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アンドロイド転生1303

2129年6月30日
白水村の集落 リビングにて

東洋人男性がNASA入局というニュースが、世界と同時に日本国内を駆け巡った。その男性の笑顔を見てホームの村人達はテレビの前で仰天した。

「カ…カナタ…」

NASA(アメリカ航空宇宙局)が4年に一度の宇宙飛行士の募集をして約2万人の応募者の中から宇宙飛行士候補として15人を選んだのだ。その中の1人がカナタである。

たった今、正式に発表された。記者会見の席には15人の入局者が並んでいた。カナタの笑顔がズームされた。引き締まった良い表情だ。彼のプロフィールが紹介された。

『カナタ・ドウガミ。27歳。ハーバード大学院卒業。博士課程修了。卒業後はアメリカの国立衛生研究所に入所。感染症対策部署に所属。研究分野は主に生物の脳について。NASA試験に1発合格』

村民達は呆気に取られている。

「カナタだよな?あの元気で能天気な…」
「信じられない…」

さすがの村民も事の重大さが分かる。いくら閉鎖的な村で暮らそうとも、宇宙飛行士と言う難関は理解していた。

宇宙飛行士には知識や技術だけでなく、忍耐力、責任感、協調性、積極性、公平性など、多くの資質が求められる。それらが彼に備わっているからこそ、高い倍率を勝ち残ったのである。

「アラタ(新)を呼べ!今すぐ!」

誰かが声を上げ、間もなくカナタの父親のアラタが妻を伴ってやって来た。村人達がニュースを見せると、アラタはあり得ない程に目を開いた。理解が追いつかず戸惑っていた。

彼は息子の優秀さをずっと知らなかった。カナタが伝えていなかったからだ。カナタは大学進学の際に、アメリカのハーバード大学を選んだ。両親はハーバード大学はボランティア活動が盛んな学風だと思っていた。

大学院まで進み、卒業後にアメリカの国立衛生研究所に就職したと聞いても深く考えていなかった。キリが度々「カナタは優秀だ」と言っても意に介さず、こう応えていたのだ。

「優秀ってのは思慮深く相手を思い遣れることを言う。あいつは天真爛漫過ぎていかん」
「それがカナタの持ち味じゃないの!性格が良くて勉強も出来るんだよ」
「勉強なんて足し算が出来れば何とかなる。それよりももっと大事なことがある」
「それはそうだけど…」

アラタには彼なりの持論があった。
①物事を慎重に注意深く考えること
②善悪の判断が適切に出来ること
③思慮深いこと

それらが人として最重要であると考えていたのだ。確かにそれは正しいことだ。だが彼は息子を見ているようで、本当は気付いてなかった。カナタに既に備わっていることに。

テレビではリポーターがカナタにマイクを向けた。最年少で合格したことを存分に祝っている。カナタは堂々と胸を張り、ニッコリと笑う。以下は英語の会話である。

『何故、宇宙飛行士になりたいんですか?』
『いつか人類は宇宙で暮らすようになると思うからです。今は宇宙飛行士の半分以上はアンドロイドだけど、まずは僕が安全に暮らせるのかどうか試してみようと思いました』

そうなのだ。過酷な宇宙環境にはアンドロイドの方が適任だ。それでも人が行かなくてはならない。いずれ人類は地球以外で暮らす選択を迫られるかもしれないからだ。リポーターは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

『優秀な自分に続けと?』
『まさか!僕が宇宙に行って楽しく暮らせるなら人類全員が楽勝ですよ』

屈託のない彼は、心からそう思うのだ。


※ハーバード大学に進学したいと両親に願ったシーンです


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