ナフサ不足報道が見落としているもの
ナフサ不足が、問題になっている。
カルビーが一部商品のパッケージを白黒にするという話も出てきた。医療器具や衛生用品に影響するかもしれない、という話まで出ている。
ただ、この話には一つ、見落とされていることがある。
ナフサは、粗製ガソリンとも呼ばれる。
つまり、ナフサはガソリンとまったく別の特殊な原料ではない。原油から取り出される軽い油のうち、石油化学原料として回されるものがナフサであり、燃料として使えるように改質・調合されるものがガソリンである。
そうであれば、「ナフサが足りないから医療器具が危ない」という話の前に、まず見るべきは、同じ軽い油がどこに回っているのか、という配分である。

ガソリンは今も普通に売られている。少なくとも現時点では、価格もリッター170円前後で推移している。人命に関わるほど石油化学原料が足りないというなら、まず「燃料としてのガソリンに回している分をどう考えるのか」という話が出てこなければおかしい。
そこを飛ばして、いきなり医療器具や衛生用品の不足へ話を落とすのは、少し順番が違う。
たとえば、カレー用の牛肉が足りないと言われたとする。けれど、焼肉用の牛肉は普通に売られている。
そうであれば、それは牛肉そのものが消えた話ではない。高く売れる焼肉用に回すのか、安く使いたいカレー用に回すのかという、用途と価格の問題である。
カレー用の肉が足りないからといって、焼肉用の肉を使ってまでカレーを作る必要はない。そこでは、味や価格との釣り合いを見て、無理に高い肉を使わないという判断が成り立つ。
カルビーの白黒パッケージも、これに近い。カラー印刷に関わる原料やコストが上がったから、白黒にする。そこでは、無理に高い原料を使ってまでカラーにする必要はない。これは「不足」というより、価格上昇に対する企業判断である。
しかし、医療器具は同じではない。人命に関わるものなら、高いから使わない、では済まない。必要なら、高くても原料を回す話になる。つまり、そこで問題になるのは不足そのものではなく、価格である。
「足りない」と「高くて苦しい」は違う。
この違いを曖昧にしたまま、ナフサ不足から医療現場の危機へ話をつなげると、問題の見え方がずれる。

ナフサ不足という言葉は、聞き慣れない。
だからこそ、報道する側には説明が必要になる。ナフサと燃料としてのガソリンが、上流で見れば同じ軽い油から分かれること。ガソリンが普通に売られているなら、石油化学原料側に回る分が足りないという話は、物理的な不足だけでなく、価格と配分の問題として見る必要があること。
そこを説明しないまま、医療器具不足や人命リスクだけを前に出すと、不安だけが大きくなる。それは同時に、不安を煽って政権批判に繋げたい思惑があるのではないかと、疑ってしまう。
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