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日本を妖怪から守った将軍 〜ラバウルの聖将 今村均 後編

中編はコチラ↑


孤立したラバウルの地で、今村均大将と
水木しげる二等兵の運命が交わりました。

今村がラバウルで行った、
ラバウルの自給自足化、強固な陣地構築は、
米軍に「ラバウルを正面攻撃すれば
甚大な損害が出る

と判断させることに成功しました。
名将が大軍を率い、守りを固めている場所は
いくら兵力差があったとしても
わざわざ攻めたくないというものです。

結果として米軍はラバウルを「飛び石作戦
で素通りし、封鎖するに留め、
ラバウルはオーストラリア軍との小競り合いが
あったぐらいで大規模な地上戦を免れました。


一方、最前線のジャングルを彷徨っていた
水木しげる二等兵は、
いくつもの「不思議」に遭遇します。
彼はそれをマンガや対談などで
伝えていますが、その代表的な
エピソードをいくつか紹介します。

水木しげるの部隊が敵の攻撃で全滅し
水木ひとりが生き残り、
敵に協力している現地人たちに
追い立てられるという状況になりました。
彼は海に飛び込んで泳いだり、
大木のうろの中で動物と一夜をすごしたり
ジャングルの中を逃げ惑います。
深夜全くの闇の中、水木はある方向に
逃げようとするのだけれども「ぬりかべ
のような不思議な壁に行く手を阻まれ
どうしても進むことができない。

諦めてその場所で夜を明かすのだが
翌朝改めてその壁があった方角を見てみると
断崖絶壁が広がっており、
進んでいたら死は免れないところだった、
という経験をします。
水木は妖怪に助けられたと感じました。

また別の時、水木がいた部隊が玉砕した
という報告がなされたことがありました。
しかし実際には水木ら数人は生き残っている。
そんな時、玉砕したはずの人が生き残ってる
というのは不都合な事実であるということで
改めて敵に向かって無駄な突入をして
今度こそ本当に玉砕せよ
という命令をされる。
理不尽な理屈で人の命が奪われる軍隊、
戦争、人間社会の愚かしさを思い知ります。

そんな中、水木は現地の人々(トライ族など)
と交流し、彼らに受け入れられます。
これは水木が彼らを利用しようとしたり、
彼らの文化を見下したり、そんな気持ちが
一切なかったから
だろうと思います。

水木は自然と共に生きる彼らの姿に、
近代戦の狂気とは対極にある「真の幸福」
を見出し、「日本に帰りたくない
とさえ願いました。

結果的に、一度は日本に帰ってから
決めてもいいだろうという軍医の説得で
日本に帰国するのですが
その後何度も水木はラバウルを訪れ
自動車など様々なものを贈ったり
彼らと生涯の友情を築き合いました。


1945年8月、ポツダム宣言受諾。終戦。


今村と水木は二度目の対面を果たします。
部隊を巡回していた今村が
偶然水木を見かけたのです。
水木は片腕を失っていたものの現地人と
交流し、そこで食事をしていたため
他の兵士よりかなり栄養状態が良く、
今村から、この兵は血色がよい
と言葉をかけられました。
まあ、そういう今村も
まあまあふくよかではあったんですが。

水木はこの時の今村の印象を
私の会った人の中で
一番温かさを感じる人だった

と後に述懐しています。


今村の真骨頂はここからでした。

彼はポツダム宣言受諾後、
部下が不当な虐待を受けないよう
連合軍と粘り強く交渉し、
秩序ある降伏と復員を実現させます。

戦犯裁判に掛けられた部下たちを
必死で弁護し、全ての責任は自分にある
ということを主張します。
結局、オーストラリア軍による軍事裁判で
今村は禁錮10年の刑を受けます

今村はジャワ島で4年ほど刑を務め、
その後日本に帰国し、巣鴨プリズンで
残りの刑を務めることになるのですが、
ラバウルに残っている部下たちを思い
マッカーサーに現地(マヌス島)で
刑を受けたいと申し出ます。

今村の部下を思う心意気には
マッカーサーも感心し、
今村の願いを受け入れました。

その後、現地の収容所がなくなるまで
そこで刑を務め、その後日本に戻り
また巣鴨プリズンですごし、
刑期の終了とともにようやく出所しました。

しかし今村の反省や部下たちへの責任感は
それで終了したわけではなく

今村は自宅に小さな謹慎小屋を建て
そこで日々の生活を送り、
戦争の記録を残しました。
彼は何冊も本を出しましたが、
その本の売り上げは元部下や、
部下の遺族たちに贈られ、
彼自身は生涯質素な生活を送りました


一方水木しげるは日本に復員したのち、
漫画家としての道を歩み始めます
そして戦場で彼が体験した数々のできごとを
「妖怪」の物語として昇華させます。
そしてあの「ゲゲゲの鬼太郎」が誕生します。
​物語の中で、鬼太郎は日本を襲う
数々の凶悪な妖怪たちから人々を守ります。


​今村が「妖怪(戦争の狂気)」に屈せず、
理性と責任感に満ちた行動を取り続け
十万人近くの将兵を日本へ帰したからこそ、
水木しげるはなんとか復員でき
鬼太郎を生み出しました。

戦後の日本に「妖怪漫画」
という文化が根付き、
鬼太郎が日本を守ることができたのです。

今村均大将は間接的に
妖怪たちから日本を守りました。

​これこそが、私が今村均を「最高の軍人」
と確信する最大の理由のひとつです。

真の名将は戦わなくても国や人々を守ります。



ようやく今村均大将と水木しげる二等兵の
物語を書き終えることができました。
史料をわざわざ 他の図書館から
取り寄せてくださった(しかも無料で!)
江戸川区図書館に感謝いたします。

ここまでおつきあい下さったみなさま
ありがとうございました。

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