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Career Quest V 導かれし者たち(いったい、どこへ?)

キャリアについて考えることがある。

今の場所に残るのか。

別の場所へ行くのか。

一度立ち止まるのか。

それとも、自分で新しい場所を作るのか。


そんなことを考えていたら、なぜだか某有名RPGのゲームシステムが頭に浮かんできた。

勇者。

王様。

宿屋。

教会。

ルイーダの酒場。

ダーマの神殿。


あぁ、一緒じゃん。


今いる場所を「王国」と呼ぶなら。

そこで働く自分は、きっと勇者のようなものだ。

会社と社員。

組織と個人。

キャリアと転職。

思った以上に似ている。


ということで今回は、キャリアについて少しだけ勇者になって考えてみたい。

※Ⅰ〜Ⅳは諸事情により失われた



王様は勇者を引き留められるか

ある王国があった。

王様は勇者に言う。

「魔王を倒してきてほしい」

勇者は旅立つ。

レベルを上げる。
装備を整える。
仲間を育てる。
新しい技を覚える。
時には傷つきながらも前に進む。

そしてある日。

勇者は王国を去ろうとする。

すると王様は言う。

「君がいなくなると困る」
「みんなが困る」
「裏切るのか」

私は思う。

それは本当に、勇者の責任なのだろうか。


ルイーダの酒場はありますか?

某有名RPGを思い出してほしい。

勇者は一人では戦わない。

戦士がいる。
僧侶がいる。
魔法使いがいる。
商人もいる。
遊び人もいる。

だから冒険ができる。

もしルイーダの酒場がなかったらどうだろう。

仲間が補充されない。
育成もされない。
欠員も埋まらない。

それなのに王様は言う。

「勇者、お前が頑張れ」

いや、それは王国運営の問題ではないだろうか。

一人の優秀な勇者に魔物退治が集中する。
その勇者が抜けると、王国が止まる。
だから辞められると困る。

それは美談ではない。

属人化であり、要員計画の失敗であり、ナレッジ管理の不足である。


宿屋も教会もない王国

勇者は戦う。

しかし勇者も人間だ。

HPが減る。
MPが切れる。
毒にもなる。
呪いにもかかる。
時には戦闘不能にもなる。

そんな時に必要なのは何か。

宿屋だ。
教会だ。
回復施設だ。

休む場所。
相談できる相手。
もう一度立ち上がれる仕組み。
失敗しても再挑戦できる空気。

そういうものだ。

ところが王国によってはこう言う。

「おお勇者よ、失敗してしまうとは情けない」

勇者は思う。

この国、教会じゃなくて処刑場だったのか、と。


成功は当然、失敗は個人責任

勇者は頑張った。

資格を取った。
成果を出した。
仲間を育てた。
魔王を倒した。

王様は言う。

「勇者なら当然じゃ」

勇者が失敗した。

王様は言う。

「おお勇者よ、失敗してしまうとは情けない」

成功は当然。
失敗は個人責任。

これでは勇者の心は折れる。

人は、失敗そのものだけで離れるわけではない。
失敗した後に、どう扱われたかを見ている。

学習機会として扱われるのか。
再挑戦の場があるのか。
それとも、ただ責められるだけなのか。

優秀な勇者ほど、そこを見ている。


今度こそ評価してくれよな

勇者は王様に言う。

「王様、今度こそ評価してくれよな」

王様は言う。

「うむ。次の魔王を倒したら考えよう」

勇者は魔王を倒す。

王様は言う。

「うむ。次の魔王を倒したら考えよう」

勇者は資格を取る。

王様は言う。

「次は実績じゃ」

勇者は実績を出す。

王様は言う。

「次はマネジメント経験じゃ」

勇者は仲間を育てる。

王様は言う。

「もう少し様子を見よう」

そしてまた、王様は言う。

「期待しているぞ」

勇者は思う。

期待はありがたい。

だが、期待だけでは新しい装備は買えない。


ひのきの棒で魔王を倒せと言われても

王国が勇者に成果を求めること自体は悪くない。

勇者も報酬をもらっている以上、成果を出す責任がある。

ただし、成果を求めるなら環境も必要だ。

武器がいる。
防具がいる。
仲間がいる。
回復手段がいる。
適切なクエストがいる。

レベル50の勇者に、いつまでもスライム退治だけを任せる国がある。

一方で、布の服とひのきの棒だけ渡して、魔王討伐を命じる国もある。

どちらも長くは続かない。

この仕様のRPGが発売されたら、おそらくクソゲー扱いされる。

王様は一度、自分でプレイしてみるべきだと思う。


王国の価値とは何か

王国の価値とは何か。

それは、勇者に命令できることではない。

勇者が、

「この国で戦い続けたい」

と思えるだけの理由を持っていることだ。

武器。
仲間。
回復場所。
成長できるダンジョン。
正当に報われる討伐報酬。
冒険の先に見える未来。

それらを渡せないまま、忠誠心だけを求めるのは難しい。

勇者は王国に仕えているようで、
本当は自分の冒険を生きている。

王国に価値があるから勇者が残る。

勇者が残っているから価値がある、ではない。


妖精エスネアと賢者アイラス

昔の勇者は、王様の言葉しか聞けなかった。

しかし今は違う。

勇者のまわりには、いろいろな存在がいる。


妖精エスネア

世界中の噂話を集めてくる妖精だ。

「その王国、今すぐ出た方がいいわよ」

「隣国は給金が二倍らしいわよ」

「あの王様は最低らしいわよ」


勇者は尋ねる。

「本当なのか?」


妖精は答える。

「みんなそう言ってるわよ」


勇者は思う。

誰だ、その"みんな"は。


妖精エスネアの話は面白い。

刺激的だ。

時には有益ですらある。

だが、妖精は基本的に面白い話が好きだ。


「今すぐ辞めるべき!」

は広まる。


「もう少し情報を集めて冷静に判断した方がいい」

は広まらない。


だから妖精の話は面白い。

しかし、面白い話と正しい話は同じではない。


賢者アイラス

賢者アイラスは膨大な知識を持っている。

「勇者よ。あなたの市場価値を分析しました」

「現在のレベルで習得すべきスキルはこちらです」

「次に挑戦すべきダンジョンを提案します」


かなり頼りになる。


勇者が悩んだとき。

勇者が迷ったとき。

勇者が立ち止まったとき。


賢者は何かしら答えてくれる。


勇者は尋ねる。

「転職した方がいいと思うか?」


賢者は答える。

「条件によります」


勇者は尋ねる。

「残った方がいいと思うか?」


賢者は答える。

「条件によります」


勇者は思う。

結局どっちなんだ。


賢者は静かに言う。

「追加情報をください」


勇者は思う。

お前もか。


だが、それは賢者の誠実さでもある。

本当に賢い者ほど、

簡単に断言しない。


神官ビリー・Z・リーチ

神官ビリーは隣国事情に詳しい。

やたら詳しい。


「勇者よ。あなたの経歴を拝見しました」


勇者は驚く。

「なぜ知っている」


神官は微笑む。

「それは企業秘密です」


少し怖い。


だが、話を聞くと意外とまともだ。


「勇者よ。

今の王国に残るのも良いでしょう。

別の王国へ行くのも良いでしょう。

ただし、決めるのはあなたです」


勇者は思う。

案外ちゃんとしている。


もっとも。

勇者が転職すると神殿も潤う。


神官にも神官の事情がある。


神官ディータ・O・ダーパソル

神官ディータは適職診断が得意だ。


「勇者よ。あなたに最適な職業はこちらです」


診断結果。

勇者。


勇者は思う。

今も勇者なんだが。


再診断。


上級勇者。


勇者は思う。

何が変わった?


神官は答える。

「響きです」


勇者は少しだけ不安になった。


預言者リンクス

預言者リンクスは突然現れる。


勇者が資格を取った翌日。

現れる。


勇者が魔王を倒した翌日。

現れる。


勇者が昇進した翌日。

現れる。


「あなたのご経歴に興味を持ちました」


勇者は思う。

誰だお前。


「共通の知人が三名おります」


勇者は思う。

だから誰だお前。


どこで見ているのか分からない。

少し怖い。


しかし時々、

とても面白い縁を運んでくる。


だから勇者は、

結局また話を聞いてしまう。


悪い妖精もいる

情報が増えるのは良いことだ。

昔よりも、自分の市場価値を知りやすくなった。
他国の環境も見えるようになった。
王様だけが勇者の価値を決める時代ではなくなった。

これは大きな変化だ。


だが同時に、

情報が多すぎる時代でもある。


妖精エスネアは刺激的な話が好きだ。

神官ビリーには神殿の事情がある。

神官ディータにも神殿の事情がある。

預言者リンクスは縁を運ぶが責任までは取らない。

賢者アイラスは可能性を語るが、人生そのものを生きてくれるわけではない。


そして。

目の前の王様の方が正しいこともある。


王様だって好きで給金を抑えているわけではない。


勇者には見えていない。

城の修繕費がある。

魔王軍への備えもある。

他の勇者との公平性もある。

国家財政の問題もある。


王様には王様の苦労がある。


だから。

王様を悪者にすれば済む話ではない。


大切なのは、

誰の言葉を信じるかではない。


複数の情報を集めること。


そして最後は、

自分で決めることだ。


自分で王になる道もある

勇者の道は二つではない。

王国に残る。
別の王国へ行く。

それだけではない。

自分で王になる、という道もある。

ただし、王になるのは楽ではない。

勇者の頃は、王国が用意してくれていた。

武器屋。
宿屋。
教会。
酒場。
仲間。
クエスト。

王になると、それらを自分で作らなければならない。

採用。
教育。
評価。
営業。
資金繰り。
顧客対応。
仕組み作り。

全部自分ごとになる。

それでも、自分の理想の王国を作りたい勇者はいる。

それもまた、一つの選択肢だ。


導かれし者たち、どこへ?

王様も導く。
妖精も導く。
賢者も導く。
神官も導く。
預言者も導く。
仲間も導く。

だが、最後に決めるのは勇者自身だ。

導かれし者たち。

さて、どこへ。


勇者は旅立った。

王様は嘆いた。

「おお勇者よ、去ってしまうとは情けない」

だが勇者は振り返らなかった。

そりゃそうだ。

次の王国には、宿屋も教会もルイーダの酒場もあったのだから。

もっとも。

その王国が本当に理想郷だったかどうかは、また別の話である。


※本記事に登場する王様、勇者、妖精、賢者、神官、預言者はフィクションです。実在する企業、サービス、転職サイト、SNS、生成AI等とはたぶん関係ありません。

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