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アンドロイド転生1583

(回想) 2049年 84年前の夏 丑三つ時
ホームにて

ケンジは正義のヒーローになるつもりだった。おもちゃのピストルであっても5歳の彼にとっては最強のアイテムだったはずだ。ところがあまりにも無力だった。

父親と鬼の戦いも明らかに父親の方が劣勢だった。そしてケンジの目の前で父は本物の銃に撃たれた。鬼が次にケンジに狙いを定めたとき、眩い光が辺り一面を染めた。

「警察です!完全に包囲しています!あなたの背中にはライフルの焦点が合っています。両手をあげて、その手から銃を落としなさい。3秒以内にしないと撃ちます。今すぐに投降しなさい!」

鬼は「運のいいクソガキ」と言うと、両手をあげて銃を手放し、くるりと振り向いて警察がやってくるのを待った。間もなく鬼は連行されていった。

ケンジは尻をつき、後ろに両手をついていた。はぁはぁと息が切れ、震えが止まらなかった。ケンジのそばに大人がやって来た。彼には「警察」の意味がわからなかったが、どうやら自分を救ってくれたようだ。

女性警官はケンジの腫れた頬や、鬼に踏まれた手を確認している。
「手当てをするからね。お名前は?なんて言うの?」
「お父さんは…」
「うん…まずは僕の手当てをしようね」

ケンジはぷるぷると首を横に振った。
「いやだ…お父さんに会いたい」
「お父さんは…疲れちゃったみたいで眠っているの」
「いつ…起きる…」
女性は答えなかった。

・・・

(現在) 2133年8月13日 午後
ホーム 会議室にて

村長のサトシの告白が終わった。会議室は水を打ったように静まり返っていた。
「ケンジは後悔したんだ。あの時、ピストルを取りに戻らなければ良かったって…何度も何年も言い続けてな…」

そして、ふぅと溜息をつく。
「全くタウンの馬鹿者たちは酷いことをしてくれたもんだ。今時の若者には考えられないが、あの時代はそんな血気盛んな奴らがいたんだ」

彼はまた深い溜息をつき、肩を落とした。
「あいつは80年以上経った今でも、心の傷として残っている。恨みじゃないさ。悔やんでも悔やみれないと、自分を責めているんだろうな」

アオイはポツリと呟いた。
「お父さんがリョウヘイさんだから…息子の名前をリョウにしたんですね…」
「多分な…」

・・・

会議室を出たケンジ。その後を追う妻。ケンジは中庭にやって来てガーデンチェアに座った。目の前で子供らがうさぎの世話をしていた。5歳のスイはうさぎを抱き上げて大喜びだ。

スイの姿が5歳の頃の自分と重なる。スイには同じような辛いこと、悲しいことに遭ってほしくないと心から思う。妻も幼子を見つめ、やがて口を開いた。

「ねぇ、本当に1人で村に残るつもり?」
「ああ、俺は最後の番人になる。墓守りをするさ」
「最後の番人にはならないわよ。タカオ君が言ってたでしょ?見捨てないって」
「ふん、面倒な男だ。俺のことなど放っておけ」

「放っておけないから、ホームは1000年も続いたんじゃないの。それこそが家族という繋がりなのよ。だから私も放っておけません」
「面倒臭い女だな」
「何言ってるの?あなたが1番面倒よ」

妻は空を見上げた。
「天国のお父さんは墓守なんてしなくていいって言ってる気がする。それよりも俺の分まで長生きしろって言ってる気がする。人生130年。あなたはまだ41年もあるのよ。タウンに行けばね」
「なんだ?お前は行きたいのか?」

「う〜ん。それよりもイギリスに行きたい。リョウがどんな暮らしをしているか見てみたいの。息子ともう2度と会えないなんて嫌だもの。ね?そう思わない?」
ケンジは何も答えなかった。



※両親とリョウのシーンです。リョウはイギリスへ行くと言いました


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