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【XG THE CORE 考察 #6】UP NOW | なぜ『UP NOW』は体が勝手に動き出すのか?

#upnow

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XGの1stアルバム『THE CORE』の7曲目に収録され、キュートでフェミニンな曲調が心地よい極上のクラブチューンR&B"UP NOW"。

実は、可愛いポップスやフェミニンなノリが本来は少し苦手な僕ですが、この曲には偏屈な耳を完全に溶かされてしまいました。

ローリン・ヒルへの美しいリスペクトや、多彩なリズムパターンで魅せるボーカルワークの凄さなど、遊び心のあるフレックス(自慢)でリスナーをエンパワーメントするこの曲を、日本の音楽オタク視点で徹底解説します。

長いので気になるところだけを読み飛ばしていただいて大丈夫です。


歌詞の和訳と解説

この曲は、自信と上昇志向、誰にも邪魔させない自由なマインドが力強く歌われます。
自分たちの前向きな姿勢の誇示と、リスナーに対するエンパワーメントです。

Chorus

[Chisa]
Going up now, up now
今上がってる、今上がってる

 自分たちが実績を上げ成功を収めている様を
 表しています。

Make 'em all mad 'cause I'm up now
奴らを怒らせる、だって私は今上がってるから

 成功はヘイターを生み、一部の妬みや怒りを持つ
 奴らが発生することを表現しています。

Driving uptown, uptown
アップタウンを走る、アップタウン

 成功者の町である高級街をドライブしている、
 またはそこに向かっている様です。
 「上がっている」の別な比喩表現です。

Baby in her bag, she a baller
絶好調、勝ち組

 "Bag"は、大金、または手に入れた成果を入れる
 ものを指すスラングです。そこから、"Baby in her
 bag"は、「絶好調」、「成功している」という意味
 の他、「自分の世界に入って集中している(ゾーン
 に入っている)」という意味も持ちます。ここでは、
 「成功している」と「ゾーンに入っている」の
 ダブルミーニングです。

 ”baller"はバスケットボールなどの選手を指す
 言葉です。"she a baller"は、「スタープレイヤー
 の様だ」という意味で、女性に対して「彼女は
 スゴい」「成功者だ」「やり手だ」と称賛する
 スラングです。さらに、目標を達成して羽振り
 が良い、尊敬に値する行動をしている女性に
 対して使われ、「勝ち組」を意味します。

[Hinata]
Yeah, I'm up now, up now
そう、今上がってる、今上がってる
Doing my dance, going up, down
自分らしく振る舞う、好きなように

 ヘイターにとらわれないということと、XGの
 重要なステートメントである"Breaking Boundaries"
 (境界をぶち破る)の両方の意味です。

 "Doing my dance"は直訳すると「私のダンスをする」
 ですが、「自分らしく振る舞う」「自分のペースで
 やる」というスラングです。
 また、この曲はおそらくクラブチューンのR&Bを
 イメージしており、"dance"と”up"を合わせると、
 フロアに「気分が上がる」「躍らせる」といった
 ニュアンスをもたらす効果が出てきます。
 よってここは、「自分らしく振る舞う」と
 「躍らせる」のダブルミーニングです。

Saying what now?, What now?
今、何か言った?何?
Baby, I'ma do what I wanna
ベイビー、私は自分のしたいことをする

Chorus

Chorus全体のニュアンスは、自分たちをフレックス(自慢)するというより、リスナーに対し「皆も前向きになって上がっていこう、自分らしく生きよう」というエンパワーメントな感じです。

Verse 1

[Juria]
Look at this, what a view
これを見て、なんて景色なの

 「なんて景色」は、実際の絶景が見える物理的な
 場所と、成功者としての景色という心理的な風景の
 ダブルミーニングです。

I'm a trendin' topic when I walk into the room
私が部屋に入ると注目の話題になる
Sittin' on a beach somewhere in the Malibu
マリブのどこかのビーチに座っている
When I'm crushin' with my girls
女友達と楽しんでるとき
they the ones I'm gonna choose, not you
私が選ぶのは彼女たちで、あなたじゃない

 「文句ばかり言うヘイターは相手にせず、前向きに
 努力する人間を評価する」ということです。

[Harvey]
Spoil me like royalty, like I'm a queen, yeah
王族のように甘やかして、女王みたいに、そう
Step up in it, then I kill it, RIP, yeah (Mm-hm)
私が本気でやれば、相手を圧倒してしまう、そう(うん、うん)
Independent, always winning energy like
自立して、いつも勝利のエネルギーを持ってる
At the peak, I don't need another scene (Never that)
頂点にいる、他の場面は必要ない(絶対にそんなことはない)

「自立してる」から「他の場面は必要ない」わけです。

Verse 1

非常に自信に満ち溢れ、上から目線です。
ですが、攻撃性ではなく余裕を感じます。

Verse 1の二人の歌い方は、歌唱とラップの中間です。

Pre-Chorus

[Chisa]
So tell me, what you want?
教えてよ、あなたは何が欲しいの?

 「何がしたいの?どうなりたいの?」という
 ニュアンスです。

Talking upper echelon, yeah, yeah
上流階級の話、そう、そう

 教えてほしいのは、大きなことではなく大きな夢の話、
 ということです。

High fashion in Milan (Look at that)
ミラノのハイファッション (よく見て)
Ooh, la-la-la
ウ~、ラララ~

 「ウ~、ラララ~」はおそらく、フージーズの
 "Fu-Gee-La"でローリン・ヒルが歌うパートの引用
 と思われます。
 ローリン・ヒルは、ラップもイケて歌も凄くて
 精神性も高い、フィーメールHIPHOP/R&B文脈の
 最高峰です。同じHIPHOP/R&B志向のXGがローリ
 ン・ヒルをオマージュするのは、さもありなん
 といった感じです。

[Maya]
Got my nails done, Went and got my hair done
ネイルも髪も、完璧に仕上げてきた
Everything did, I'm 1 up, 1 up, 1 up
全部完璧、私は1アップ、1アップ、1アップ

 "1 up"はゲームから来たスラングで、「誰かより
 優位に立つ」「出し抜く」といった意味を持ちます。
 ここでの"1 up"は「1ランク上にアップデート」と
 取れます。

A stunner, stunner, oh, I'm
とてつもなく魅力的な人、衝撃的、ああ、私は

 "stunner"は直訳で「衝撃的な」という意味ですが、
 "a stunner"はスラングで「とてつもなく魅力的な人」
 を指します。

Pre-Chorus

2曲目”GALA"ではリスナーをエンパワーしてアップデートしました。
ここでも、「ネイルや髪を仕上げて自らを"a stunner"に"1 up"」する表現を使って、「あなたも自らを"1 up"しよう」とリスナーをエンパワーしています。

Chorus

[Jurin]
Going up now, up now
今上がってる、今上がってる
Make 'em all mad 'cause I'm up now
奴らを怒らせる、だって私は今上がってるから
Driving uptown, uptown
アップタウンを走る、アップタウン
Baby in her bag, she a baller
絶好調、勝ち組

[Cocona]
Yeah, I'm up now, up now
そう、今上がってる、今上がってる
Doing my dance, going up, down
自分らしく振る舞う、好きなように
Saying what now? What now?
今、何か言った?何?
Baby, I'ma do what I wanna
ベイビー、私は自分のしたいことをする

Chorus

Post-Chorus

[Juria]
Up, up, up, up, up, up, up, Up now
上、上、上、上、上、上、上、今上がってる

[Harvey]
Going north, not south
南じゃなくて北に行く
Yeah, it's up, not down
そう、下じゃなくて上

[Chisa]
Up, up, up, up, up, up, up, Up now
上、上、上、上、上、上、上、今上がってる

[Maya]
Going north, not south
南じゃなくて北に行く

 「南じゃなくて北」は、地図では北が上、
 南が下だからです。

Yeah, it's up, not down
そう、下じゃなくて上

Post-Chorus

Verse 2

[Jurin]
I got that glitter and gold
私には輝きと金がある

 「金のアクセサリーが輝いている」と「自分自身が
 金色に輝いている」のダブルミーニングです。

Pop out, I'm strikin' a pose (Say cheese)
突然登場して、ポーズを決める(はいチーズ)
I'm sendin' X's and O's
キスとハグを送る

 "X's and O's"は、英語圏でメッセージの最後につける
 "XOXO"(キスとハグ)です。

Blowing a kiss, oh yes, I did, did, did, did
投げキッス、あぁそう、やったやったやったやった

[Cocona]
Tight fit, run it like it's fitness(Run it)
タイトな服、フィットネスみたいに走る(走る)

 "Tight fit"は、直訳で「タイトな服」ですが、スラング
 で「イケてる着こなし」です。
 "run it"は直訳で「走る」ですが、スラングで
 「支配する」ニュアンスを持ちます。

 "fitness"は「フィットネス」ですが、
 "Tight fit"(タイトな服)の文脈だと「引き締まった身
 体」も指します。

 よってこのラインは文字通りの意味と、「引き締まっ
 た身体とイケてる着こなしでファッション業界を支配
 する」といった言葉遊びになっています。

Baby, I'm a gift, Merry Summer-Christmas
ベイビー、私はギフト、夏のクリスマス

 「自分は冬はもちろん夏でもクリスマス・ギフトであ
 る」、つまり特別である、という意味です。
 またこの曲には、マリブ、ミラノと、世界中のリゾー
 ト地が登場してきました。
 「夏のクリスマス」は、南半球のリゾートまで連想で
 きます。そして、次のラインの「ビキニ」「日焼け」
 「砂」からはビーチリゾートが思い浮かびます。
 フィジーとか、ニューカレドニアとか、
 ゴールドコーストとかでしょうか。

Uh-huh, type shit, on bikini outfits
うんうん、まさにそういうこと、ビキニ姿でね

 "type shit"は"That's the type of shit I'm talking
 about”(それな、まさにそういうこと)の省略形で、
 主に若者が使うスラングです。

Getting whole lot of tan and a whole lot of sand
かなり日焼けして、砂だらけ

Verse 2

Jurinのパートは、突然現れて、ポーズを決めて、周りにハグとキスを送る様がイメージできます。

”XO"は3曲目"ROCK THE BOAT"にも出てきました。ShotGunDandyさんは、「もしかしてこの”XO"はザ・ウィークエンドが主催するレーベルの名前を指しているのかも?」と指摘しています。
さらに、4曲目”TAKE MY BREATH"にはザ・ウィークエンドの曲が2曲隠れている様に見えました。
このアルバムにはザ・ウィークエンドへのオマージュがいくつか隠れている、というのはあり得る解釈だと思います。

Pre-Chorus

[Juria, Hinata]
So tell me, what you want?
教えてよ、あなたは何が欲しいの?
Sexy, pull up nonchalant, yeah, yeah (Look at that)
セクシーに、すましてて登場する、そう、そう(ほら見て)
Time for a level up
レベルアップする時間

 後段の「1アップ」と同じで、リスナーへの
 エンパワーメントです。

Ooh, la-la-la
ウ~、ラララ~

[Hinata]
Got my make up, Went and got my game up
メイクも完璧で、実力もちゃんと磨いた
Everything W, I'm 1 up, 1 up, 1 up
全て勝利、私は1アップ、1アップ、1アップ

 "W”は”Win"(勝利)の省略形です。

A come up, come up, oh, I'm
成りあがっている人、ああ、私は

 "A come up”はスラングで「成りあがっている人」
 です。前のラインの「メイクも完璧で、実力も
 ちゃんと磨いた」とあわせると、「自分は努力を
 して這い上がってきた」というニュアンスです。

Pre-Chorus

Chorus

[Maya]
Going up now, up now
今上がってる、今上がってる
Make 'em all mad 'cause I'm up now
奴らを怒らせる、だって私は今上がってるから
Driving uptown, uptown
アップタウンを走る、アップタウン
Baby in her bag, she a baller
絶好調、勝ち組

[Chisa]
Yeah, I'm up now, up now
そう、今上がってる、今上がってる
Doing my dance, going up, down
自分らしく振る舞う、好きなように
Saying what now?, What now?
今、何か言った?何?
Baby, I'ma do what I wanna
ベイビー、私は自分のしたいことをする

Chorus

Post-Chorus

[Harvey]
Up, up, up, up, up, up, up, Up now
上、上、上、上、上、上、上、今上がってる

[Jurin]
Going north, not south
南じゃなくて北に行く
Yeah, it's up, not down
そう、下じゃなくて上

[Hinata]
Up, up, up, up, up, up, up, Up now
上、上、上、上、上、上、上、今上がってる

[Cocona]
Going north, not south
南じゃなくて北に行く
Yeah, it's up, not down
そう、下じゃなくて上

Post-Chorus

Chorus

[Juria]
Going up now, up now
今上がってる、今上がってる
Make 'em all mad 'cause I'm up now
奴らを怒らせる、だって私は今上がってるから
Driving uptown, uptown
アップタウンを走る、アップタウン
Baby in her bag, she a baller
絶好調、勝ち組

[Harvey]
Yeah, I'm up now, up now
そう、今上がってる、今上がってる
Doing my dance, going up, down
自分らしく振る舞う、好きなように
Saying what now?, What now?
今、何か言った?何?
Baby, I'ma do what I wanna
ベイビー、私は自分のしたいことをする

Chorus

Post-Chorus

[Jurin]
Up, up, up, up, up, up, up, Up now
上、上、上、上、上、上、上、今上がってる

[Hinata]
Going north, not south
南じゃなくて北に行く
Yeah, it's up, not down
そう、下じゃなくて上

[Maya]
Up, up, up, up, up, up, up, Up now
上、上、上、上、上、上、上、今上がってる

[Chisa]
Going north, not south
南じゃなくて北に行く
Yeah, it's up, not down
そう、下じゃなくて上

Post-Chorus

最後は、ChorusとPost-Chorusを繰り返して終わります。

この曲も、他の曲と同じく上から目線なのですが、それがフレックスでなくエンパワーメントになっているのが特徴的です。
このアルバムの多くの曲は、ベクトルがリスナーに向いています。

参考

この曲はネイティブが使う表現が多く、リリックのディティールを把握するのに苦労しました。
音楽やサブカル文脈での言葉遊びならある程度想像できるのですが、こういうのは僕は難しかったです。
そこでやはりShotGunDandyさんの解説動画が参考になりました。
SGDさん、ありがとうございます。

サウンドとプロダクション

プロデュースはJAKOPS、Chancellor。
作詞はJAKOPS、Chancellor、BENJMN、Feli Ferraro。
作曲はJAKOPS、Chancellor、BENJMN、Feli Ferraro、Tayorです。

曲調はシンセとトラップビートを骨格とした、軽快なクラブチューンのR&Bです。

歌詞は前向きな自己主張ですが、歌唱のニュアンスはすごくキュートでフェミニンです。
特に、オブリガート的に挟まれるワードが、女の子同士の会話の断片みたいで効いています。
(Nevеr that)とか(Say cheese)とか(Look at that)とか、ついつい耳を取られます。

こういうのって実は難しくて、スピリットがのっていない媚び媚びな感じだと「あ~、やってるね、コレ」と冷めてしまいます。
僕は本来、キュートでフェミニンな感じは苦手で恥ずかしくなっちゃうのですが、この曲はとてもお気に入りです。

XGはステレオタイプなテンプレートを高水準で提示する力が本当に凄い。
こうした、楽曲への精神性の込め方には、その人の姿勢が出ます。
パフォーマンスに向き合う姿勢まで徹底して鍛えてきたんだろうな、と想像できます。

キモはボーカルのリズムパターンですね。
Verse 1は16分音符のフレーズ、Verse 2は3連符のフレーズ、Post-Chorusは裏拍のフレーズが特徴的です。
こうした多彩なパターンが構造的に提示され、ずっと興味を離しません。

この曲の声の響きが凄くキュートで、ついつい鼻歌混じりで楽しく聴いてしまいます。
声フェチの僕にとっては耳に嬉しい曲です。

シンセに水中を移動するようなイメージがあり、"UP NOW"というタイトルと合わせて、深海から水面へ上昇していくような印象を受けました。
前曲の雰囲気から繋がるような感覚です。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございます。
大変お疲れさまでした。

この『THE CORE』考察シリーズでは、アルバムを1曲ずつ深掘りしています。

続きはこちらです。

シリーズ全体はこちらから読めます。

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