くり返しは大事。でも,同じことをさせればいいわけではない―「戻る」「思い出す」「説明し直す」ことの価値
「くり返しが大事です」
これは,学校でよく聞く言葉です
漢字も,
計算も,
音読も,
くり返すことで身についていきますよね
ただ,ここで気をつけたいことがあります
くり返しとは,
同じことを,同じ形で,何度もやらせること
だけではありません
むしろ,脳の学びから考えると,
大切なのは,
少し時間を空けて,もう一度思い出すこと
別の場面で使ってみること
自分の言葉で説明し直すことです
脳は,一度で覚えるようにはできていない
私たちは,1回聞いただけで多くのことを忘れます
これは,子どもの努力不足ではありません
脳の自然な働きです
「エビングハウスの忘却曲線」は,有名ですよね
記憶は,一度入ったらそのまま保存されるものではありません
何度も脳から呼び出され,
整理され,
意味づけされることで,
少しずつ使える知識になっていきます
学習研究では,
学習を一度にまとめて行うより,
時間を空けてくり返す方が長期記憶に残りやすいことが知られています
これは「間隔効果」と呼ばれ,BrainFactsでも,学習を時間的に分けることは長期記憶の保持を高めると説明されています
つまり,「昨日やったから終わり」ではなく,
少し時間を置いて,もう一度,出合うことが大事なのです
思い出すこと自体が,学びになる
もう一つ大切なのが,検索練習です
検索練習とは,簡単に言えば,
頭の中から思い出す練習
です
教科書をもう一度読むことも大事です
でも,それだけでは「分かった気」になってしまうことがあります
「昨日の考え方,覚えている?」
「この問題,前に似たものをやったよね」
「まず,自分で説明してみよう」
「ノートを閉じて,手順を言ってみよう」
こうして思い出そうとすることで,記憶は使われます
使われるから,強くなります
教育研究でも,
間隔を空けた学習と検索練習は,
長期記憶を支える有効な方法として整理されています
Australian Education Research Organisationも,
間隔を空けた学習と想起の機会を組み合わせることが,
学習内容を長期記憶に定着させる助けになると説明しています
「戻る」は,遅れているのではない
自由進度学習をしていると,
前の課題に戻る子がいます
一度終わった問題を見直す子もいます
友だちの考えを見て,
もう一度説明を書き直す子もいます
それは,遅れている姿ではありません
脳が,学びをつなぎ直している姿です
「戻る」
「思い出す」
「説明し直す」
「別の方法でやってみる」
こうした行ったり来たりの中で,
知識はただ覚えたものから,
使えるものへ変わっていくのです
だから,くり返しは大事です
でも,同じことを機械的にさせればよいわけではありません
子どもが,前の学びを思い出し,
今の学びとつなげ,自分の言葉で意味づけ直す
そのためのくり返しを,単元計画の中にどう設計するか
そこに,教師の仕事,つまり教師の指導性があります
くり返しとは,戻る力を育てること
そして,学びを自分の中でつなぎ直す時間になるのでしょう
次……
