ゲストキャラ多数!『正義のみかたパーマンごっこ』「宙ぽこ」最終回/正義のヒーローごっこ⑦
子供の頃、「ドラえもん」から藤子不二雄の世界に足を踏み入れた僕は、それはそれは藤子作品を読み漁った。しかも同じ話を、何度も何度も繰り返し繰り返し。コミックは当然ボロボロになった。
藤子アニメ全盛期でもあり、毎日毎日藤子アニメも堪能していた。当時は気軽に録画できる時代ではなかったから、見逃してはなるまいと、真剣にブラウン管の前にかじりついたものである。
「ドラえもん」が大好きだったが、すぐに「パーマン」にもハマった。1983年の春に、映画ドラえもんの併映として「パーマン」の第一話が映画化され、続けてテレビ放送も始まったのだ。
「パーマン」は、いわゆるずっこけヒーローものだが、ちょっとダメな人間が正義のヒーローになるという展開が、ベタではありつつ、子供心を掴んだ。自分もパーマンになって、活躍したい!そんな風に思ったものである。
ヒーローに憧れる気持ちは誰しもあるが、僕の場合、人生最初に触れたヒーローはパーマンであり、今でもパーマンになりたかったあの頃の気持ちは、ありありと思い出すことができる。
さて、パーマンの思い出はこの辺にして、藤子世界の住人の中で、ずばりパーマンに憧れるキャラクターがいるのでご紹介をしておきたい。
そのキャラクターは、前稿で取り上げたような「パーマン」のいる世界の住人であるカバ夫ではない。
あくまで「パーマン」というアニメを見て、パーマンに憧れている、一視聴者の立場の人物なのである。
非常にメタ的なお話であり、作中、別作品の藤子キャラが登場したりするユニバース的な作品でもある。よって、本作を読むと、お祭り的な気持ちになる。この不思議な味わいを是非とも感じてほしい。
「宙ぽこ」『正義のみかたパーマンごっこ』(最終回)
「別冊コロコロコミック」1983年6月号
今回見ていく作品は、「宙ぽこ」の三話目にして最終回となる『正義のみかたパーマンごっこ』というお話。タイトル通りに、パーマンに憧れてパーマンのように「ヒーローをやってみる」という筋立てである。
これまで「正義のヒーローごっこ」というシリーズ記事で、いくつかのヒーローに憧れる藤子キャラたちを紹介してきたが、今回はその憧れの対象が、同じ藤子キャラクターのパーマンであるところがかなりユニークだ。
まず本題に入る前に、そもそも「宙ぽこ」って何?という方がおそらく95%くらいいらっしゃると思うので、下記の記事を読んでいただくかWikiなどで予備知識を獲得願いたい。
「宙ぽこ」の初回で、主人公のつとむ君は、宙ぽこの「重力コントロール」によって空中に浮かび上がり、「パーマンみたい、ドラえもんみたい」と感嘆の声を上げている。
このセリフの意味するところは、宙ぽこの世界では、普通に「ドラえもん」や「パーマン」がフィクションとして日常にあるということである。
本作でも、つとむは熱心に「パーマン」のアニメを見ており、「面白いだろ」と宙ぽこに同意を求めている。(答えは「別に」とそっけなかったが)
つとむの家に「数日の滞在」をしている宙ぽこ。ところが、数日といっても、宙ぽこの住むソールス星(サウルス星?)では、時点の速度が遅いために、一日が地球にとっての一年以上に匹敵するという。つまり、数年規模で滞在するつもりのようだ。
そんな宙ぽこは、つとむ家の台所事情を考慮せず、バクバクとQちゃん並みにご飯を平らげているが、やっかいになるだけでなく、自分も何か役に立ってあげたいと思うようになる。
そこでパーマン大好きなつとむに、「自由に空を飛びまわって、悪者をぶっ飛ばす」能力を与えようと考える。科学力と超能力を備えたソールス星人であれば、パーマンのようになるのは簡単で、「サイパック」というバッジ型の機械を使えば良い。
ところが、宙ぽこが説明するサイパックの使い方は、「心の中で強くチカルをホロオムレすればいいんだ」などと意味不明で、つとむはチンプンカンプン。
そこで、サイパックのおもちゃ版である「セコパック」を使えば良いと考えた宙ぽこは、つとむの家にあった壊れた機械の部品を集めて実際に作ってみる。
セコパックの原理としては、これを身につけたつとむが「空を飛ぼう」と念じると、その意思が電波に乗って宙ぽこの持つサイパックに伝わり、サイパックから重力場歪曲波がセコパックに送り返されて、つとむが空を飛ぶことができる、というもの。
セコパックを作る時に大した部品がないと宙ぽこが口にしていた点と、飛んだり念力を送るテストの結果がイマイチな点が、かなり気にかかるところではある。
セコパックをパーマンバッジのように身につけ、洗面器と風呂敷という自家製パーマンセットで扮装するつとむ。「悪を倒して、有名になろう!!」と、空へと浮かぶ上がる。若干ヒーローとなる目的が不健全な気もするが・・。
しかし、つとむの意気込みと反して、少し空を飛びまわったくらいでは、悪者を見つけることができない。
ただし、つとむは知らないが、実際に空き巣に入っていた男が、空飛ぶつとむを目撃して、「あっ、パーマン!!」と驚いている。「パーマンなどいるわけない、アドバルーンの綱が切れたんだ」と仲間が説得していたが、この場面は後の伏線となっている。
つとむが空からガマグチとイナリを見つけて、「いた!悪者」と、友だちを悪者呼ばわりする。
宙ぽこは「本当に悪者なのか」とつとむに再確認すると、「悪いんだよ!乱暴で意地悪で欲張りで自惚れで威張り屋で」と私憤を並べ立てる。
さらに「あの陰険な顔、ブクブク太っちゃって、短足で」と容姿の批判をするのだが、この「短足」の部分が宙ぽこの気分を損ねて、サイパックとセコパックの繋がりを絶たれてしまう。
こうなるとお手製のマントとマスクは役立たずだが、それをガマグチとイナリに取られてしまう。イナリが試しに自家製パーマンセットを身につけたところで、短足呼ばわりされて怒っていた宙ぽこが機嫌を直し、再びサイパックの連動スイッチを押して、パーマンセットが復活する。
ヒーローになりたいガキ大将のガマグチが、つとむのパーマンセットを付けて空を飛ぼうとするが、体が重いせいかほとんど浮かび上がることができない。
減量しようとオシッコにいったり、服を脱いでパンツ一丁になったりするが、やはりダメ。しかし、息を吸い込んで膨らませてみると、フワフワと空へと浮き上がっていく。
そして、そんな空飛ぶガマグチを、先ほどの空き巣コンビが目撃する。
セコパックを取られたつとむと宙ぽこが合流。ガマグチに取られたと知り、宙ぽこがサイパックのスイッチを切ると、空を飛んでいたガマグチがサボテンの盆栽の上に落下する。
パンツ一丁で飛んでいたので、針まみれの体となってしまう。このあたり、描写に容赦がないのがF流である。
セコパックの調子が悪いと言うことで、宙ぽこは粗大ごみ置き場から材料を見繕って、パワーアップを図る。
しかしこれは改良ではなく、改悪だったようで、パーマンセットを付けたつとむが、勢いよく空に飛び出したかと思うと、まるでコントロールが利かずに暴走してしまう。
猛スピードで飛行するつとむは、ラーメンを食べている小池さんの部屋や、入浴中のしずちゃんのいるお風呂などを通過する。パーマンに続き、思いもよらない藤子ゲストキャラのカメオ出演である。
なお、小池さんはともかく、「宙ぽこ」の世界では「ドラえもん」はフィクションという設定なので、しずちゃんが登場するのは論理的にはおかしい。ここでは、しずちゃんに良く似たお風呂好きの女の子ということにしておきたい・・。
気絶状態まま飛んでいくつとむが、ちょうど先ほどの空き巣コンビが一仕事終えて歩いているところへ突っ込んでいく。パーマンを目撃しては、それは間違いだと言っていたのだが、本当にいたんだと驚く。
そのまま空き巣たちを巻き込んで、ちょうど交番の前に滑り込むつとむ。この結果、パーマンごっこの少年が空き巣を捕まえたというニュースとなるのであった。
しかし、つとむの体はパーマンのように強力になっていたわけではないので、この件で骨折や全身打撲の重傷を負ってしまう。宙ぽこは、もっともっと君を有名にさせようと意気込むが、「もういい!!」とパーマンごっこを後悔するつとむなのである。
かなり中途半端なところだが、本作で「宙ぽこ」は最終回となる。たった3回という短命で終わった原因はいくつか考えられるが、主たる要因は、本作に登場した「パーマン」の人気が過熱して、そちらに注力することになったからだと睨んでいる。
たった3本の連載で、本作も最終回らしいお話となっていないことから、もしかしたら続きをいつか書こうと思っていたのかもしれない。
