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顧客の声を集めるだけでは足りなかった話——改善しているのに差がつかなかった頃を振り返る

前回は、顧客アンケートをもとに改善を重ねた経験を書いた。

あの取り組みに意味はあったと思っている。

ただ、それだけで勝てたわけではなかった。

顧客の声を拾い、接点ごとに改善していても、競争の中では差が残らず苦戦した場面がある。
今回は、そのとき何が足りなかったのかを振り返ってみたい。


今から15年ほど前、ある自由診療の眼科クリニックの事業立ち上げ支援プロジェクトで、業界トップの強大なライバルと対峙していた。

相手は、圧倒的な広告投資と価格優位を持つコストリーダーだった。
こちらは、説明の丁寧さや体験設計といった差別化で戦おうとしていた。

結果としては、かなり苦戦した。
こちらなりに工夫はしていたが、その工夫が優位性として積み上がっていく感覚はあまり持てなかった。

当時感じていた違和感

たとえば、

  • 丁寧な説明を強化しても、しばらくすると差が見えにくくなる

  • 不安解消のためのコンテンツを整えても、決定打になりきらない

  • 体験を改善しても、最後は価格の強さに押し切られる

そんなことが何度もあった。

当時は「競争が激しいから仕方ない」と受け止めていた。
それ自体は間違っていなかったと思う。

ただ今振り返ると、それだけでは整理しきれない感覚が残っている。
少なくとも自分には、相手の方がこちらより速い学習ループを回しているように見えていた。

自分が見ていたもの、見えていなかったもの

当時の自分は、

  • 顧客がどこで迷うのか

  • 何に不安を感じるのか

  • どんな説明があれば意思決定しやすくなるのか

そうしたことを理解しようとしていた。
それ自体は必要だったし、実際に改善にもつながっていたと思う。

ただ、一つ抜けていた前提があった。

競合もまた、顧客の反応を見ながら学習しているということだ。

こちらは、顧客の不安を理解し、それに対応する施策を考え、改善していく流れで動いていた。
一方で相手は、少なくとも結果として見る限り、顧客の反応や市場の比較軸、競合各社の打ち手を踏まえて、より速く最適化しているように見えた。

もちろん、相手の内部事情を知っているわけではない。
あくまで今振り返っての整理だが、少なくともこちらは単発の改善を積み重ねる発想から抜け切れていなかった。

顧客接点の情報はあったが、つながりが弱かった

当時を思い返すと、顧客接点の情報自体はそれなりに集まっていた。

  • 問い合わせでの質問

  • カウンセリングでの迷い

  • Web上の伝わりにくさ

  • 顧客アンケートから見える不安や比較軸

ただ、それぞれが分断されていた。

WebはWeb、現場は現場、問い合わせは個別に対応する。
それぞれに改善はしていたし、顧客の意思決定プロセス全体を意識した設計もしていたつもりだった。

ただ、

接点ごとの最適化に寄っていて、全体としてのつながりが弱かった。

今なら、ここが大きな分岐点だったように思う。

差別化が残らなかった理由

当時苦しかったのは、改善しても改善しても、差別化として残っていく感じが薄かったことだ。

今振り返ると、要因は一つではなかったと思う。

  • そもそも価格優位の強い市場だったこと

  • こちらの実装力や継続力にも限界があったこと

  • 表に出る施策ほど観測されやすく、差別化として残りにくかったこと

つまり、問題は「良い施策を考えられていなかった」だけではなかった。
改善はしていても、それが競争優位として積み上がる構造にはなっていなかったのだと思う。

顧客の声を集めても差がつかないことがある

顧客の声そのものは、多くの企業が何らかの形で集めている。
だからこそ難しいのは、集めることではなく、それをどうつなぎ、どう使うかだと今は感じている。

  • どこで理解が進むのか

  • どこで不安が残るのか

  • どこで比較が発生するのか

  • 最終的に何が意思決定を左右するのか

その流れを接点ごとに分けたまま見ていると、個別改善はできても、全体としての差別化にはつながりにくい。

競争の激しい市場では、接点上に表れる工夫ほど追随されやすいこともある。
そう考えると、顧客の声を集めること自体は大事でも、それだけで差がつくわけではない。

今ならどう考えるか

もし同じような状況にもう一度向き合うなら、やること自体は大きく変わらないと思う。

顧客の声を拾うこと。
不安や迷いを理解すること。
現場の改善につなげること。

その重要性は今でも変わらない。

ただ、一つ変えるとしたら、それを接点単位ではなく、意思決定全体の流れとして扱うことだと思う。

  • Webで何を理解するのか

  • どこで不安が解消されるのか

  • 問い合わせで何を確認するのか

  • 現場で何が最後の決め手になるのか

そうした流れをつなげて見ないと、改善が改善のままで終わってしまう。

そしてもう一つ大事なのは、競合もまた同じ市場の中で学習している前提を持つことだと思う。
そこで初めて、顧客理解を単なる改善ではなく、戦略として扱う入り口に立てるのかもしれない。

自分への戒め

当時の自分は、顧客の声を軽視していたわけではない。
むしろ重要だと思っていたし、丁寧に拾おうとしていた。

ただ、その声を

  • 接点横断でつなぐこと

  • 意思決定全体の設計に落とすこと

  • 競争の中でどう機能するかまで考えること

そこまではできていなかった。

結果として、改善はできていても、競争優位としては残りにくい動きになっていた可能性がある。
今振り返ると、足りなかったのは施策の数ではなく、施策を位置づけるための構造理解だったのだと思う。

最後に

顧客の声を聞くことは大事だと思う。
ただ、そこで止まると、改善はできても差別化として残らないことがある。

重要なのは、顧客の声を集めることそのものよりも、それを接点横断でつなぎ、意思決定の流れの中で扱い、競争の中でどう使うかまで考えることなのだと思う。

もし今、

  • 改善を重ねているのに差がつかない

  • 顧客理解を深めているのに手応えが薄い

そんな感覚があるなら、施策そのものよりも、施策を置いている競争ゲームの前提を見直した方がいいのかもしれない。


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