第15話《Eternal First Love》#3 拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
⬛︎第15話《Eternal First Love》#2
⬛︎第15話《Eternal First Love》#3
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大きな木のある校舎。
真新しい少し大きめの制服に身を包む。
「ぴゃああ、高校生、高校生だよぉ!」
長い間結んできた髪をおろし、ストレートアイロンで背伸びをした。
高校生とはさらさらのストレート髪をなびかせる大人びた存在。
その一員になれているのか、ドキドキしながら足をパタパタとさせていた。
「私、変じゃないかな? ちゃんと制服着れてる? 顔、大丈夫かな?」
手鏡を取り出し、顔を覗き込ませるもだんだんと青ざめていき、勢いよく鏡を閉じる。
「髪下ろすとか調子のってるかな? あーん、今さら悩んでどうするのよぉー!」
長い髪の毛をかきよせて、肩を狭そうにしながらぶつぶつと呟く。
「大丈夫、大丈夫。 なんとかなる」
だがその気休めさえも嘲笑うかのように何もない足元で躓き、思いきり転けてしまう。
荒削りのコンクリートに直撃し、身体を起こして額をさすった。
「いたいよぉ。なんで私ってこんなんなのぉ」
「……大丈夫?」
「ひぁや……?」
間抜けた顔をあげると、そこには大きく開かれた吸い込まれそうなたくさんの色が見えた。
黒色と一言で表すには惜しいほどに、その色は七色レベルに不思議な色をしていた。
お互いにポカーンとしながら視線を交わしたあと、彼はパッと目をそらし、手を差し出してくる。
「立てそう?」
「うん、立てる。ありがとう」
手を取ると、少しだけ皮の厚い不思議な温もりを感じた。
「新入生?」
「うん」
「一緒。俺、黒咲 由利。よろしくな」
そのはにかんだ笑顔は、あまりにキラキラしていて目を奪われる。
遠い昔に見たような、既視感のある星のような輝き。
いつ、そんな星を見ただろうかと首を傾げるも、ふわふわとした温かさにヘラっと笑った。
「私、時森 芽々」
二人並んで校舎への道を歩く。
「時森って、なんか月みたいって言われない?」
「えっ!? そんなに顔丸い!?」
「いや、そういう意味じゃなくて!」
オロオロしだす姿に緊張が解けていく。
「ふ、あは。もしかして黒咲くんって天然?」
「えぇー? あんまり言われないけどなぁ」
これが私たちの拗らせたファーストラブ。
***
それから慌ただしく精密検査をし、私はあっさりと退院した。
しかし由利くんは腕や足の状態など、色々と健康に異常をきたしていたのでリハビリと称し、しばらく入院した。
2022年12月31日、外泊の許可をもらい由利くんには時森家に遊びにきてもらった。
今は百々の子どもたちが家でバタバタと駆け回り、騒がしい場所である。
私の部屋はとっくに片付けられていて、新しい子供部屋になっていた。
由利くんが「星投げをしたい」と言ったので、私たちはすっかり静かになった河川敷に行き、年越しの瞬間に光る石を投げた。
どこか切なそうに、けれども憑き物が落ちたように苦い感情を噛みしめていた。
ーー新しい未来、2023年が始まった。
家に帰ってからは由利くんと居間に敷布団を敷いて、赤面しながら手を繋ぐ。
甘さに崩壊した顔面を見られることがなくて良かったと安堵し、眠りにつく。
朝になると百々の子どもとの激しいバトルと同時に目が覚めた。
こんなに騒がしい朝ははじめてだと由利くんは笑っていた。
それからまたリハビリを繰り返し、体調も安定して由利くんは退院することとなる。
入院中には色んな人が由利くんのところへ訪れる。
だが、その人たちとの交流で由利くんの表情は曇りっぱなしであった。
退院し、手を繋いで田んぼに囲まれた道を歩いていると、ふと足を止め、由利くんは空を見上げた。
「……お墓参り、行きたいな」
***
「じいちゃん、親父。来るの遅くなってごめんな」
たくさんの墓石が並ぶ山奥の墓地。
長年来ていなかった割に綺麗な墓石を見て、由利くんは影をつくる。
墓石の前にしゃがみ込み、じっと無表情に見つめた。
(お墓参り……久しぶりだな)
目を閉じ、目を合わせだした由利くんを見て私もまた同じ動作をする。
由利くんの心境を思うと胸が痛む。
ふと、脳裏に幼い頃の思い出が蘇る。
写真を見ないと思い出すことも出来ない祖母。
手を繋いで歩いた。
それ以外、何も覚えていない遠い遠い過去のこと。
(おばあちゃんのお墓、ちゃんと掃除されてるのかなぁ? おねーちゃん、雑だし……)
「じいちゃん、親父」
ハッと顔を上げ、由利くんに目を向けると真っ直ぐに墓石を見つめる横顔があった。
綺麗な佇まいに、吸い込まれるように魅入る。
「ずっと昔から好きだった人と、お付き合いをすることになりました。これから新しい道へ、二人で進もうと思います」
その言葉に、溢れ出す喜びが笑みを生み出した。
迷い、仮面を被り、言葉を飲み込み、義務感に動き、自分が消えていく。
そうやって自分を殺した由利くんが、黒く咲いた百合と決別した。
終わりとはじまり。
ようやくノストラダムスの大予言、恐怖の大王は去っていった。
「時森 芽々です。やっと由利くんを捕まえました。お揃いの器、受け取っちゃったんで由利くんのことはいただいていきます」
「ちょっ、芽々!?」
「私の嫁……じゃなくてお婿さん」
想像しただけでヨダレが垂れそうだ。
「嫁……」
「これからはスーパーハニー、時森 芽々さんが一緒に幸せになりますのでご安心ください!」
「……ふはっ! なんだよ、スーパーハニーって」
「ダメ?」
「ダメじゃない。さすがは芽々だよ。最高に面白い」
「ぴゃああああ!?」
キラキラ眩しい笑顔が向けられ、目を焼かれる。
( 溶ける! キュン死にはまだいやだー!)
「さて、あとは時森家に挨拶だね。行こっか」
立ち上がり、差し出された手から光が差し込んできた。
「うん!」
もう失うことがないように。
この奇跡を、一生離さないと誓い手を握り返すのだった。
⬛︎NEXT
最終話《Eternal First Love》#4
