株価が上がっても、景気がよくなった実感がない理由
「株価が上がっているのに、景気がよくなった実感がないのはなぜですか」
こんな質問が来ていた。
嬉しいです。ありがとうございます。
この質問を考えるには、まず「景気」という言葉が何を指しているのかを確認する必要がある。
1年間に国全体で稼いだものの合計を、国民所得と呼ぶ。国民所得を「誰が受け取ったのか」という面から見ると、受け取る主体は三つある。働いて受け取る労働者。資本を提供して受け取る資本家。税として受け取る政府である。
そのため、国民所得は次のように表せる。
国民所得 = 労働者の受け取り + 資本家の受け取り + 政府の受け取り(Y = W + rK + T)
なお、ここでいう労働者や資本家は、身分や階級の話ではなく、国民所得を受け取る主体を示す言葉である。賃金や給与を受け取る主体を労働者、企業利益、配当、利子、地代などを受け取る主体を資本家、税金や社会保険料を受け取る主体を政府と呼ぶ。なので、自分を労働者だと思っていても、株式投資からの収益や預金利息を受け取る点でいえば、ここでいう資本家ということになる。
この式で見ると、質問の中身が整理できる。
「景気がよくなった実感」は、主に労働者の受け取りに関わる。賃金や給与が増えても、物価や税金や社会保険料を差し引いたあとに使えるお金が増えていなければ、生活の中で景気がよくなったとは感じにくい。
一方で、株価は、主に資本家の受け取りに関わる。企業利益など、将来、資本に対する見返りが大きくなると見込まれれば、株価はその期待を先に織り込む。
だから、株価が上がっているのに、景気がよくなった実感がない、ということは起こる。生活実感は主に労働者の受け取りに左右され、株価は主に資本家の受け取りに反応する。見ている受け取りが違うのである。
なお、統計上、景気がよいという判断は、国民所得全体が増えていることを土台にしている。

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