文豪の命盤には、同じ「欠け」があった ── 作家9人を紫微斗数で並べてみた
前に政治家の命盤、人気女優の命盤で共通点を探す記事を書きました。
今回は作家です。
正直、書く前は「文昌・文曲が揃ってるんでしょ」くらいの予想でした。もちろんそれもあったのですが、並べてみて一番はっきり出たのはそこじゃありませんでした。
作家の命盤に共通していたのは、才能の星より「欠けている場所」のほうでした。
今回見たのは、出生時刻まで確認できたこの9人です。
(選び方については最後に書きます。特別な基準は設けていません)
三方四正:命宮の三方四正は、人生に最も深く関わる宮です。(命宮、遷移宮、官祿宮、財帛宮)
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1. 言葉の星 ── 巨門と天機
まず技術面から。
巨門は口と言葉の星です。ただし「よく喋る」星ではありません。表に出ている言葉の裏側を疑う星、言い換えれば書かれていないことを読んでしまう星です。だから疑心暗鬼にもなるし、暗さも背負う。
命宮に巨門:
川端康成(未宮・天同+巨門)
太宰治(対宮から天機+巨門を借りる)
三方四正に巨門:
村上春樹(官禄宮の巨門)
三島由紀夫(財帛宮の巨門)
天機は考える星です。構想する、組み立てる、変化する、そして神経が細い。
命宮に天機:
村上春樹
太宰治(借対宮)
三島由紀夫(借対宮)
三方四正に天機:
川端康成
室井佑月
夏目漱石
面白いのは、巨門と天機のどちらか(または両方)が命宮まわりに入っていない人が9人中ほとんどいないことです。
そして太宰治と三島由紀夫。二人とも命宮に主星がなく、対宮から借りてきた星が天機系でした。自前の思考の型を持っていない場所に、考える星だけが映り込んでいる。この構造は後でもう一度出てきます。
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2. 文昌・文曲 ── これは予想どおり
三方四正に文昌と文曲が両方そろっていたのは4人。
太宰治
夏目漱石
川端康成
室井佑月
文昌は文章・書面・論理の星、文曲は情緒・話術・芸術表現の星です。書き言葉と話し言葉、と分けてもいい。両方あると、整った文章と生っぽい声の両方が出せます。
ここで注目したいのが太宰治です。
太宰は文昌と文曲が官禄宮(仕事の宮)に同宮していて、しかも生年の化忌が文曲。つまり文才そのものが「忌」になっている。
忌は紫微斗数では執着であり、欠落であり、手放せないものです。文才が長所として置かれているのではなく、そこから離れられない場所として置かれている。太宰の書くものを思い出すと、これはかなり象徴的です。
おまけ:命主・身主
ついでに命主・身主も見てみました。
文昌か文曲が命主か身主に入っていたのは、よしもとばなな(命主文曲・身主文昌)、太宰治(命主文曲)、山崎ナオコーラ(命主文曲)、芥川龍之介(身主文昌)、室井佑月(身主文昌)の5人。
芥川に至っては命主が巨門でした。人生の主軸が「言葉」に置かれている、と読める配置です。
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3. 命宮無主星 ── 自分の形がない人たち
ここから「欠け」の話に入ります。
命宮に主星がなく、対宮から借りていたのは3人。
芥川龍之介
太宰治
三島由紀夫
……お気づきかと思いますが、この3人は全員、自ら命を絶っています。
先に断っておくと、星が死を決めているわけではありません。無主星の人が危ないという話でも、まったくありません。ただ、この構造が何を意味するかは書いておく価値があると思います。
命宮に主星がないというのは、生まれつきの「自分の型」が薄いということです。だから外から借りてくる。対宮=遷移宮の景色を、自分の輪郭として取り込む。
これは作家にとっては、ほとんど武器です。
自分の型が薄い人は、他人になれます。人物に憑依できる。まったく違う人生を、内側から書ける。9人の中でも、この3人が書いたものは特に「他人の一人称」の精度が高い。
同時に、危うさもここにあります。役を降りたときに残る素の自分の輪郭が、もともと薄い。書いている間は誰かでいられるけれど、書き終えたあとに戻る場所が曖昧です。
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4. 化忌がどこにあるか ── これが一番はっきり出た
紫微斗数の四化のうち、化忌は執着・欠落・手放せないものを示します。
9人の生年化忌の位置を並べたら、きれいに3つのパターンに分かれました。
パターンA:命宮に化忌
村上春樹(天機化忌)
よしもとばなな(太陽化忌)
室井佑月(天同化忌)
問いが自分自身に向かうタイプです。
命宮の忌は「自分とは何か」が一生解けない問題として置かれている状態。だからそれを書き続けることになる。
村上春樹の徹底した一人称、よしもとばななの喪失と回復、室井佑月の自分を材料にしたエッセイ。三人とも書いている対象が違うのに、書く動機の位置は同じでした。
パターンB:夫妻宮に化忌
芥川龍之介(武曲化忌)
夏目漱石(巨門化忌)
山崎ナオコーラ(天機化忌)
愛情・伴侶の側に欠けが置かれているタイプです。
漱石は夫妻宮の巨門化忌が官禄宮を沖しています。巨門は言葉の星ですから、「家庭内の言葉のもつれ」が仕事のほうまで突き上げる構造。漱石の家庭の話を知っている人には、あまりに納得の配置だと思います。
パターンC:官禄宮(事業宮)の化忌が夫妻宮を沖する
太宰治(文曲化忌)
三島由紀夫(太陽化忌)
仕事に全部注ぎ込んだ反動が、私生活側に噴き出すタイプです。
太宰は文曲=言葉そのものへの執着が、そのまま私生活を撃っている。三島は太陽=公の姿、社会的な男性性、対外的な役割への執着が、夫妻宮を沖している。
三島の生涯を考えると、この一本の線はかなり重い意味を持ちます。
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5. 太陽と太陰が両方ある
命宮と三方四正に太陽と太陰が両方入っていたのは3人。
よしもとばなな
山崎ナオコーラ
三島由紀夫(借対宮)
太陽は外向き・公・与える光、太陰は内向き・私・受ける光です。ざっくり言えば視点の男性性と女性性を両方持っている状態。
よしもとばななと山崎ナオコーラは、家族や性別のあり方そのものを主題にしてきた作家です。片方の視点だけでは書けない領域を書いている。
三島の場合は、それが極端な形で出ました。借りてきた命宮に天機+太陰、官禄宮に太陽化忌。内側の繊細さと、外に掲げた男性性が、同じ盤の中で引き裂かれている構造です。
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6. 地空・地劫 ── 現実の足場が抜ける
三方四正に地空と地劫が両方入っていたのは2人。
芥川龍之介
よしもとばなな
空劫は「現実の枠が外れる」星です。損失、虚無、幻想。
これは作家にとって両刃です。何もないところから世界を立ち上げられるのは空劫の力ですが、同時に現実の足場が抜けやすい。
芥川が遺書に書いた「ぼんやりした不安」という言葉。よしもとばななの、死や霊的なものが日常と地続きになっている世界観。どちらも空劫の景色だと私は読んでいます。
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まとめ:技術と動機は別のところにある
9人を並べて見えたのは、こういう構造でした。
書く技術の星:巨門、天機、文昌、文曲
→ 言葉を扱い、構想し、整えて、響かせる能力
書く動機の星:化忌、命宮無主星、地空・地劫
→ 欠けているもの、埋まらないもの、輪郭のなさ
技術の星だけを持っている人は、上手い文章を書きます。でも作家にはならないかもしれません。
この9人に共通していたのは、技術より先に「欠け」があったことでした。命宮に、夫妻宮に、あるいは仕事から私生活を突き上げる形で。埋まらない場所があるから、それを言葉にし続けることになる。
だから作家の命盤を見ていると、逆のことを思います。
あなたの命盤の化忌がどこにあるか。それはたぶん、あなたが人生で一番うまくいかない場所です。同時に、あなたが一番深く掘れる場所でもあります。
欠けているところは、弱点として使うこともできるし、材料として使うこともできる。文豪たちがやったのは、後者でした。
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【今回の選び方について】
最後に、選定の基準を書いておきます。
今回の9人は「ネット上で出生時刻まで確認できた作家」を集めただけです。
文学的な評価や知名度で選んではいません。「この人は入れる/入れない」という基準を作ると、どうしても恣意的になってしまうので、命盤が立てられる人は全員入れました。逆に言えば、多くの文豪は出生時刻の記録が残っておらず、そもそも検証できないので入っていません。
サンプルは9人です。統計として成立する数ではありません。あくまで「並べてみたら、思ったより揃っていて面白かった」というレベルの話として読んでいただければと思います。
また、出生時刻は資料によって差があります。時刻が数十分ずれると命宮そのものが変わることもあるので、そこは前提として置いておいてください。
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紫微斗数は、当たる/当たらないで語られがちですが、私は自分を分解するためのデータだと思っています。
信じる必要はありません。使えばいい。
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あなたが一番深く掘れる場所が、どこにあるのか。
