【Rosalía LUX考察 #2】Sexo, Violencia y Llantas | 地上と天界を行き来する者
To Rosalía fans around the world:
How does “Sexo, Violencia y Llantas” bridge the earthly world of MOTOMAMI and the divine world of LUX?
Let’s explore the hidden journey within this breathtaking opening track.
Please use your browser’s translation feature to read the full article.
『Motomami』から『LUX』へ。
Rosalíaのアルバム『LUX』(2025)の1曲目 "Sexo, Violencia y Llantas" は、地上と天界を行き来するような、美しく過酷な世界線を私たちに提示します。
彼女が描く「世俗と神聖の共存」とは一体何なのか。
この記事は、その圧倒的な引力の正体を探るための、僕なりの探求の記録です。
なお、この記事はあくまで僕の解釈であり、公式見解ではありません。
僕のフィルターを通したこの考察が、あなたに新たな視点をもたらすことを願っています。
ぜひ、ご自身の感性でこの楽曲のパズルを再構築してみてください。
また、この記事は長いので、気になるところだけを読み飛ばしていただいて大丈夫です。
ブックマークなどして、何回かに分けて読むのも良いかもしれません。
【マガジン現在地:2/20】
本記事は『LUX』全曲考察マガジンの一部となる、第一楽章 1曲目の解説記事です。
Ⅰ 📍○○○○|Ⅱ ○○○○|Ⅲ ○○○○○|Ⅳ ○○○○
アルバム:女性的神秘、変容、超越の感情的弧線
┗ 第一楽章:世俗と神聖の共存
┣ 1. Sexo, Violencia y Llantas 📍
| (世俗と神聖の共存)
┣ 2. Reliquia(献身)
┣ 3. Divinize(中心にいること)
┣ 4. Porcelana(自由への渇望と恐れ)
┗ 5. Mio Cristo Piange Diamanti(アガペー)
※本シリーズで記している楽章テーマは、Rosalía本人による4楽章構成の説明を踏まえたうえで、僕が歌詞・曲順・モチーフの流れから独自に整理した解釈です。
概要
タイトルの"Sexo, Violencia y Llantas"(セクソ、ビオレンシア・イ・ジャンタス)はスペイン語で「セックス、暴力、そしてタイヤ」です。
タイヤは、車やバイクのメタファーだと思います。
前作『Motomami』からのシングル”SAOKO"のMVではバイクを乗り回してました。
この曲は、前作『Motomami』から本作『LUX』への橋渡しの役割もあるのだと思います。
Motomamiはスペイン語で「バイク」を意味する MOTO(モト) と、「母」「女性の強さ」を意味する MAMI(マミ) を掛け合わせた造語です。
テーマと歌詞
この曲のテーマは「世俗と神聖の共存」です。
この曲では「セックス、暴力、そしてタイヤ」に象徴される世俗的な世界と、「きらめき、鳩、そして聖人」に象徴される精神的な世界(神の世界)を対比させ、世俗と神聖の共存を表現しています。
本曲はスペイン語で歌われます。
Verse1
Verse 1は本曲のテーマが歌われます。
[スペイン語]
Quién pudiera vivir entre los dos
この2つの間に住みたくない人がいるだろうか
Primero amar el mundo y luego amar a Dios
まずは世界を愛し、そして神を愛する
Quién pudiera vivir entre los dos
この2つの間に住みたくない人がいるだろうか
Primero amar el mundo y luego amar a Dios
まずは世界を愛し、そして神を愛する
Verse 2
Verse 2は、地上と天国の間に境界線はない、と歌われます。
[スペイン語]
Quién pudiera venir de esta tierra
誰がこの地上に来たのか
Y entrar en el cielo y volver a la tierra
そして天国に入り、地上に戻る
Que entre la tierra, la tierra y el cielo
地上と天国の間に
Nunca hubiera suelo
地面(=境界線)は決して存在しない
※この描写は、僕にはキリスト教における受肉・死・復活のイメージを遠く響かせるものに聴こえます。
もちろん、ここでRosalíaが文字通りキリストを歌っている、と断定したいわけではありません。
ただ、「地上に来る」「天国へ入る」「再び地上へ戻る」という動きは、地上と天界を完全に分けず、そのあいだを往還する存在のイメージを立ち上げます。
その補助線で聴くと、Verse 1の「この2つの間に住みたい」という願いは、単に世界と神のどちらかを選ぶことではなく、世俗と神聖を隔てずに生きる状態への憧れとして響いてきます。
僕にはそこに、キリストとの合一というよりも、キリスト的な往還性——地上と天界のあいだを開いたままにする存在への憧れが重なって聴こえます。
なお、これはあくまで僕の芸術的なメタファーとしての解釈であり、公式見解ではありません。
Verse 3
Verse 3では地上と天界が対比して表現されます。
[スペイン語]
En el primero, sexo, violencia y llantas
ひとつめの世界にはセックス、暴力、そしてタイヤ
Deportes de sangre, monedas en gargantas
血を浴びるスポーツ、喉に置かれるコイン
En el segundo, destellos, palomas y santas
ふたつめの世界にはきらめき、鳩、そして聖人
La gracia y el fruto, y el peso de la balanza
恵みの果実、そして天秤の重さ
※「血を浴びるスポーツ」は人生(世俗的な世界)の過酷さを表しています。
※「喉に置かれるコイン」は、僕には二重に響きます。ひとつは、歌手にとっての喉=声=音楽によって得るお金という、とても現実的な意味。もうひとつは、死者があの世へ渡るための通行料としてのコインのイメージです。ギリシア神話では、冥府の川を渡る死者が渡し守カロンに渡すコインが語られ、古代ギリシアでは死者の口にコインを置く葬送習慣もありました。歌詞では「喉」と歌われているので、ここでは厳密な神話解説というより、声・金・死後の通過が重なるイメージとして受け取っています。
※「恵みの果実」と「天秤の重さ」は、神の恵みと、魂の重さを量る審判のイメージを呼び起こします。この文脈で僕が連想するのが、天秤を持つ姿で描かれることのある大天使ミカエルです。ただし、歌詞にミカエルの名前が出てくるわけではありません。あくまで「血」「コイン」「恵み」「天秤」という流れから浮かび上がる、宗教的な余韻としての連想です。
Outro
OutroではVerse 1が再び歌われます。
Outroで「世界を愛し、そして神を愛する」と繰り返すことで、どちらも素晴らしく愛おしいことが強調されます。
[スペイン語]
Quién pudiera vivir entre los dos
この2つの間に住みたくない人がいるだろうか
Primero amar el mundo y luego amar a Dios
まずは世界を愛し、そして神を愛する
サウンドとプロダクション
この曲のプロデュースはRosalía、ノア・ゴールドスタイン、サー・ディランです。
サー・ディランはアメリカのプロデューサーで、ジャスティン・ビーバーなどの作品を手掛け、Rosalíaの前作"Motomami"にも参加しています。
冒頭のメランコリックなピアノからのチェロの質感がゾクゾクします。
そして、ピアノの対位法的に絡み合うようなストリングスが、どこかバッハを思わせます。
この冒頭でのピアノは、音階が上昇したり下降したりします。
まるで天界と地上を行き来するかのようなフレーズです。
途中ストリングスにディストーションのようなエフェクトがかかります。
おぉ、スゲェ!
からのクワイア(合唱団)の豪華な盛り上がりです。
くぅ~!
実に美しく、迫力があります。
本曲ではこのアルバムのテーマを示すとともに、プロダクションのヒントを与えてくれています。
一見オーセンティックなアリアですが、よく聞くと歌い方やプロダクションがR&B的です。
ボーカルが始まるときの豊かなブレス(息を吸う音)にも着目してください。
ココが凄く良いです。
この部分についてRosalíaは下記のように語っています。
言語、つまり「息」がいかに重要か、それがとても興味深いと思います。
結局のところ、呼吸こそが全てが始まる場所なのです。
だからこそ、アルバムの冒頭、ピアノのイントロの後は、まず呼吸から始まります。
それがアルバムで最初の人間の音なのです。
《コラム:大天使ミカエルについて》
歌詞の「天秤」は、僕には大天使ミカエルを連想させます。
ミカエルは、悪と戦う存在として知られるだけでなく、図像の中では天秤を持つ姿で描かれることもあります。
その天秤は、魂の重さを量る審判のイメージと結びついています。
この曲のVerse 3では、「血を浴びるスポーツ」「喉に置かれるコイン」「恵みの果実」「天秤の重さ」という言葉が並びます。
僕にはここで、世俗の暴力、死後の通過、神の恵み、そして魂の審判が、短いフレーズの中で一気に重なっているように感じます。
もちろん、これはミカエルがこの曲の明確なテーマだ、という断定ではありません。
ただ、この曲が「世俗と神聖のあいだに住みたい」という願いを歌っているのだとすれば、天秤を持つミカエルのイメージは、その二つの世界のあいだで揺れる魂を象徴する、ひとつの美しい補助線になると思います。

最後に
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
皆さんはこの曲をどう感じましたか?
音楽は開かれたナラティブです。
リスナーの数だけ解釈や感想があって良いと思います。
是非皆さんの感想をコメントや「スキ」で教えてください。
本シリーズでは、『LUX』の全曲を解説しています。
もしこの考察が気に入っていただけたら、ぜひ他の考察記事も覗いてみてください。
全記事はマガジンにまとめています。
Thank you for reading.
I hope you’ll join me next time as we continue the journey through LUX with “Reliquia.”
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