毎月の予実管理、どこを見ればいい?|元・管理会計マネージャーが「最低限これだけ」と決めていたポイント。
中小企業の経営者や経理の方で、こんな悩みを感じたことはありませんか?
「毎月数字は出しているが、正直あまり見返していない・・」
「予算と実績の差異は出しているが、理由までは深掘りできていない・・」
「結局、月次の報告は“作ること”が目的になっている。」
「そもそも忙しくて、月次では管理できていない。」
実は、予実管理はポイントを絞れば、そこまで大変なものではありません。
✅毎月、同じ指標を見る(定点観測)
✅異常値(想定外のズレ)をひろう
✅未来を見すえ、軌道修正できるか考える
たったこれだけでも、経営判断の質は大きく変わります。
私自身、大企業にて管理会計を取りまとめるマネージャーとして、メーカー・建設サービス系企業で原価管理や業績予実管理を担当してきました。
数百億円規模の事業別の業績を毎月見てきた立場からいえるのは、予実管理は「時間をかけて完璧にやる必要はない」ということです。
重要なのは「完璧な資料を作ること」ではなく、
「最低限見るポイントをおさえ、異常値に気づき、軌道修正できること」だと考えます。
私自身も「異常を早く見つけること」だけに集中するようになってからは、経営幹部や他部門にも説明しやすい資料づくりができるようになりました。
そんな経験から、この記事では「月次業績の予実管理で、最低限これだけは押さえておくべきポイント」を、実務ベースで説明します。
そして本noteの最後に、私が前職時代に使っていた予実管理表のテンプレートを、Excelで再現してみました。
このエクセルテンプレートを“無料”で配布しますので、よければ使ってみてください。
あなたの会社の利益改善の一助になれば幸いです。
月次の予実管理のポイント3つ
月次の予実管理で、私が「最低限これだけは必ずやる」と決めていたことは、実は多くありません。
重要なのは「量」ではなく「視点(見るポイントを絞る)」です。
① 異常値(イレギュラー値)を見つける。
予実管理は「ズレた理由をすべて説明すること」ではありません。
「明らかにおかしい数字」を見逃さないことに尽きます。
✅いつもより極端に高いor急に落ち込んでいる
✅他の商品よりも差や比率が突出している
✅前年と動きが違う
こうした数字が1つでも見つかれば、その月の予実管理は意味のあるものとなります。
② 「毎月」必ず見る。
予実管理は、年に1回まとめてやるものではありません。
なぜなら、
✅ズレに気づくのが遅れる
✅問題があっても、その原因の記憶が薄れる
✅途中で軌道修正ができない
からです。
毎月見ていれば、「先月からおかしい」「今月さらに悪化している」など、変化を連続で捉えられます。
これにより、経営の安心感はまったく違ってきます。
③ 完璧な精度を求めない
財務会計とは違い、管理会計の資料は外部に出す資料ではなく、あくまでも内部管理用の資料です。
よって、完璧に数字を合わせる必要もなく、ざっくりでも問題なし。
作成する目標値の精度も多少甘くても問題ありません。
大事なのは「想定と現実の大きなズレに気づけるかどうか」です。
いわば「経営判断のためのレーダー」になります。
だからこそ、最低限見るべき指標だけでも、毎月作ってウォッチしておくことが重要です。
予実管理で見るべき具体的な指標
では、実際に私は月次でどんな指標を見ていたのか。
メーカー・建設系企業での実務では、次の3つの指標を組み合わせて見ていました。
①目標に対する進捗率
年間の目標(計画)に対して、今月の実績(売上や利益・固定費など)はどのくらい進んでいるか、を確認します。
目標進捗率(%)= 当月の累計実績 ➗ 年間目標値 ✖︎ 100

さらに、その計画進捗率は前年の同じ月(1年前の同じ時期)と比べて、高いのか低いのか(消化のスピードが遅れていないか)を見ます。
進捗率の前年比較 = 目標進捗率 ー 前年同月の進捗率
※前年同月の進捗率(%)= 前年同月の累計実績 ➗ 前年の年間実績 ✖︎ 100

ただし、前年同月が異常値だった場合(通常とは大きくかけ離れた売上が発生した場合など)は、比較対象として使えません。
その場合は、過去数年の平均進捗率と比べる、という手もあります。(「過年度平均進捗率」と呼んでいました)
【過年度平均進捗率(3年平均で見る場合)】
過年度平均進捗率(%)= 過去3年の同月の平均実績 ➗ 過去3年の年間の平均実績 ✖︎ 100


🔹実務での活用ポイント4つ🔹
✅月次で必ずチェック: 売上・利益・固定費などの主要指標について毎月確認
✅早期発見・早期対策: 進捗の遅れを早期に発見し、対策を打つ
✅複数年での比較: 単年だけでなく、トレンドを見ることでより正確な判断ができる
✅異常値の除外: 特殊要因による異常値は、比較対象から外す
②前年同月実績との比較
もう一つは、実績が前年同月と比べてどれだけ増減しているか、差や比率で確認します。(「前年同月差」や「前年同月比」)
これは今年度が前年と比べて、好調なのか不調なのかを判断できます。

ここで重要なのが、「差」と「比」をどう使い分けるかです。
私は、
✅期中(年度中)は「差」
✅期末(年度末)は「差」と「比」
で見ていました。
「差」は、
・絶対額が大きくズレていると異常値がわかりやすい
・金額インパクトが一目で分かる
というメリットがあります。
よって、異常値を見つけやすいので、期中の管理に便利です。
一方、期末では「差」と「比」の両方を見ます。
比率は、数字が小さいうちはブレが大きく見えるため、期中では誤解を生みやすい。
しかし期末では「年間を通した部門や事業ごとの伸び率」など、金額規模の異なる部門・事業(商品)の成長比較に有効です。


✅月中は、大きな異常値の発見を重視。
✅期末は、部門ごと・商品ごとの成長度合いを見る。
この切り分けだけで、合理的な予実管理ができます。

③余力があれば「目標達成必要額」も
さらに、余裕があればぜひ見ておきたいのが、「目標値から累計実績を引いた残りの数字(=目標を達成するのに必要な金額)」です。
多くの予実管理は「進捗率」や「前年差」の比較(=過去と現在の比較)で止まってしまいます。
しかし、経営判断で本当に効くのは、これから何をどれだけ積み上げる必要があるのか(=未来をどうするか)です。

具体的には、
目標達成必要額 = 年間目標(計画) ー 累計実績
この「残り」を、前年の同時点と比較してみます。
すると、
✅今年は前年よりも楽なペースなのか
✅前年以上の頑張りが必要なのか
✅残り期間で、どれくらい頑張る必要があるのか
などが一目で見えてきます。

たとえば、前年は残り3ヶ月で3億円の売上を上げていたのに、今年は同じ時点で5億円残っているとしたら、残り期間で求められる負荷は明らかに違います。

この視点があると、
✅計画自体が現実的か
✅早めに打ち手を変えるべきか
✅投資や採用を抑える判断が必要か
といった判断を、感覚ではなく数字で行えるようになります。
予実管理は「過去を評価するため」ではなく「未来の行動を決めるため」に行うもの。
だからこそ、残りの数字を見て、前年と比べる。
ここまでできると、予実管理は一段レベルが上がります。

🔹実務での活用ポイント🔹
✅月次で必ず確認: 残り期間の必要額を毎月計算し、前年同時点と比較
✅部門別に見る: 全社だけでなく「部門ごと」の必要額を把握
✅早期の意思決定: 残り期間の負荷が前年より重い場合、早めに対策を打つ
✅計画の妥当性検証: 必要額が現実的か、達成可能性を常に問う
✅リソース配分の最適化: 必要額に応じて、人員・予算を再配分
✅施策の逆算: 残り期間と必要額から、今後の具体的な施策を決定
Excelテンプレートを無料で差し上げます。
ということで今回は、月次での予実管理に関するノウハウをお伝えしました。
まとめると、月次の予実管理で大切なのは、完璧な説明資料を作ることではありません。
✅異常値に気づく
✅原因を仮説でいいから言語化する
✅未来を見据え、次の一手を考える
これだけです。
数字はざっくりでもいいので、このサイクルを毎月回すことです。
最後に、今回の記事で紹介した考え方をベースに、私が前職で使っていたものを再現した予実管理表を、エクセルテンプレートとして“無料”で配布します。
テンプレートは以下の2つのパターンを用意しました(シートで分かれています)。
ご自身の目的に合ったものをお使いください。
① 全社用テンプレート
・売上〜固定費〜利益、利益率
・目標(計画)進捗率
・前年同月との差・伸長率
・計画達成までの残りの必要額
といった指標を、1枚で俯瞰できる構成です。
経営者や経営会議向けの「まず最初に見る数字」を想定しています。
② 部門別・比較用テンプレート(事業部・支店別)
・部門ごとの利益率、進捗率、前年同月差
・どの部門が伸びていて、どこが足を引っ張っているのか
を横並びで比較できる構成です。
現場との対話や、改善アクションにつなげるためのテンプレートです。
「予実管理が形骸化している」
「そもそも、何を見ればいいかわからない」
そんな方が、最低限これだけ見れば判断できる状態を作ることを目的にしています。
ぜひご活用ください!
予実管理は、会社を縛るための仕組みではありません。
会社を守り、未来を選ぶための道具です。
毎月、数字と向き合うその時間が、確実に経営の質を変えていきます。
ともに、会社を良くしていきましょう!
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