大きめにつくったので、かなり使い勝手がよいです。
また、見た目も個人的には馴染んでいてバンライフって感じが気に入っています。
ベントラは171cmの僕が立っても天井に余裕があるので、このネットが天井にあっても圧迫感はまったくありません。
思い返せば、未完成の家を、自分の手で住める形にしていく。
その最初の一歩が、この天井ネットでした。
未完成のバンだから面白い
ベントラに乗り始めたときは、未完成の家でした。
でも、だからこそ面白かった。
旅の途中にはできなかったことは、旅が終わってから少しずつ手を入れました。
まずジグソーを買って、もともとあった収納棚を思い切って切り、冷蔵庫を収めました。
さらに、3つの引き出しを思い切って取っ払って、クローゼットとして作り直しました。
今では、どこに何があると暮らしやすいか、全部分かっています。
収納って、暮らしそのものだなって思います。
でも終わりはない。
暮らし方が変われば、収納も変わる。
今は家があるので、ベントラはもう1つの部屋って感じです。
それでもベントラは、今でも僕らの家です。

おわりに
次回は、キャンピングカー生活の中心となる「ご飯」について書きます。
続きはこちら。
👉 父娘の車中泊300泊、ご飯事情のリアル|1年半のキャンピングカー旅
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初めて僕の記事を読んでくださった方へ──
よければ、最初に書いた自己紹介の記事も読んでみてください。
せきたつや
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