個別最適な学びが,評価を問い直した― 同じことをしていない子どもを,同じように評価できるのか
前回,私は「あゆみ」をめぐって,
担任としてできる工夫を重ねても,
なお消えなかった違和感について書いた
所見の言葉を工夫する
渡し方を工夫する
「見せ合いをするな」と伝える
それでも,子どもたちは
マル(○)の数を見る
友だちと比べる
自分の位置を確かめる
その中で,私は少しずつ考えるようになっていた
問題は,書き方だけではないのではないか
評価が「あとからまとめて渡されるもの」であること
そして,子どもたちの違いを一つの形式に収めてしまうこと
そこに,そもそもの無理があるのではないか
この違和感は,やがて授業そのものを見直す中で,
さらに大きくなっていった……
教頭時代,もう一度担任として教室に立った
個別最適な学びに手応えを感じたのは,教頭時代のことだった
産育休の代替教員が見つからなかったため,
長い期間,担任を兼務することになった
当時,県教頭会の副会長・市教頭会の会長の任も兼務していた
しかし私はもう一度,日々の教室に深く関わることになった
管理職として学校全体を見る立場でありながら,同時に,
一人ひとりの子どもの学びに直接向き合う時間を得たのだ
そこで取り組んだのが,個別最適な学びのある授業だった
全国公立学校教頭会の機関誌「Educasphere」第7号(2022年)に,
奈須正裕先生の「個別最適な学びを進めるために必要なこと」を目にした

・全ての子どもを自立した学習者にまで育て上げる
・子どもの都合とタイミングで学び進められるパラダイムへ
・情報技術パラダイムの授業
・規律訓練型教育との決別
と,この本を手に取り,オンライン出版セミナーで,授業動画を拝聴した
素直に驚いた
こんなことが可能なのかと同時に,
特別支援教育の知見を授業に活かすべきと取り組んでいた私にとっては,
教材や学習課題の工夫に取り組んでいただけに,
やっと,これが当たり前になる時代がやってきた!と感じたのだった
もちろん,最初から何もかもうまくいったわけではない
子どもたちに「自由にやっていいよ」と言うだけでは,学びは進まない
むしろ,何をすればよいのか分からず止まってしまう子もいる
だから,子どもたちの実態に合わせて教材を準備していただけではなく,
すぐに取り組める課題
少し考えれば進める課題
友だちの考えを参考にできる課題
つまずいたときに戻れる課題
など,自走できるように……
一人ひとりが,自分の場所から学び始められるようにしたかった
子どもたちが,自分で学び始めた
すると,少しずつ教室の空気が変わっていった
「先生,次はこれやっていい?」
「ここまでは分かった!」
「このやり方,友だちのを見て分かった」
「もう一回,前の問題に戻ってみる」
子どもたちは,自分で選び,自分で進めるようになっていった
同じ時間に,同じ教室にいる
けれど,全員が同じページを開いているわけではない
同じ問題を,同じ速さで解いているわけでもない
ある子は,前の単元に戻って確かめている
ある子は,発展的な課題に挑戦している
ある子は,友だちの考えをのぞき込みながら,自分の考えを修正している
教室は,一斉に同じ方向を向いているというより,
それぞれの子どもが,自分の学びや課題に向かって
取り組んでいる場になっていった
それは,ばらばらになったということではなく,
むしろ,子どもたちが自分の学びに責任をもち始めたように見えた
「分からない子」は,先生のところへ来ればいい
一方で,自走できない子どももいた
個別最適な学びというと,
すべての子が自分でどんどん進んでいくように思われるかもしれない
でも,実際の教室はそんなに単純ではない
手が止まる子がいる
何から始めればよいか迷う子がいる
友だちを見ても,まだ分からない子がいる
そういう子どもたちは,私のところにやってきた
「先生,ここ分からん」
「何したらいい?」
「これで合ってる?」
私は,その子と一緒に学んだ
今どこでつまずいているのかを見て,少しだけ道筋を示す
一緒に一問考える
そして,「じゃあ,次はここまでやってみよう」とうながす
しばらくすると,その子はまた自分で進み始める
当時,工藤勇一先生も,
「横浜創英は,
先生が教える,
個,ペアやグループで学ぶ,
アプリや動画で学ぶ
有料だけど,専門の講師が教える
の4つに分かれていた」
との話を聞いていたので,
奈須先生のオンラインセミナーでも,見せてもらった,
先生の周りでは一斉授業のスタイルもあってよいと,
こんな形をとっていた
自走できる子は進む
自走できない子は,必要なときに支援を受ける
そして,少しずつ自分で進めるようになっていく
この往復が,教室の中に生まれていた
私と何時間かいっしょに学習していた子どもも,
単元の後半は,私の側から離れていった……
次回は,この取組の結果,私に起こった、変化を綴ります
