脳は,失敗から学ぶ。でも,失敗を笑われると学べない― 間違いを,学びの材料に変える教室へ
子どもが,
答えを間違える
答えを言いよどむ
計算をまちがえる
発表してみたけれど,うまく説明できない
そんな場面は,教室に毎日あります
でも,そのとき教室の空気がどう動くかで,
子どもの学びは大きく変わるのです
「違います」
「えっ,そんなのも分からないの?」
「また,まちがえた」
「ちゃんと,聞いてたの?」
こうした反応が返ってくる教室では,
子どもは次から間違えないようにします
ただしそれは,「正しく考えよう」とするのではなく,
間違いを見せないようにする方向へ向かうことがあります
脳は,失敗から学びます
けれど,失敗を笑われると,
脳は学ぶよりも守ることを優先してしまうのです……
失敗は,脳にとって「予想とのズレ」である
脳は,ただ情報を受け取っているだけではありません
「こうなるはずだ」と予想し,
実際の結果とのズレを受け取って,
次の行動を修正しています
たとえば,算数の問題で「この式でいけるはず」と考えて解きます
でも,答えが合わない
すると,「どこが,違ったのかな」と考え直します
このズレが,学びの入口になります
神経科学では,こうした予想と結果のズレが学習に関わることが
研究されています
特に,報酬予測誤差と呼ばれる仕組みは,
予想した結果と実際の結果の違いをもとに,
次の行動を調整する学習に関係するとされています
ドーパミン神経系がこの予測誤差に関わることも,
多くの研究で示されているようです
つまり,間違いは単なる失敗ではありません
脳にとっては,
「予想を更新するための情報」
なのです
間違えたあとに,脳がもう一度向かえるか
ただし,間違えれば自動的に学ぶわけではありません
大事なのは,間違えたあとに,
子どもがそこに注意を向けられるかです
そう,振り返り……
「どこが,違ったのだろう」
「次は,どうすればいいのだろう」
「別の方法はあるかな」
そう考えられると,間違いは学びに変わります
実際,成長マインドセットをもつ子どもは,
失敗後に間違いへ注意を向けやすく,その後の修正につながりやすいことを示す研究があります
幼い子どもを対象にした研究でも,
失敗後に注意を向け直す神経反応と,
失敗から立ち直って課題に戻る力との関係が報告されています
ここから言えるのは,
「間違えた子をすぐ正す」だけでは足りない
必要なのは,
子どもが安心して,「自分の間違いを見に行ける」ようにすることです
笑われる失敗は,学習材料ではなく脅威になる
同じ間違いでも,
教室の空気によって意味が変わります
安心できる教室では,
間違いは学びの材料になるんです
「ここで,間違えたんだ」
「なるほど,そう考えちゃったんだ」
「じゃあ,次はこうしてみよう」
でも,笑われる教室では,間違いは危険なものになります
子どもは,間違いそのものよりも,
間違えたあとに傷つくことを恐れるからです
すると,
脳は学ぶよりも守る方向へ向かいます
その結果,
発表しない
難しい問題を避ける
分からないと,言わない
ふざけてごまかす
「どうせ無理」と,
先に言ってしまう……
これは,やる気がないのではなく
自分を守るための行動かもしれません
教室で大切にしたいこと
だからこそ,
教師がつくりたいのは,
「間違えない教室」ではありません
間違えても,もう一度考えられる教室です
そのためには,教師の言葉が大きな役割をもちそうです
友だちの励ましの言葉が大切です
「ナイス間違いだね」
「そこが分かると,次に進めそうだね」
「どう考えて,そうなったの?」
「ここまでは,合っているよ」
「この間違い,みんなの学びになるから紹介させてね」
こうした言葉は,
子どもの失敗を責めるのではなく,
学びの材料となっていくのです
人の間違いを笑わない
分からないと言った人を大切にする
途中の考えを出してくれたことに意味がある
間違いは,その人だけのものではなく,みんなの学びになっていく……
失敗を学びに変える学校へ
脳は,失敗から学びます
でも,失敗を笑われると学べません
この一文には,学校づくりの大切な方向が詰まっています
挑戦する子どもを育てたいなら,
まず,失敗できる空気をつくる必要があります
考える子どもを育てたいなら,
まず,途中の考えを出せる空気をつくる必要があります
学び続ける子どもを育てたいなら,
まず,間違いを次の一歩につなげる評価や言葉かけが必要です
間違いは,子どもを責める材料ではありません
脳が学びを更新するための,大切な情報なのです
だから,教室の中で,
この教室は,子どもが安心して間違えられているだろうか
この学校では,失敗が笑われるものではなく,
学びに変わるものになっているだろうか……
脳は,失敗から学ぶ
でも,失敗を笑われると学べない
その視点から,もう一度,教室の空気を見つめ直していきたいです
次……
