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2025年に聴いたベストアルバム10選

2025年の私的ベストアルバムについて書きます。
大体発売から1年遅れで聴くことが多いので、対象は2024~2025年に発売されたものになります。
特に印象に残ったものを選んだら切り良く10個になりました。

2023年以前発売のもので2025年に初めて聞いたものも多数ありますが、そちらは個別のレビューで触れていきます。

2024~2025年発売で消化出来ていない「気になるアルバム」はまだたくさんあります。
「Let God Sort Em Out / The Clips」とか、「DON'T TAP THE GLASS / Tyler, The Creater」とか。

それでは各アルバムを簡単に紹介していきます。


10位:Antidepressants / Suede (2025)

Antidepressants

イギリスのロックバンド「スウェード」の10作目のアルバム。

1989年結成、2003年解散、2013年再結成。
アルバムタイトルの"Antidepressants"は「抗うつ薬」を意味します。
テーマは、現代社会における不安や孤独などに焦点を当てています。

バンドは「前作はパンク、本作はポスト・パンク」と表現していますが、本作の方が全然パンクです。
ライブ映えしそうな疾走するギターサウンドがパワフルに鳴っています。
背徳感の点で初期の傑作には及ばないもの、再結成後の作品としては一番良いと思います。
思えばSuedeがデビューしたのは僕が社会人になった1989年。
2025年に瑞々しいSuedeが聴けるのはなんか嬉しい!

プロデューサーには初期作品を担当したエド・ブラーが再び起用され、レコーディングはライブレコーディング(一斉録音)で行われました。
結果この瑞々しい疾走感です。
早くライブが見たい!

お気に入りは"Come down and disintegrate with me"(降りて一緒に崩壊しよう)というパンチラインがSuedeらしい”disintegrate”です。
disintegrate

9位:MUSIC / Playboy Carti (2025)

MUSIC

アメリカのラッパー「プレイボーイ・カーティ」のメジャー3枚目のアルバム。

プレイボーイ・カーティは、デビュー当初「マンブル・ラップ(もごもごして何言ってるかわからないラップ)」と言われていました。
「ベイビー・ボイス」と言われる独特の発声法で、ラップ界でも異端のスタイルです。
有名な、レコーディングシーンのリーク映像があります。
衝撃映像(笑)ですので閲覧注意です。
Playboi Carti recording his ad-libs

前作"Whole Lotta Red"(2020)は「レイジ」と呼ばれるHIPHOPのサブジャンルを確立した傑作でした。
レイジは、TR-808のドラム&ベースにゲーム音楽の様なシンセがのったスタイルです。
シンセ音は荒く攻撃性があり、インダストリアル、特にカニエ・ウェストの"Yeezus"(2013)の影響を強く受けています。
本作は、前作で確立したレイジサウンドをさらに広く、攻撃的に推し進めた作品です。

プレイボーイ・カーティのラップスタイルは、リリックより過激さと音の響きに重きがおかれています。
ラッパーと言うよりはパンクロッカーです。
また、「ズィア~」とか「ワッ!」といった謎の掛け声が多用され、これがパーカションみたいになってます。
インダストリアル版「京城音楽」(YMO:1981)みたいだと思いました。

リリックは、ドラッグ、パーティー、セックスなどで、内容的にも技術的にも深みはありません。
でもそこが良いのです。
過激な表現とキャッチーな響きに振り切ったパンク精神を感じます。
なお、彼は事前にリリックを書かず、アドリブでレコーディングすることで知られています。

ビートは攻撃的でチープ。
でもそこが良いのです。
アングラ感があり、中毒性があります。

カリスマがあり、「カーティ教」と名付けたくなる様なディープに信奉するフォロワーが多いです。
僕も「カーティ教」の一人です。

本作の弱点を唯一述べるなら、長い(30曲、1時間17分)ことです。
高刺激を連続で受け続けると、マヒして、良いんだか悪いんだかわからなくなります。
僕は15曲づつ聞いて楽しみました。
間に一回ディアンジェロとかコモンとか挟んでリセットすると良いです。

お気に入りは、ゴスっぽい”CRUSH"とか、客演のケンドリック・ラマーが奇声を上げる"MOJO JOJO"とかです。
CRUSH
MOJO JOJO

時々無性に聴きたくなる一枚です。

8位:Aghori Mhori Mei / The Smashing Pumpkins (2024)

Aghori Mhori Mei

アメリカのオルタナティヴ・ロック・バンド「スマッシング・パンプキンズ」の13作目。

バンドは1988年結成、2000年に解散し、2005年に再結成。
再結成以降メンバー交代を繰り返してきましたが、本作はほぼオリジナルメンバーのビリー・コーガン(Vo,Gt) 、ジェイムス・イハ (Gt)、ジミー・チェンバレン(Dr)の3人で制作されました。
ダーシー・レッキーがいないのは残念、ベースはビリーが弾いているのだろうか?

アルバム・タイトルは読めません、もちろん意味もわかりません。
バンド側も説明しないのでネットではいろいろ考察されている様ですが、僕はクトゥルフ神話みたいなもんだと思って受け入れています。

本作は「原点回帰」を謳った作品で、轟音の圧搾ギターサウンドがたっぷりと聞けます。
ヘヴィでエモいスマパンが返ってきました。
ニューウェイブ味は弱め、ゴス味はやや弱めのストレートなハードロックです。
雰囲気は"Siamese Dream”(1993)の頃の様な感じです。

ビリーの駄々っ子の様なシャウトは健在。
エモいです。
今回はジミーのドラム・チューニングがちょっとローピッチ気味で、それによりハード・ロック感が増しています。
僕はジミーのカンカンしたスネアが好きだったのですが、コレはコレで凄く良いです。

全10曲約44分というコンパクトさも良いです。
弛みなく通して楽しめます。

お気に入りは、戦争を擬人化しその目線で中東を中心とした紛争の世界を描いた(と僕は解釈しました)、"War Dreams Of Itself”です。
War Dreams Of Itself

来日公演行きたかったなぁ。

7位:Brat / Charli XCX (2024)

Brat

イギリスのアーティスト「チャーリーXCX」の6枚目のアルバム。

アーティスト・ネームの"XCX"は、手紙の最後に書く"XOXO (ハグとキス)"を変化させたものとのことです。

Charli XCXはクラブシーンで活躍するアーティストらしいです。
クラブミュージックをほとんど聴かない僕は彼女のことを全く知りませんでした。
本アルバムは2024年のグラミー賞で3部門を獲得したということで、聴いてみることにしました。

本作は、クラブシーンを背景とした攻撃的なエレクトロ・ミュージックにポップな歌がのった作風です。
空気感としては、90年代のレイヴシーンを現代版に再構築した様な感じです。

はじめはピンと来なかったのですが、聴き込んでいるうちにジワジワとキました。

まずシンセの音が厚くて攻撃的。
そしてミニマルな繰り返しと微妙な差分で、ウネりの快楽性があります。
ちょっとケミカルブラザーズアンダーワールドを思わせます。
そこにポップな歌が乗って、なんか新しい別物になってるのが凄い!

アンダーグラウンドの手法で曲調はどメジャー。
気づけば中毒になっていました。

お気に入りは"Von Dutch"です。
ウネるノコギリ波のシンセがカッコいい!
Von Dutch

6位:GNX / Kendrick Lamar (2024)

GNX

アメリカのラッパー「ケンドリック・ラマー」のメジャー5枚目のアルバム。
自身で立ち上げたレーベルであるPGLangから出す初めてのアルバムとなります。

僕が今年になってHIPHOPに目覚めるきっかけを作ってくれたのがケンドリック・ラマーでした。
音楽としての面白さに加えて、HIPHOPのリリックの深さを教えてくれたアーティストです。

そのケンドリック・ラマーの最新作は、リリックの深さ、ラップの快楽性、音楽の良さが詰まった見事なエンタテインメントです。

関係者からのリークによると、このアルバムを作る際に80〜100曲近い曲がレコーディングされたそうです。
そこから厳選された12曲です。
トータル・アルバムとして実に良くできていると思います。

特にお気に入りなのは、SZAを客演に迎えた"gloria"です。
gloria
ノリと攻撃性で言えば"squabble up"もカッコイイ!
squabble up

以前このアルバムの詳細なレビューを書いたので、良かったらそちらも眺めて見て下さい。

5位:Songs Of A Lost World / The Cure  (2024)

Songs Of A Lost World

イギリスのロックバンド「ザ・キュアー」の14枚目のアルバム。
前作"4:13 Dream"(2008)から実に16年ぶり。

ダークでゴシックな路線の作品で、"Disintegration"(1989)や"Bloodflowers"(2000)を思わせます。
前作が生々しいサウンドに重きをおいた作りだったのに対し、本作は情念に重心が置かれています。
このヘヴィでウネリのあるサウンドを待ってました!
"Disintegration"にはやや及ばないものの、"Bloodflowers"に並ぶ傑作であると思います。

僕を含めた多くのファンが、1曲目"Alone"の3分を超える長いイントロを聴いて、「コレだよコレ、待ってました!」と思ったことでしょう。
あと「全然歌はじまんね〜(泣)!」も。

テーマは喪失、孤独、死、終末感と言った感じです。
相変わらずのロバート・スミス節です。

サウンドは、前作までで獲得したヘヴィでクリアなサウンドからやや揺り戻し、ディレイがバリバリに効いています。
ヘヴィさを残しながら、幻想的な混沌の美学があります。
そして今回はベースのサイモン・ギャラップが凄く良い!
これまで以上にサウンドの核として、ウネリ、暴れ回っています。

全曲良いです。
特にお気に入りは"Warsong"や"Endsong"ですが、ここでは一番キャッチーな"Drone:Nodrone"を紹介します。
Drone:Nodrone

曲のストックはまだあるらしいから、もしかしたら短いターンで次回作が聴けるかも?
ちょっと期待。

4位:God Does Like Ugly / JID (2025)

God Does Like Ugly

アメリカのラッパー「JID(ジェイアイディー、まやはジド)」の4thアルバム。
前作"The Forever Story”(2022)から3年ぶりのリリース。
"The Forever Story”も大傑作なので、いつかレビューを書きたいと思います。

アーティスト・ネームのJIDは、「そわそわした(Jittery)」行動から祖母につけられたニックネームをもとにしたもの。

JIDはの特徴は、内省的なリリックと驚異的なラップスキルです。
特に、多彩な声色と変幻自在なフロウが凄いです。
楽曲は玄人好みの渋いプロダクションが多く、じっくり何度も聴きたくなる音楽を作ります。

個人的にはJIDの声がすごく好きです。
抑圧されたようなクセのある声色で、一般的には良い声とは言わないのでしょうが、なんか胸にクるんだよね、この人の声。
例えば、前作"The Forever Story”の"Kody Blu 31"なんてすごくいい。

本作では、信仰、同調圧力、ギャングスタ・ライフ、などさまざまな視点から「醜さ(Ugry)」が描かれます。
その中で、自身の経験に即したリアルな思いや痛みが語られます。

本作は15曲構成です。
はじめの13曲で様々な視点からの醜さを語り、14曲目"K-Word"(KはKarmaのK)でその醜さを総括します。
様々な醜さの根源はカルマであり、カルマから抜け出すことで浄化される、というストーリーです。
15曲目はリスナーに向けた愛と感謝になっています。

テーマをサラッと語ってしまうと「ふ~んそうなの」なのですが、13曲積み重ねてきてからの14曲目"K-Word"を聴くと、すごい感動とカタルシスがあります。

サウンドは、各曲のテーマに合わせて多彩です。
ゴスペル+トラップ・ビートの2曲目”Glory"、工場の労働歌の様な3曲目"WRK"(Work)、ストリートの緊張感をどこか非現実的な浮遊感で表現する5曲目”G'z"(GはGangstaのG)、アトランタ(スケートパークが多い)のナイトライフを描きスケートリンクの疾走感が伝わる7曲目"SK8"(skate)など、サウンドにふり幅があります。

JIDのラップは本当に素晴らしい!
頻繁に声色やケイデンスを変え、様々な想いをフロウで表現しています。
ここまで表現力のあるラッパーってなかなかいないんじゃないでしょうか。

お気に入りは、名声を求める心と苦悩を語った”Glory"、デート中に元カノのことを考えてしまう"No Boo"などです。
Glory
No Boo

正直言うと現段階でまだ消化しきれていません。
現段階で名作ですが、おそらく今後、僕の中でどんどん評価が上がっていく作品だと思います。

3位:Alligator Bites Never Heal / Doechii (2024)

Alligator Bites Never Heal

Doechii(ドーチー)はアメリカのラッパー兼歌手で、ケンドリック・ラマーを輩出したTop Dawg Entertainment(TDE)の所属です。

本作"Alligator Bites Never Heal"は、2024年のグラミー賞で最優秀ラップ・アルバム賞を獲得しています。
なお、同部門で受賞した女性アーティストは、ローリン・ヒル、カーディ・Bに続いて3人目です。
ラップも歌もイケる感じは、まさにローリン・ヒルを思わせます。
また、このアルバムはミックス・テープで、実はまだ1st.アルバムを出していません。
ミックス・テープで受賞!?凄い!
1st.アルバムが楽しみです。

Doechiiはまずラップが素晴らしいです。
ブライトで張りのある声と、エネルギッシュでテクニカルなフローが気持ち良い。
リリックも、個人的な体験と社会課題への対比があり、隠喩やダブルミーニング、言葉遊びが多彩です。
テーマは「自らを主張し力強く生きていく」といった感じです。

また、Doechiiはラップも上手いが歌も凄く良いです。
このアルバムでは約50%がラップ、約50%が歌です。

サウンドはいわゆるブーン・バップで、太いく切れの良いリズムと、ソウルに近い温かみのあるサウンドといったプロダクションです。
ブーン・バップとは、1980年代後半から90年代にかけ発展したヒップホップのサブジャンルで、温かみがありヘヴィでグルーヴィーなビートが特徴です。

特に僕のお気に入りなのは”WAIT"と"NISSAN ALTIMA"です。
WAIT
NISSAN ALTIMA

間違いなくこれからクるアーティストです。

2位:Hit Me Hard and Soft / Billie Eilish (2024)

Hit Me Hard and Soft

アメリカのシンガーソングライター「ビリー・アイリッシュ」の3枚目のアルバム。

ビリーは13歳の時、SoundCloudに兄のフィニアス・オコネルと共同作業した"Ocean Eyes"が話題となり、インタースコープ・レコードの子会社であるDarkroomからリリースし、デビューしました。
これも名曲なので一度聞いてみてください。
Billie Eilish - ocean eyes (Official Music Video)

22歳の現在も兄フィニアスとの協作は続いており、本作もフィニアスとの共同制作で作られました。

本作の特徴は、ビリーらしい透明感とヒネくれたたポップさが混在したバランスの良さです。
例えば、1曲目"SKINNY"のため息が出るような美しいバラードから、シームレスで2曲目"LUNCH"のロックテイストへ展開する感じなど見事です。
素晴らしい!

歌詞は、アルバム全体を通して、自己の内面や想いを独自の少しダークな世界観で表現しています。

プロダクションは、宅録っぽい親密さと、それでいて質感にこだわった音色の良さが際立ちます。
2曲目"LUNCH" のドラム音など「おっ」って思いますね。
曲調も、フォーク、ポップ、ロック、ヒップホップ、エレクトロを飲み込みながら、自分たち独自の音楽にしています。
この兄妹、このあたりのセンスは抜群です。

全体的にカームで控えめでありながら、ハードとソフトの、ポップとエモのふり幅があります。
フォークギターで始まる"SKINNY"、ロックテイストの"LUNCH" 、ジャジーな" L'Amour De Ma Vie"など、各曲はバラエティがあります。
それでいてアルバムのとして統一感を感じます。
これまでの2作のアルバムは、シングルの寄せ集めのような印象でしたが、本作は初めてのトータルアルバムと言えるのではないでしょうか。

僕のお気に入りは3曲目" CHIHIRO" です。
ジブリの「千と千尋の神隠し」に着想を得たこの曲は、なんといってもプロダクションが素晴らしい。
静かに始まり、後半はシンセが曲を飲み込んでいく感じが良いです。
参考:Billie Eilish - CHIHIRO (Official Music Video)

「このアルバムはきっとこの先長く聞くだろうな」と感じる名作です。

1位:Please Don’t Cry / Rapsody (2024)

Please Don't Cry

アメリカのラッパーRapsody(ラプソディ)の3枚目のアルバム。

Rapsodyの名前の由来は「狂詩曲」や「叙事詩の朗読」を意味する「rhapsody」から来ているらしい。
名前の由来が示す通り、彼女はラップを「リズムに乗せた詩(ポエトリー・イン・リズム)」と捉えており、リリックの内容や技法にこだわった精神性の高いラップを特徴とします。

本作の為に約360もの曲が作られ、その中から厳選された22曲が収められています。
珠玉の力作です。

サウンドは、ソウルを主体としたブーンバップで、ジャズ、R&B、レゲエなどからのサンプリングが多用されています。
どちらかと言うとメロウなトラックが多いです。

ラップは、リリック、フロウ共に技巧的で、テーマの精神性の高さと相まって、沁みいる様に聞き入ってしまいます。
テーマは「自分の為の自身のストーリー」で、その中で内省、自己開示、社会課題、信仰、女性へのエンパワーメントなどを表現しています。

全曲凄く良いのですが、僕が特に好きなのは、女性ラッパーへの差別を歌った"Look What You've Done"、エリカ・バドゥを客演に迎えた"3:AM"、ボブ・マーリーの"I Shot the Sheriff"をオマージュした"He Shot Me"、などです。
Look What You've Done
3:AM
He Shot Me

前2作も名作でしたが、本作はRapsodyの最高傑作だとと思います。
聴けば聞くほど僕の中で評価が上がっていく作品です。

追記:"Look What You've Done"で、裏で流れているコーラス部分(Da Da Da Da Da Da Da…)のメロディって、”The Roots"の"You Got Me"でエリカ・バドゥが歌った部分だと思うのですが、どういう経緯でインターポレーションになったんですかね?誰か知っている人いたら教えてください。

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