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「あゆみをやめます」を,保護者へどう伝えたか― 授業参観のあとに話した,評価見直しの理由

前回,私は,あゆみをやめることは,
評価の仕事を減らすことではなかった,と書きました

あゆみをやめることは,
評価の意味を問い直すことだったのです

では,その考えを,保護者へどのように伝えるのか
ここが,次の大きな課題でした

あゆみをやめる
けれど,評価をやめるわけではない
子どもの学びを見なくなるわけでもない
保護者へ伝える情報を減らしたいわけでもない

むしろ,子どもの学びを,
 より具体的に,
 より早く,
 より次に
つながる形で伝えていきたい

そのことを,誤解なく伝える必要がありました


授業参観のあと,保護者へ伝えることにした

2月の学校運営協議会で,
あゆみの見直しについて再び話題にしました

学校運営協議会では,
すでに多くの委員の方々から,
あゆみに対する率直な声をいただいていました

「あゆみをもらっても,マル(○)の数を数えるだけ」
「先生たちには悪いけれど,ほとんど見ない」
「マル(○)の数できょうだいげんかになる」

その一方で,

「何かしら,成績の分かるものは欲しい」
「個別懇談などで,具体的に知りたい」

という声もありました

つまり,保護者や地域の方々が求めていたのは,
単に「あゆみをなくすこと」ではありませんでした

抽象的な評価ではなく,
子どもが今,何につまずいているのか
何が分かっていて,何が難しいのか
次にどんな学びが必要なのか

そうした具体的な情報だったのです

そこで,2月の学校運営協議会では,
授業参観後に,保護者へ直接説明することにしました

オンラインで,各教室に話した

授業参観が終わったあと,
各教室には保護者の方々が残ってくださいました

私は,オンラインで各教室につなぎ,校長として話をしました

まず,文科省の「個別最適な学び」のある授業について説明しました
そして,授業参観の実際でも,
一斉授業型の授業ではなく,
個々に学んでいる姿があったり,
グループで保護者に説明している教室があったりしたことを伝えました
この取組を本校でも進めていくことを伝えたのです

そして正直に,評価の見直しにぶつかったことを伝えました
 同じ時間に,
 同じ場所で,
 同じ内容を学んでいない姿を
一律一斉評価することへの違和感
あゆみの成績は,テストだけで決めているものではなく,
様々な授業の様子を学期ごとにまとめて伝えていることを確認しました
しかし,文科省が打ち出す,個別最適な学びを進めれば進めるほど,
一律一斉評価の難しさを伝えました

これからの授業について,
学校運営協議会でどのような意見が出たのかも伝えました

その結果,評価の仕方を改める結果,
あゆみをやめることを伝えました
最後に,質問や不安があれば,ぜひ直接話をしてほしいと……

保護者へ伝えるときに,私が一番避けたかったのは,
「評価しなくなるのか」
「成績が分からなくなるのか」
「学校が情報を出さなくなるのか」

という誤解でした

だからこそ,伝えたかったのは,あゆみをやめるという選択をするまでの,
学校の葛藤でした
そしてつまり,評価の形を変えたいということを伝えたかったのです

伝えたかったのは,「廃止」ではなく「転換」

私が保護者へ伝えたかったのは,
「あゆみをなくします」ということだけではありません

むしろ,こういうことでした

あゆみをやめることは,
子どもの学びを伝えなくなることではありません
評価をしなくなることでもありません

子どもの学びを,
 より具体的に,
 より早く,
 より次につながる形で返していくための見直しです
そしてその結果,
子どもたちの笑顔を増やしたい……

これまでのあゆみは,学期末にまとめて渡すものでした
そこには,学校と家庭をつなぐ役割がありました

しかし,実際には,マル(○)の数に目が向きやすくなります
きょうだいと比べたり,
友だちと比べたりすることもあります
また,
難しい表現の文章に,「できる」とうマル(○)がついた表現だけでは,
具体的にどこでつまずいているのかが伝わりにくいこともあります

保護者が知りたいのは,もっと具体的なことではないか

わり算の筆算で,商を立てるところに迷いがあるのか
文章題で,何を聞かれているのかを読み取るところに難しさがあるのか
図や線分図に表すと考えやすくなるのか

そうしたことを伝えた方が,
子どもの次の学びにつながるのではないか

私は,そのように考えていました

うなずく保護者の姿が見えた

オンラインで各教室へ話しながら,私は少し緊張していました

保護者の方々は,どう受け止めるだろうか
不安に思われるのではないか
「なぜ,今まであったものをやめるのか」と感じる方もいるのではないか

そう思っていました

けれど,話をしている教室の保護者を見ていると,
学校運営協議会で出た意見に,うなずく保護者の姿が見られました
終わってから,
各教室の様子を聞いても,同じでした

「あゆみをもらっても,マル(○)の数を数えるだけ」
「具体的なことを知りたい」

そうした話に,静かにうなずく姿がありました

もちろん,それだけで全員の理解が得られたとは思っていません
一度話しただけで,すべてが伝わるとも思っていません

それでも,保護者の方々の中にも,
同じような感覚があったのだと感じました

あゆみをやめることへの不安よりも,
子どもの学びをどう具体的に知るのか
そこに関心が向いているように見えました

質問があれば,直接話しましょう

説明の最後には,質問や不安があれば私と,
直接話してほしいと伝えました

これは,大切にしたかったことです

学校として方針を出すことはできます
文書で知らせ,家庭連絡アプリで配信することもできます

けれど,保護者の不安は,
文章だけでは解けないことがあります

「うちの子の成績は,どう分かるのですか」
「受験や進学に影響はないのですか」
「家庭では何を見ればよいのですか」
「テストの結果は,どこで確認できますか」

そうした具体的な疑問は,一人ひとり違います。

だからこそ,必要があれば直接話したいと思っていました

あゆみをやめるということは,
保護者とのつながりを減らすことではありません
むしろ,より具体的に対話していく必要があると考えていました

新1年生の保護者にも,もう一度伝えた

年度が変わり,新1年生が入学しました

新しく本校の保護者になった方々にも,
この方針を伝える必要がありました
そこで,入学後の授業参観でも,もう一度説明しました

あゆみをやめること
評価をやめるわけではないこと
子どもの学びを,より具体的に返していきたいこと
テストの結果や学習状況を,これまでとは違う形で伝えていくこと

一度説明したから終わりではありません

学校の方針は,繰り返し伝える必要があります
特に,これまで当たり前にあったものを見直すときには,なおさらです

保護者にとって,「あゆみがない」ということは,初めての経験です

だからこそ,不安が生まれないように,
機会を見つけて丁寧に説明していく必要がありました

テストを実施し,返却するときに伝える

全校の授業参観後には,
具体的な運用についても伝えました

テストを実施し,
返却したときには,家庭連絡アプリで伝えること
保護者には,
そのタイミングで子どもの学習状況を確認してもらうこと

つまり,学期末まで待つのではなく,
単元ごと,学びの区切りごとに見ていただく形へ
変えていくということです

近年,
中学校でも,
中間考査,期末考査という学期に2回の定期テストではなく,
単元終了時に行う単元テストへと切り替わっているところもあるようです

あゆみでまとめて知るのではなく,
学びの途中で知る

これは,私が考えていた評価の見直しの方向と
重なっていました

評価は,あとからまとめて渡すだけではなく,
学びの途中で返るからこそ意味があります

保護者にも,そのタイミングで
子どもの学びを見ていただきたいと考えました

4年生から6年生は,CBTシステムへ

4年生から6年生については,
紙のテストからCBTシステムへ移行することも伝えました

CBTとは,コンピュータを使ってテストを行う仕組みです
本校では,タブレットを使ってテストに取り組む形になります

タブレットで取り組むことで,結果を確認しやすくなります
どの問題でつまずいたのか,どの単元で課題があるのかを,紙のテストとは違う形で見ることができます
そして,個々に応じて,振り返りの問題まで出力されます

もちろん,CBTだけで子どもの学びのすべてが分かるわけではありません
画面上の結果だけで評価が完結するわけでもありません

けれど,学びの途中で,より早く,より具体的に結果を返すという意味では,大きな可能性があると考えていました

保護者には,
4年生から6年生は,タブレット上の結果を見てほしいと伝えました

また,1年生から3年生についても,次年度は同じような形に移行していく
予定であることを伝えました

保護者へ伝えたかったこと

あゆみをやめることは,保護者への情報を減らすことではありません

むしろ,子どもの学びを,
より具体的に,
より早く,
より次につながる形で伝えるための見直しでした

「あゆみをやめます」という結論だけを伝えたかったのではありません

子どもたちの学びを
どう見取り,どう返し,どう家庭と共有していくのか
その評価のあり方を変えていきたいということを伝えたかったのです

学校運営協議会で話し,
授業参観後に保護者へ伝える
新1年生の保護者にも説明する
テスト返却のタイミングで,
家庭連絡アプリを使って伝える
CBTシステムの結果を見てもらう

そうやって,少しずつ共有していくものだと感じています

評価とは,子どもを並べるためのものではありません
評価とは,子どもの学びを前に進めるためのものです

だからこそ,
あゆみをやめることは,評価を手放すことではありませんでした

評価を,
子どもの学びに近いところへ戻していくための一歩だったのです

次回は,秋になるでしょうか……
実際にあゆみをやめたあと,
学校の中でどのような変化が見えてきたのかを書いてみたいです

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