アンドロイド転生1403
2131年7月28日
イギリス ロンドン カフェにて
新婚旅行に訪れたトウマとシオンは、カフェで寛いでいた。間もなくここにリョウと妻のミア、そしてカナタとイギリス出身の恋人であるジェシカがやって来るはずだ。
窓から見える風景は、日本の新都市とは違って時の流れを感じさせるものだった。その時、ビッグベンが2時を知らせた。その重厚な音色はまるで歴史が脈打つようだ。
すると店の扉が開き、8歳位の少年が2人の元へ駆け寄ってきた。東洋人に近い顔立ちだが、西洋の趣きも併せ持つ子供だ。少年はニコニコとしている。
「Hi!待った?えっと、シオンとトウマだよね。結婚おめでとう。僕、ユアン。漢字はこう!」
彼は宙空に人差し指で『優安』と書き、小さな手をさっと2人に向かって差し出した。2人が順番に手を出すと、ユアンは両手で握ってぶんぶんと振る。屈託のない様子にシオンたちは思わず笑顔になった。
ユアンはシオンの隣に座ると、メニューのホログラムを立ち上げ、「なんにしようかなぁ…」と呟く。そこに赤ん坊を抱いたナニーアンドロイドがやって来てシオン達に挨拶をした。
その後からリョウとミア(美愛)が5歳位の2人の女児と手を繋いでやって来た。リョウは椅子に娘達を座らせると、2人に向かって自慢げに、かつ照れ臭そうに笑った。
「双子なんだ。今や4人の子持ちだよ」
「すごいな」
「おい、ユアン!ちゃんと挨拶したか?」
「したよ。おめでとうって言ったよ」
「よし」
「パパ、僕はアップルソーダにする」
「OK」
リョウは2人に祝福の言葉を贈り、頭を下げた。
「参列できなくてすまん」
「いいさ。こうやって会えたんだから」
ミアがホログラムを立ち上げた。そこにはQRコードが映っていた。
「ささやかですが、お祝いです」
「有難うございます」
シオンはスマートリングでホログラムのコードを読み取った。贈り物はイギリスの高級食器ブランド、ロイヤルコペンハーゲンのアフタヌーンティーセットだった。すぐに東京に発送され、自宅で待つ秘書のエルが受け取るだろう。
シオンは2人を見つめ、感慨深い気持ちになった。11年前の今頃、リョウとミアはイギリスで結婚式を挙げたのだ。親戚代表としてシオン、ルイ、カナタの3人が参列した。今やリョウは大家族。双子にジュースを飲ませる姿が微笑ましい。
「兄ちゃんはすっかり父親だなぁ…」
「シオン達もいずれ親になるんだろ?」
「うん。秘書のエルが産んでくれるってさ。ね?トウマさん」
「うん」
現代は同性同士の生殖遺伝子を組み合わせることも可能であり、アンドロイドの人工子宮で出産できるようになったのだ。するとユアンがシオンを見上げ、自慢げな顔をする。
「うちはみんなママが産んだんだよ!」
「そっか。それは凄いな」
「まだ産むんだって!」
「へぇ…」
シオンはミアを見た。双子の口元を拭いている。
(この時代に自分で産むんだから、本当に子供が好きなんだな。11年前は…いくつだ?25歳位だったっけ?今も若いなあ。健康そうだし、あと5人くらいは産めそうだ)
ミアがシオンの視線に気づき、シオンとトウマを見つめて嬉しそうな顔をした。
「イケメン2人の子供なんて可愛いだろうね。今から楽しみ!」
その時、カフェの扉が開いてカナタとジェシカが入ってきた。颯爽とテーブルにやって来る。
「よっ!シオン、おめでとさん!」
「有難う」
そしてカナタはトウマに祝いの言葉を贈り、椅子に腰を下ろした。シオンはまた感慨深い気持ちになる。日本の山奥で暮らした3人が異国の地で再会したのだから。
※3人がリョウの結婚式に訪れたシーンです
※双子はこの時に誕生しました
