アブダビで迎える三つ巴の決戦:しかし鍵を握るのはメルセデスとフェラーリかもしれない
2025年シーズンのF1は、まさに近年稀に見る激戦となった。最終戦アブダビでタイトルを争うのはフェルスタッペン、ノリス、ピアストリの三人。完璧に近い一年を過ごしてきたフェルスタッペンは、ついにシューマッハの5連覇に肩を並べようとしている。一方で、ノリスとピアストリは初戴冠を目指し、F1史に名を刻もうとしている。
しかし、その最終決戦の構図をかたち作ったのは、実はアブダビより前の2戦にあった。マクラーレンは、ラスベガスでの失格、そしてカタールでの痛恨の戦略ミスによって、フェルスタッペンを脱落させる絶好のチャンスを二度逃した。結果として、ここ2戦だけでフェルスタッペンはピアストリに対して29点、ノリスには37点という大きなポイントを獲得している。本来ならばマクラーレン勢が圧倒的に有利なはずの流れが、混迷と緊張に満ちた三つ巴の構図へと変貌したのだ。
では、アブダビの舞台で“第三勢力”は介入できるのか。メルセデス、フェラーリという二つの名門が、タイトル争いの行方を左右する“決定者”となる可能性はあるのか——。

アブダビでの勢力図:MCL39とRB21の最終決戦
ヤス・マリーナ・サーキットは、ルサイルと比べて特性が大きく異なる。直近のレースでは、フェルスタッペンが勝利したとはいえ、マクラーレンはレッドブルに対して約0.2秒のパフォーマンス優位を示していた。それに対してアブダビは、ミドル〜ロー・スピードコーナーが重要な役割を果たし、ここはモンツァの大型アップデート以降RB21の“もっとも進化した武器”だ。
アンドレア・ステラは先週、「僕たちは高速域での改善に取り組んできたけど、同時にレッドブルは逆方向に進んだようにも見える。高速の強みを多少犠牲にしてでも低速でのポテンシャルを伸ばしたのかもしれない」と語っている。開発の方向性は対照的で、結果としてアブダビの要求はレッドブルを後押しする可能性が高い。
ただし、勢いという点ではマクラーレンが完全に上回っている。直近5戦でポールポジションを4回獲得したのはパパイヤ勢であり、“一発の速さ”ではMCL39がしばしば先行してきた。しかし決勝になるとゲームは別物だ。秋以降、レッドブルはタイヤマネジメントとレースペースの改善に成功し、フェルスタッペンが決勝で見せる“執行力”の差が勝利数の差となって表れているのは明らかだ。
データによれば、フェルスタッペンは予選ラップ比較でマクラーレンに対し0.1秒前後を「自身のドライビング」で補っているという。ラップの組み立て、風向きの変化やタイヤ状況、路面状況への対応——細部の積み重ねでタイトル候補二人に対抗しているのだ。

フェルスタッペンが5連覇を決める条件と、そこに立ちはだかる“第三勢力”
フェルスタッペンがタイトルを決めるには、単に勝つだけでは十分ではない。ノリスの前に1台、あるいは2台の“非マクラーレン勢”が入る必要がある。つまり、メルセデスかフェラーリがタイトル争いの間に割って入る存在になれるかどうかが、最終決戦の重要な要素となる。
アブダビは空力的な要求がインテルラゴスと似ており、これはW16とSF-25にとって追い風となる。ブラジルでは両車とも強力な週末を過ごしており、特にメルセデスは高速区間とトラクションのバランス取りに成功していた。
しかし、その一方でアブダビには“横風”という厄介なファクターがある。これはカタールでメルセデスとフェラーリを大きく苦しめた要因の一つで、特にフェラーリは低・中速のバランスを大きく乱していた。現代のF1において、風の変化は一晩で勢力図を変えるほどの影響を持つ。
フェラーリは直近2戦で期待を下回る結果に終わっている。オースティン、メキシコ、インテルラゴスなど“本格サーキット”では安定した競争力を示したが、ラスベガスとカタールでは完全に崩れた。その流れがアブダビでも続く可能性は十分にある。総合パッケージとしてはトップ3には届いておらず、表彰台争いに絡むには何かしらの番狂わせが必要だ。

タイヤと路面——アブダビの“静かなる決め手”
ピレリは昨年と同じC3–C4–C5のレンジを持ち込む。昨年はグレイニングの影響が小さく、ほとんどのチームが1ストップ戦略を採用していた。さらに今年はその傾向が強まり、ソフトタイヤを決勝で使うプランも十分に現実味を帯びてきている。
路面は、気温差と下位カテゴリーの走行により週末を通じて改善していくと予想される。また、FIAはターン1〜4の再舗装とターン6のバンプ除去パッチを実施しており、これが序盤のグリップにどう影響するかは注目点の一つだ。
特にフェラーリは、ここ2年「最低空気圧が高いレースで苦しむ」という傾向を見せてきた。ヴァスールはカタールGP後に「僕たちはマシンのウィンドウに一度も入れなかった。指定された高めの空気圧には本当に苦しめられた」と語っている。
アブダビでは空気圧が大幅に下げられ、ルサイルやラスベガスに比べるとサンパウロやメキシコに近い設定となる。これはフェラーリにとって数少ない追い風であり、少なくともQ3進出と上位争いの可能性を広げる要素にはなる。

最後に勝つのは誰か、そして“誰がその間に入るのか”
アブダビの決戦は、三つ巴のタイトル争いという表面上のドラマだけでは語り尽くせない。レッドブルとマクラーレンの技術的攻防、フェルスタッペンの執行力、ノリスとピアストリの成長、そしてメルセデスとフェラーリがどこまで割って入れるか。
5連覇を狙う王者か、初タイトルを掴みに行く若き挑戦者たちか。
あるいは、タイトルと無関係に見える2つの名門チームが、最終章における“最後の一筆”を加えるのか。
アブダビは、2025年シーズンの全てを映し出す鏡になるだろう。
