決算を予想する仕事で、経理の仕事の奥深さを知った。
昨年まで、私は上場企業グループの建設系会社で管理会計を担当していました。
管理会計の仕事のなかで、私自身が「経理の腕が試される」と感じていたのは、決算前に決算値を予測する「決算予想」という仕事です。
現場から集まる情報や自分で計算した数字をもとに、売上や利益が最終的にいくらになりそうかを組み立てていくお仕事。
現場の状況を理解し、数字の背景を考え、各部門と対話を重ねながら、一つひとつ数字を積み上げていきます。
決算が終わり、実績と予想がほぼ一致した瞬間は、仲間とガッツポーズをしたこともありました。
振り返ると、あの仕事でチームの連帯感も高まり、リーダーとしてとても楽しい時間でした。
今回は、そんな決算予想の仕事を通して、私が学んだことを書いてみたいと思います。
決算予想は「会社の事業を理解する仕事」でもあった。
私が勤めていた会社では、決算予想を年4回行っていました。
✅2月(決算前)
✅6月(今期の修正計画と合わせて作成)
✅8月(中間決算前)
✅12月(来期の利益計画と合わせて作成)
特に決算直前の予想には、高い精度が求められました。
その理由は、私たちの会社が上場会社グループの一員だったからです。
親会社は投資家などへ決算見通しを公表する必要があり、その前提となる連結グループ全体の業績見込みを、早い段階で把握する必要があります。
そのため、子会社である私たちも決算前からできるだけ精度の高い数字を提出することが求められていました。
売上や変動費の予想は、現場に作成を依頼する
建設業では「売上」や工事原価などの「変動費」は現場が一番よく知っています。
そのため、各支店や事業部門に予想値を作成してもらいます。
受注済みの工事を「今期中に完成する工事」と「来期以降へ持ち越す工事(仕掛工事)」に分け、それぞれ売上や工事原価を見積もってもらいます。
これらは独自の受注管理システムに登録されているため、集計そのものは比較的容易でした。
しかし、その数字をそのまま使えば良いわけではありません。
工事原価は、安全を見込んで少し余裕を持たせた見積もりになっていることも多く、そのままでは利益予想が保守的になりすぎることがあります。
そこで過去の原価率や工事内容を見ながら「この数字は実態に近いだろうか」と事業部門と何度も確認を重ねていきます。
また、建設業では「工事進行基準」という考え方があります。
これは、工事が完成した時ではなく、工事の進み具合に応じて売上を計上していく方法です。
そのため、工事全体の見積原価が変われば、売上の計上額も変わります。
つまり、見積原価の精度そのものが決算予想の精度につながるのです。
私はこの仕事を通じて「経理は数字を見る仕事だけではなく、数字が生まれる現場も理解する仕事なのだ」と学びました。
固定費(人件費や間接経費)は人事と経理で作成する
固定費の予想も同じでした。
人件費は人事部門が作成した数字を受け取り、前年や直近の推移と比較しながら違和感がないか確認します。
少しでも不自然な動きがあれば、人事部門へ確認します。
経理では、そのほかの間接経費や、仕掛工事や建設仮勘定へ振り替える金額などを予想し、固定費全体を組み立てていきます。
経費を予想するときは、過去数年間の月別実績を一覧にしていました。
単純に前年と比較するのではなく、
✅この費目は毎年いつ発生するのか
✅今年はもう発生したのか
✅残り数ヶ月であとどれくらい発生しそうか
を一つひとつ考えていきます。
また、毎年発生するものは「経常費用」、突発的な高額支出は「特別費用」や「固定資産」と分けて管理していました。
特別費用は過去のデータだけでは予測できません。
だからこそ各部門へ確認し、設備更新や大型修繕など予定されている支出を追加で織り込みます。
固定資産になりそうなものは、減価償却費も案件別に計算します。
最終的には、利益計画で定めた配賦ルールを使って、各部門や商品へ固定費を配賦し、会社全体の利益予想を完成させます。
この仕事で必要なのは、Excelが速く使えることだけではありません。
過去を眺めながら、今年はどうなりそうかを考え続ける力でした。
「数字の背景を想像する」ことが、経理には意外なほど求められるのだと感じていました。
「相手が入力しやすい」も、経理の立派な仕事。
私が密かに楽しみにしていた仕事がもう一つあります。
各部門へ配布する報告用のフォーマットを作ることです。
売上予想や工事原価、人件費など、それぞれの部門の担当者に入力してもらうためのExcelです。
✅入力する人が迷わないこと
✅経理が集計しやすいこと
✅余計な確認や読み替えが発生しないこと
そんなことを考えながら、できるだけシンプルなフォーマットを作っていました。
少し大げさかもしれませんが「自称、美しいフォーマット」を作ることにもこだわっていました。
経理は自分だけが使いやすい資料を作る仕事ではありません。
相手が入力しやすく、間違えにくく、後工程の人も助かる仕組みを作ることも大切な仕事だと思っています。
数字が外れたことも、次の財産になる。
決算が終わると、予想と実績を比較します。
ぴったり一致したときは、本当にうれしいものでした。
チームで思わずガッツポーズをしたこともあります。
ときには、大きく外れてしまったこともあります。
そんなときは「誰が悪かったか」ではなく、「なぜ外れたのか」をチームみんなで分析します。
✅失注したのか、想定通り完成しなかったのか
✅見積原価が甘かったのか
✅想定外の経費が発生したのか
原因を一つずつ整理し、次回の予想へ活かしていきます。
その積み重ねによって、少しずつ予想の精度が上がっていきました。
現場の声を聞き、数字の背景を考え、未来を予想し、次に生かす。
振り返ると、そんな試行錯誤を繰り返す仕事が、私はとても好きでした。
経理というと、過去の数字を正しく記録する仕事という印象があるかもしれません。
ですが、私にとって経理は「数字を通して会社を理解し、未来を考える仕事」でもありました。
決算予想を通して得たこの視点は、これからも大切にしながら、一つひとつの仕事に向き合っていきたいと思っています。
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