アンドロイド転生1304
2129年6月30日
白水村の集落 リビングにて
NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙飛行士候補生という難関に合格した15人の精鋭達。その中で最年少の27歳の東洋人。ドウガミカナタ。彼の父親のアラタは仰天した。
テレビの記者会見の席では、宇宙飛行士候補1人1人にインタビューが行われている。カナタの番がきた。
『いつか人類は宇宙で暮らすようになると思うからです。僕が宇宙に行って楽しく暮らせるなら人類全員が楽勝ですよ』
そう言って屈託なく笑う彼の言葉は、紛れもない本心から出たものだ。インタビューは続く。
『ところであなたはボランティア活動に熱心ですね?何がそうさせたのですか?』
『人間も動物も同じ生命体です。みんな仲間で家族です。だから助け合って当然です』
『あなたを天真爛漫だって多くの人が言いますね。好意的な見方だと思いますが』
カナタは恥ずかしそうに苦笑した。
『でも父からはもっと思慮深くなれって注意されます』
『へぇ!そうなんですか!』
『父は相手を思い遣る事が大事だってよく言うんです』
すると「あっ!」と言って彼は目を見開いた。
『いけない!NASAに入局することを言ってなかった!きっと今頃テレビの前でビックリしてる。腰を抜かしているかもしれない…』
カナタは気まずい顔になった。
『椅子から転げ落ちてるかも…。思い遣りが大事なのに…前もって言わずに失敗しました』
リポーター達が笑った。そして、テレビの前のホームの人達はアラタ(カナタの父親)を見て全くその通りだと笑っていた。
「ホントに椅子から転げ落ちてるな」
アラタは床に座り込んでやれやれと頭を振った。キリが悪戯っぽい目つきをする。
「叔父さん。ね?カナタは凄いでしょ?あの子は必ず宇宙飛行士になるよ。間違いない」
「そ…そうかな…」
候補生はこれから2年掛けて学んでいく。そこで厳しく選抜されて最終的に宇宙に行けるのはほんの僅かだ。彼らに与えられた天賦の才能と、本人の努力と品位が試されるのである。
・・・
カナタの両親の部屋にて
その日の夜。カナタの両親は息子と通話していた。彼のホログラムを見つめて溜息をつく。
「何で言わなかったんだ?」
『ごめん。ちゃんと話そうと思ってたんだけど、タイミングを逃しちゃって』
母親は感慨深い眼差しで微笑んだ。
「…ずっと思ってた…。あなたは特別だって。頭が良くて性格も良くていい子だって」
『母ちゃん、有難う』
「入局する前にこっちに戻って来れるの?」
『う〜ん。いや…今の研究所を辞めるから残務整理があるんだ…ムズイかも』
「そうなのね。残念ね」
その時、アラタがハッとした顔をする。
「おい?お前には…その…彼女とかいるのか?」
『いるよ。同じ職場なんだ。出身はイギリス。ジェシカって名前だ。あ!見る?』
両親が頷くと美しい女性のホログラムが浮かび上がった。カフェオレ色の肌とエキゾチックな顔立ち。瞳の色はカナタと同じブルーだった。
「そうか…。お前はすっかりアメリカ人だな」
『あ!そうそう。言ってなかった!俺さ?アメリカ国籍を取ったんだ。そうしないと応募が出来なかったからさ。つまりアメリカ人なんだ』
「それで俺達に何か不都合でもあるのか?」
『ない。何人であろうと親子だ』
(そうだ。俺の息子だ。だが…遥かに立派だ。天真爛漫で心配だと思ったこともあった。でもそれがカナタの持ち味だった。何で今まで気付かなかったんだろう…)
アラタはカナタを繁々と見た。何だか全身から光が滲み出しているように見えた。
「お前は自慢の息子だ」
※カナタは高校生の時、野生動物の保護活動をしていました
