Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical を好きな物好きって誰のこと?
40mmが大好きです。風景を見て、ファインダーを覗いた時に感じる、視界の自然さが好きです。
Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical の開放は決してシャープではないし、軸上色収差は激しいし、周辺減光は激しいし、開放F値を基準とするレンズレビューでは辛口に評価されがちだと思います。曰く「万人向けではない。好きな人には刺さるレンズ」と。好きない人っていったいどんな人? と思われた人は、もしかしたらこのレンズにハマるかもしれません。そんな物好き目線でNOKTON 40mm f 1.2を紹介したいと思います。
※作例はα7C IIを使用し、ND8とAllure Softフィルタ付き、LightroomでRAW現像しています。
まず最初に必ずやって欲しいこと
カメラの設定の周辺減光補正をオフにしましょう。このレンズを含めMFレンズの多くは周辺減光を設計の一部に取り込んでおり、その魅力を発揮するためには補正をオフにする事が大事です。あと単純に、カメラと現像ソフト両方で補正すると過剰補正になる事があったり、ノイズが目立ちやすくなると言う技術面からの対策でもあります。RAW現像する方も同様です。少なくともソニー機は減光補正でゲイン調整が入るのでRAWに影響します。ちなみに他の補正はRAW反映されません。そして現像する場合は、現像ソフト上でも減光補正をゼロにしましょう。取り敢えずここがスタート地点です。準備ができたら先に進みましょう。
光は同じ。違うのは感じる方
— 千里 / 𝙎𝙚𝙣𝙧𝙞 (@senriphoto) April 20, 2026
The light that illuminates beauty, faces, and even scars is merciless.#streetphotography pic.twitter.com/L2IBSjTodZ
40㎜なのに、開放F値が背景を溶かす
開放F値1.2ってどんなレンズ?
有効口径の計算上は、ボケを売りとする50mm F1.4と同程度の被写界深度です。これがどれくらいの数字かというと、近中距離でもボケだけで背景を完全に切り離せる位です。例えば30メートル先の被写体にフォーカスを合わせたときに、背景がややにじんで見られる位のボケになります。距離がある程度遠いと背景に溶け込んでしまうものですが、わりと立体感が残ります。つまりどの距離においても被写界深度を意識することができます。準広角レンズでこれは驚異的なことだと思います。一般的に40mmは小型の製品が多くF値は2.0以上のものがほとんどであるため、40mmの開放F値1.2は、正にここにしかない景色なのです。特にこのレンズは積極的に開放で使う事が多いので、この恩恵に与れます。なお35mmに換算すると、40mm F1.2は35mm F1.05に相当します。逆に言うとフォーカスはそれだけシビアになると言うことでもありますが。
周辺減光を画作りに取り込む
開放F値では、画面端で急峻な光量落ちが発生します。考え方は人それぞれですが、私は積極的にこの減光を画作りに取り込みます。なぜなら、レンズによって発生する減光はその他の諸収差と密接に関連しており、現像ソフトで後付けするよりも非常に高い説得力を持っていると思うからです。例えばどんなレンズも開放は周辺が甘く、中央の比較的狭いエリアだけがシャープになります。この周辺の甘さと減光は比例関係にあることが多く、収差は減光に溶け込みあまり目立たなくなります。それに加えて明暗差による視線誘導が強烈に中央への視線誘導効果を持ち、撮って出しからドラマチックになります。周辺は単に暗くなるだけではないので、RAW現像で処理するよりもずっと自然な仕上がりになります。(露出が狂いやすかったり、オートWBがズレたりするのは御愛嬌と言うことで⋯⋯)

シャープネスは?
開放F値だとかなり甘いです。被写界深度が薄い(浅いではなく薄い)からピントが合いにくいのも影響しているでしょう。好みだとは思いますが、Planarのような絵の具が溶けて滲むような嫌らしさはなく、コントラストが維持されるのであまり気にならないのも事実です。気になるときは、F2.0まで絞ればよいのです。F2.8以降は非球面レンズ採用によるキレキレな画像になります。なお開放付近では軸上収差で色が付きますが、割と地味なので無視してもいいし、混じりっ気のないグリーンとパープルなのでLightroomで簡単に消すこともできます。
斜陽の巡る
— 千里 / 𝙎𝙚𝙣𝙧𝙞 (@senriphoto) April 12, 2026
The atmosphere of a spring evening, as the setting sun lingers. pic.twitter.com/IeILD7rrAQ
絞るとキレッキレ。F11
お勧めのオプション
昼間日中の撮影では、F1.2/ISO100だとSS=1/8000でも足りず、高速機でもなければ露出オーバーでほぼ使えません。でもNDフィルタがあれば大丈夫。ND8辺りを常備しましょう。また、絞ったときの画は硬調でコントラストも十分ですが、柔らかめが好きならミスト系フィルタをお勧めします。私はNiSi Allure Softをつけっぱなしにしています。暗部がフェードせずコントラストが維持される一方、ハイライトが少し滲むためRAW現像段階で抑揚がつけやすく、コントロールが非常に楽になる気がします。
58mm ND8 - ステップリング - 67mm Allure Soft - 社外品67mmフード(最終径は72mm)の順で盛り付けていますが、ケラレたりはしていません。
58mmはないからステップリングも必要
このレンズが好きな人、向いている人、そして使い方
まずは40㎜は好きだけど、開放F値が物足りないと感じている方、全体的なシャープネスよりも減光や独特のボケ味で雰囲気を重視する方、MFに抵抗がなく、絞りによって変化する画作りを楽しみたい方には両手を上げておすすめします。
いつものレンズならば被写界深度、たまにシャープネスを調整するためにF値を選ぶでしよう。しかしこのNOKTONシリーズやZF Planarなどは少し違っていて、絞らないと中央付近しかシャープになりません。これは開放F値の明るいレンズの設計における限界ではありますが、この周辺部の減光や滲みといった収差が、逆に中央部を引き立てることにつながっています。NOKTONの開放付近のF値は「どれくらい中央部を強調するか」で決めるものなのです。そして絞るにつれ視線誘導は解け、全体が均一になっていきます。この特性を上手く使いこなすのが面白いのです。
焦点距離40mmだとギリギリF11でゾーンフォーカスできるのもいいですね。頑張ってF11まで絞って、近中距離なら3m、中距離から無限遠を狙う場合は5mにフォーカスを合わせておきます。3mフォーカスでも無限遠はじんわりボケるので35mmよりも慣れは必要ですが、十分実用範囲内です。露出をオートにすれば、これでノーファインダー、AFなしでも速写できますよ。
最後に
現代ではコンピュータによる設計と、異常部分分散ガラスや非球面レンズ等を利用して収差を消すことができるようになりました。それでもその不完全さを「味」と「表現」として残した現代レンズがZF Planarであったり、NOKTONシリーズ(特にF1.2)だと思うのです。(NOKTON Classicも同じような設計思想ですが、よりオールドレンズ寄りになっています)
個人的に、フイルム時代のPlanarの正統な進化の系譜は、BatisやOtus、ましてやLoxiaではなく、このNOKTON F1.2シリーズのように思っています。NOKTON 50mmに至っては異常部分分散ガラスも追加し、正に現代レンズの様相です。絞りを操って楽しむレンズの多面性は、昨今のオールドレンズブームからの次の流れなのではないでしょうか。これからもVoigtlanderのレンズには注目していきたいですね。以上、一人の物好きの感想になります。お付き合いいただきありがとうございました。
