結果だけでは育たない|進行品質を見る評価軸が必要になる
売上や受注数のような、最終結果に近い指標はわかりやすい。
数字が出たか。
出なかったか。
目標に届いたか。
届かなかったか。
評価する側から見れば、扱いやすい指標であることは間違いない。
だが、現場で仕事を見ていると、結果だけではどうしても拾えないものがある。
それが、進行品質だ。
結果の手前には、条件整備がある
最終結果だけを見ると、うまくいった理由が見えにくい。
なぜ受注できたのか。
なぜ提案が通ったのか。
なぜ相手の判断が前に進んだのか。
そこには、表に出にくい途中工程がある。
たとえば、
課題を正しく聞き出した
相手の社内事情を把握した
判断に必要な材料を先回りして用意した
不安が残りそうなポイントを整理した
導入後に詰まりそうな条件を確認した
こうした動きが積み重なって、最後の結果につながる。
しかし、最終結果だけを見ると、その途中工程は見えにくい。
結果が出れば「うまくいった案件」になる。
結果が出なければ「うまくいかなかった案件」になる。
もちろん結果は大事だ。
ただ、それだけでは、何をしたから前に進んだのかが残りにくい。
うまくいった理由も、うまくいかなかった理由も、再現できる形で残りにくい。
再現性を残すには、結果の手前にある条件整備を見えるようにする必要があるのではないかと思う。
難案件ほど、途中の貢献が見えにくい
案件には難易度の差がある。
最初から条件が整っていて、比較的スムーズに進む案件もある。
一方で、最初から条件が複雑な案件もある。
たとえば、
関係者が多い
決裁ルートが複雑
現場と管理部門の意見が違う
既存運用が強く残っている
過去の失敗経験があり、慎重になっている
予算や時期の制約が厳しい
こうした案件では、すぐに結果が出ない。
むしろ、前に進めるだけでもかなりの調整が必要になる。
それでも結果だけを見てしまうと、表面上は「受注できなかった案件」「進まなかった案件」として扱われやすい。
一方で、条件が整っていた案件を担当した人は、短期間で成果を出しやすい。
もちろん成果を出したこと自体は評価されるべきだ。
ただ、結果だけに寄りすぎると、
案件の難易度差や、
途中でどれだけ条件を整えたかが見えにくくなる。
ここを見落とすと、難しい案件に向き合った人の貢献が評価からこぼれてしまうことがある。
進行品質とは何か
ここでいう進行品質とは、案件を前に進めるために、必要な条件をどれだけ見える化し、次の判断につなげられたかを見るための仮の言葉だ。
単に「頑張ったかどうか」を見るものではない。
努力量や長時間対応を評価するためのものでもない。
見たいのは、案件を前に進めるための条件が整理され、次の判断につながったかどうかだ。
たとえば、同じ失注でも中身は違う。
Aの失注は、課題も決裁者も導入条件も曖昧なまま終わった。
Bの失注は、課題も関係者も条件も整理され、今回は予算時期の問題で見送りになった。
どちらも結果は失注だ。
だが、進行品質はかなり違う。
Bの案件には、次回提案の材料が残る。
類似案件への学びも残る。
社内ナレッジにも転用できる。
一方でAの案件は、なぜ失注したのかも残りにくい。
結果は同じでも、組織に残る価値が違う。
ここを見ないままだと、組織は「結果が出た/出なかった」だけを繰り返しやすくなる。
進行品質を見ることは、結果を軽視することではない
進行品質を見るというと、プロセス評価や努力評価の話に聞こえるかもしれない。
だが、そうではない。
進行品質を見ることは、結果が出なかったことを正当化するためではない。
むしろ、結果に近づくために、どこで条件整備が止まっていたのかを見えるようにするためのものだ。
課題の聞き出しで止まっていたのか。
相手の社内構造をつかめていなかったのか。
判断材料を整理できていなかったのか。
次のアクションへの接続が弱かったのか。
提案後のフォローが曖昧だったのか。
分解できれば、改善点が具体的になる。
逆に、分解できないまま結果だけを求めると、指導は「もっと頑張ろう」に寄りやすい。
結果は大事だ。
ただ、結果だけでは、次に何を変えればよいのかが見えにくい。
だから、結果に至る途中工程を見る必要が出てくる。
進行品質 × 接続率 × 結果
営業やCS、提案活動の評価を考えるとき、単純な売上だけではなく、もう少し分解して見てもよいのではないか。
たとえば、次のような見方だ。
進行品質 × 接続率 × 結果
進行品質は、案件を前に進める条件整備の質。
接続率は、整理した課題や条件が、次の商談・提案・社内共有・導入準備などにきちんと接続されたかどうか。
結果は、最終的な受注・継続・追加提案・利用拡大などの成果。
この3つを分けて見ると、何が詰まっているのかが見えやすくなる。
進行品質は高いが、接続率が低い。
つまり、課題整理はできているが、次の提案や社内連携につながっていない。
接続率は高いが、結果が出ない。
つまり、次のアクションには進むが、提案内容やタイミングに課題がある。
結果は出ているが、進行品質が低い。
つまり、属人的な勢いや案件条件に助けられていて、再現性が低い可能性がある。
このように分解すると、単なる個人評価ではなく、育成や改善につなげやすくなる。
個人の優劣を細かく採点するというより、どの条件が整うと案件が進みやすいのかを組織で学習するための見方に近い。
評価軸は、組織が何を学習するかを決める
評価軸は、単に人を査定するためのものではない。
組織が何を価値として扱うかを決める仕組みでもある。
何を強く見るかによって、現場で優先される行動は変わる。
見えやすい結果だけを見れば、見えにくい条件整備は後回しになりやすい。
だからこそ、進行品質を見る意味がある。
誰が成果を出したかだけではなく、
どの進め方が成果につながりやすいのか。
どの条件が整うと案件が前に進むのか。
どの迷いを解消すると判断が進むのか。
そこまで見えるようになると、評価は育成と改善につながりやすくなる。
もちろん、いきなり評価制度を変えるべきだ、という話ではない。
まずは案件レビューや振り返りの中で、結果の手前にある条件整備を見えるようにするだけでも違うのではないかと思う。
結果は大事。でも結果だけでは育ちにくい
売上も、受注も、継続も、追加提案も、組織にとって重要な成果であることは変わらない。
ただ、結果だけを見ても、人も組織も育ちにくい。
結果の手前には、必ず途中工程がある。
案件を進めるための条件整備がある。
相手の迷いを減らす情報整理がある。
社内外の認識をつなぐ接続がある。
判断を前に進めるための小さな設計がある。
そこを見えるようにしないと、成果は属人化しやすい。
逆に、進行品質を見えるようにできれば、結果に至るまでのプロセスを学習できる。
結果は大事。
でも、結果だけでは育ちにくい。
だからこれからは、最終成果だけではなく、
進行品質 × 接続率 × 結果
という見方も必要になってくるのではないか。
そんなことを、これまでスムーズに仕事が流れた案件や、逆に途中で詰まった案件を思い出しながら考えている。
ここまで考えると、「進行品質を見る」という話は、次のテーマにもつながっていく。
以前、若手営業職が評価指標にゲームのポイント制を提案したところ、上司から「遊び感覚で仕事をするな」と一蹴された、という話を読んだことがある。
たしかに、「仕事をゲームにする」と聞くと、軽く見えるかもしれない。
仕事を楽しくするための工夫だと受け取られることもあると思う。
ただ、その話を読んだとき、少し引っかかった。
本人は、本当にただ仕事を楽しくしたかっただけなのだろうか。
もしかすると、ゲームのポイント制という発想の中に、営業活動を前に進めるための構造を見ていたのかもしれない。
ゲームには、攻略条件がある。
何を満たせば次に進めるのか。
どこで失敗しやすいのか。
どの条件を回収すれば、次のステージに進めるのか。
それが見えるから、プレイヤーは学習できる。
営業やCSにおける攻略とは、相手を言い負かすことではない。
無理やり契約に持ち込むことでもない。
お客様が納得し、腹落ちし、判断できる状態をつくること。
そのための条件を、一つずつ整えていくこと。
その結果として、採用や契約、継続や追加提案につながる。
そう考えると、ゲーミフィケーションは「仕事を楽しくするための飾り」ではなく、進行品質を見えるようにし、再現性を高めるための設計として考えられるのではないか。
そんなことを、次回はもう少し掘り下げてみたい。
次回予告
次回は、
ゲーミフィケーションは、管理を楽しくするためではなく再現性を高めるためにある
について考えてみたい。
このマガジンは、現実世界の構造や変化に気づくのが遅れがちな自分自身を戒めるために書いている、思考整理のログです。
記事内の内容は、筆者自身の経験や観察をもとにした個人的な考察であり、特定の企業・業界・職種・個人を批判・断定するものではありません。
ここで用いている言葉や構造化は、現場で起きている複雑な事象を捉え直すための仮説です。正解ではなく、読者自身の現場や経験を見直すための視点としてお読みください。
