ジャイアンの飽くなきリサイタル魂『シンガーソングライター』他/ジャイアン大歌手への道!?③

ジャイアンと言えば、地獄の歌声がトレードマーク(?)。アニメでジャイアンのドラ声を真っ向表現されている木村昴さん、そしてかつてのたてかべ和也さんには尊敬の念を禁じ得ない。

ジャイアンが嫌がる皆を巻き込んでたびたび「ジャイアンリサイタル」を開いたり、レコードを作ったりしているが、そうしたエピソードを発表順に見ていこうというのが、今回の企画である。

これまでの記事を並べておくので、是非参考に(?)してほしい。


本稿ではさらに時間軸を進めてみよう。前作から7ヶ月後のお話である。

『ちく電スーツ』
「小学三年生」1976年11月号/大全集7巻

本作は簡単に。

冒頭からホゲエ~と、この世のものとは思えない悪声を響かせるジャイアン。のび太やしずちゃんたちに、「俺の歌、しびれるだろ」と感想を押し付ける。

のび太はインチキじゃなく、本当にしびれさせてやりたいとこぼすと、ドラえもんが「やってみるか」と言って「ちく電スーツ」という道具を出す。

このスーツを身につけて動き回ると、静電気を吸収するようにして電気溜まっていくのだという。ところが、一点、大事な注意事項があったのに、その説明を聞かぬまま、外へと飛び出していくのび太。

ジャイアンと「しびれる歌声対決」になるのだが、ジャイアンが真っ黒こげになるほど電力が強まっていく。実はこのスーツは、電気を適度に放出するアースを装着しておかねばならなかったのだ・・・。

本作ではジャイアンの歌は脇役扱いであるが、しびれる歌声を持っていると思い込んでいることがわかる一本であった。


さらにここから3ヶ月後。

『念録マイク』
「小学三年生」1977年2月号/大全集7巻

本作でもジャイアンがリサイタルを予定していたのだが、何と大事な本番前日に風邪を引いてしまい、声が出せなくなってしまう。

この朗報を聞いて、のび太・ドラえもん・スネ夫・しずちゃんは、涙を零して喜び、心から安堵する。歌を聞かされるだけでどれだけのダメージを負うというのだろうか。

ところが歌に関しては用意周到なジャイアンは、こんな時のために予めテープに歌声100曲を収録しており、明日のリサイタルは口パクでテープを流すというのである。

一度ぬか喜びをした皆は、「楽しみで気が遠くなりそう」と言いながら超落胆して帰っていく。


「こりゃ命に関わる」ということで何か対策を練ろうとするが、即座にドラえもんがアイディアを考え出す。ドラえもん曰く、「このマンガ六ページしかないから、急がなきゃ」とのこと・・。

そこで出した道具が「念録マイク」という超小型マイク。「念録」とは、心に思ったことをフィルムに写す超能力の「念写」の音版ということらしい。このマイクを舌に乗せて心に思えば、思った通りの音を直接テープに吹き込むことができるという。

その夜、ジャイアンが入念にチェックしているテープを台無しにするべく、ドラえもんとのび太で念波を送る。まるで人を呪い殺すかのような形相である。

翌日のリサイタルはジャイアンの家の中で行われる。ボリュームを最大限にしてテープを流し始めるのだが・・、ジャイアンの強烈な歌声と共に、歌への悪態も聞こえてくる。

例えば、「およげたいやきくん」の「いやんなっちゃうよお~~」の部分で「ほんと!嫌になる」とヤジが飛んでくる。山口百恵の「横須賀ストーリー」の「これっきりですかあ~~」では、「これっきりにしてくれ!変な歌」と合いの手が入る。

ジャイアンはテープに怒りだし、リサイタルは中止となる。

本作は、歌えないのに歌を聞かせたいという、驚異的な歌への執着が垣間見れるお話であった。


さらに3か月後には、「音がない世界」でも歌声を披露しようとするジャイアンの狂気が見られる。こちらは既に記事にしてある。

『音のない世界』
「小学三年生」1977年5月号/大全集8巻


本稿ではさらにもう一本、上記の4ヶ月後の作品を見ていく。

『シンガーソングライター』
「小学三年生」1977年9月号/大全集8巻

本作は『ジャイアン心の友』という作品と良く似た、リサイタル以外の歌声エピソード。

とある街角。スネ夫や他の子供たちがアタフタと慌ただしく動き回り、いつの間に誰も姿が見えなくなる。その様子を見てのび太は「台風の前に、鳥や獣が逃げ出す様子を思い出させるなあ」とのんびり構えている。

するとそこへ、鼻息荒くいかにも爆発寸前といった体(てい)のジャイアンが現れて、のび太の首を思い切り締め上げる

のび太はそこで「何か悩んでいるなら聞かせて欲しい」と懐柔作戦に出る。これは『ジャイアン心の友』の時に学んだ「意地悪されたら親切にしろ」という考え方に基づくものである。


するとジャイアンは「この芸術家の悩みを見抜いてくれた」と言って泣き出す。そのお悩みというのは、ジャイアンの夢は作詞作曲もするシンガーソングライターになることなのだが、作詞はともかく曲作りが進まないのだという。

シンガーソングライターとはいっぱしだが、これは本気の悩みのようで、「俺には才能がないんだ」と言って、自らをボコボコと殴りだす。

この話を持ち帰るのび太。ドラえもんは「近所迷惑だから何もしない方がいい」と素っ気ない。のび太は「しょうがないだろ、絞め殺されそうになったんだぞ」と言い訳する。


そこでドラえもんは、悩めるジャイアンの顔をみて吹き出しつつ、「人の心を打つ美しい曲を作りたい」というお題に応えて、「メロディーお玉」という道具を出す。

この道具は、テンポだけ設定してマイクに向かって詩を吹き込むと、それに合わせて機械の中のお玉(おたまじゃくし型のミニロボット)が動き出し、楽譜を作ってくるという。

いわゆる「詩先」型の作曲マシーンなのである。

ところがジャイアンは作曲家を目指しているにも関わらず、楽譜を読むことはできない。

ジャイアンがキレそうになったので、すぐ音が出るように改造を施すとドラえもん。最初からそうすればジャイアンのプライドが傷つかなったのに、と思う場面である。


「タイムふろしき」を「メロディーお玉」の上に被せる。すると時間が先に進み、お玉がカエルに育つ。「メロディーカエル」である。

スイッチを入れると、お玉が作った楽譜通りにカエルが「ギャ・ギュ・ギョ」と鳴いて曲に仕上げてくれる。ここではジャイアンが歌っているわけではないので、本当に美しい曲が流れだす。当然、ジャイアンも大満足である。

この機械は、ダイヤルを調節することで、楽しい曲、悲しい曲、勇ましい曲と何でもお好み次第に作れるという。AI顔負けの大変便利な作曲マシーンなのである。


ジャイアンは「これを使って次々名曲を作るぞ、世界的な大歌手になるんだ」と大張り切り。そして涙を流してドラえもんとのび太に握手を求めて、あのセリフが飛び出す。

「ありがとよ! お前たちは、俺の心の友だ、親友だ!」

2度目(回数は3回目)の「心の友」発言である。


「人を喜ばせるのは、気持ちのいいもんだ」とドラえもんたちもしてやったりの満足顔。しかし、その表情はすぐに曇ることになる・・・。

何日か経って、アタフタと皆の動きが慌ただしい。あれよあれよと道から誰もいなくなり、シ~ンと静まり返る。またしても、ジャイアン台風が吹き荒れる予感大である・・・。

すると背後からジャイアンが登場。一瞬ギクとするが、ジャイアンの態度は以前と変わらず「おう、親友よ、心の友よ。いいところであった」とご機嫌麗しい。

そしてジャイアンは「新曲発表会」を開こうと思ったのだが、客がいなくて困っていたと言い出して、空き地のリサイタル会場へと二人を連れていく。「メロディーお玉」(進化版)を使い、この数日で100曲作ったという。

「あんなもの貸したからだ」とのび太が怒り、「何とかしろって言ったの君だぞ」とドラえもんも大反論。空き地で二人は取っ組み合いの喧嘩となり、リサイタルを始められないジャイアンも怒り狂うのであった。


・・・こうして見ていくと、ジャイアンのリサイタルへの執念を強く感じると共に、かなりの頻度でジャイ歌エピソードをぶっこんでくる藤子F先生の意欲もまた印象的である。

「困った時にはジャイアンリサイタル」ネタという頻度だが、さらにハイペースでジャイアンの歌ものは続いていく。

次稿ではここから数年先までのエピソードを拾っていく予定である。




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