【XG THE CORE 考察 #5】HYPNOTIZE | なぜ「ピピッ、ピピッ」で目覚めるのか? 深海、催眠、夢に隠された中毒性
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XGの1stアルバム『THE CORE』の6曲目に位置し、アルバムの最深部に至る超名曲"HYPNOTIZE"。
聴く者をゾクゾクさせ、訳もわからず胸を締め付け、涙を流させるこの曲の「中毒性」の正体とは何なのか?
曲中で鳴る「ピピッ、ピピッ」という音は何なのか?
リリックに仕込まれた催眠的な言葉遣いから、「ピピッ、ピピッ」という音が担う役割まで、心理学的な視点から読み解きます。
読み終わる頃には、あなたの"HYPNOTIZE"視聴体験は540°くらい変わっているかもしれません。
なお、本記事はあくまで僕個人の主観と連想に基づく考察です。
公式の見解や、心理学的な証明を意図したものではありませんので、その点をご理解いただけると嬉しいです。
長文なので、気になるところだけを飛ばし読みしても大丈夫です。
ちなみに、僕はNLP(※)の初級資格と産業カウンセラーの資格を持っており、ほんのちょびっとだけ心理学をかじった門前の小僧です。
この曲の歌詞とプロダクションは、心理学をかじった人間から見ると、非常に理にかなっていて面白い点が多数あります。
(※)NLP(Neuro-Linguistic Programming:神経言語
プログラミング)とは、心理学や言語パターンをも
とに発展したコミュニケーション技法の一つです。
タイトルの"HYPNOTIZE"は「催眠術をかける」です。
この曲の舞台は深海のようです。
MVでは、宇宙から地球に到来したXGが、さまざまな深海の生物、海妖、海洋型宇宙人になったかの様に描かれます。
2曲目”GALA"では、XGはその魅力でMet Galaを制圧しました。
本曲では、その魅惑の力がリスナーに向けられます。
Chisaはこの曲について、下記のように語っています。
「この曲は、視線と雰囲気だけで聴く者をXGのリズムへと誘い込み、自信と魅力で包み込む。現実と夢の境界線が曖昧になり、徐々に催眠状態へと引き込まれていく感覚を描いています。」
歌詞の和訳と解説
僕の解釈ではこの曲は2層構造です。
第1層は、海妖らしきものが海で人を取り込む話です。
第2層は、XGがリスナーを魅惑する話です。
ここ押さえておくと、この曲の楽しみ方がぐっと深まります。
Verse 1: 逃れられない支配の幕開け
[Juria]
Hey
ねえ
You're runnin' from what you can't escape
あなたは逃げられないものから逃げている
Come my way
こっちに来て
I'll put you under some kind of state, astray
あなたをある種の状態にしてあげる、迷わせてあげる
「逃げられない」「来て」「ある種の状態にする」「迷わせる」と、深海の海妖からの逆らえない呼び声が届きます。
〘クトゥルフの呼び声〙です。
心理学的に見ると、「ある種の状態にする」という呼びかけ方はとても巧妙に感じます。
Juriaの歌声が実に素晴らしい!
ウィスパー気味であり、ややウェットで、ブレスにまでエモがのっています。
思わず引き込まれます。
多くの人がこのオープニングのVerseで心をわし掴みにされたのではないでしょうか。
僕もあやうくキュン死するところでした。
よく聞くと、"Come my way"の前ではブレスが聞こえません。
一方、他の歌い出しではしっかりブレスが聞こえています。
おそらく、"Come my way"ではブレスが入らないように歌われているか、録られています。
これにより"you can't escape"から"Come my way"まで緊張感が続き、まるで「休符が鳴ってる」かのような感じに聴こえます。
考えすぎかもしれませんが、実に繊細でこだわった空間プロダクションに思えます。
Pre-Chorus:催眠の宣言
[Jurin]
So watch me hypnotize you with my eyes
だからこの目であなたを催眠にかけるから見てて
[Chisa]
Make you fantasize about me tonight
今夜私のことを空想させてあげる
Pre-Chorusでは、Verse 1の「ある種」の状態が「催眠」であることが明かされます。
〘眠りの神〙です。
面白いのは、いきなり「催眠をかける」とは言わないことです。
まず「あなたをある状態にする」とだけ語り、その後で「それが催眠だ」と明かします。
心理学をかじった人間としては、この順番が妙に巧みで印象に残りました。
「今夜私のことを空想させてあげる」は文字通りの意味と、親密で誘惑的なニュアンスの両方に取れます。
Chorus: 魅惑の催眠状態
[Chisa]
I'm hypnotizing
私はあなたを虜にする
[Maya]
Hypnotizing
催眠にかける
[Cocona]
Side to side, got you hypnotized
左右に、あなたを催眠術にかけた
[Maya]
'Cause every time my clock, tick-tock like this
だって、私の時計がチクタク鳴るたびに
[Jurin]
Every little spell I cast, don't miss
私の小さな呪文はどれも外さない
[Harvey]
Always on top, top, top
いつだって主導権は私
[Chisa]
I'm hypnotizing
私はあなたを虜にする
[Cocona]
Got ya doing what I want, want, want all night
あなたを思い通りに動かす、一晩中ずっと
[Hinata]
Wake up to the click of sound
クリック音で目を覚ます
[JURIA]
Follow with your eyes
目で追って
Watch me, watch me hypnotize
私が催眠術をかけるのを見て
Chorusでは、「あなた」を催眠にかけて魅惑する様が表現されています。
宇宙から来た海妖は、「あなた」を深海の〘狂気の山脈〙にある〘ルルイエ〙に導き、〘宇宙からの色〙を投影します。
「左右に」「私の時計がチクタク鳴るたびに」は、催眠の時に懐中時計を振り子の様に左右に振る様子です。
「私の小さな呪文はどれも外さない」は、「ラップや歌唱における正確なフロー」の比喩です。
自分達のスキルがとても高いことを表しています。
「クリック音で目を覚ます」は催眠を解くときのきっかけの暗示です。
このラインは後のPost-Chorusで重要な役割を果たすので、覚えておいて下さい。
Verse 1〜Pre-Chorusでは抑えめでメランコリックな曲調でしたが、このChorusで爆発的に盛り上がります。
Verse 2: 魅惑の力に翻弄される「あなた」
[Chisa]
You'll be where I want you every night
あなたは毎晩私が望む場所にいる
You'll bе back to feed your appetite
欲望を満たすためにまた戻ってくる
Swirling, hypno, disc, illusion
渦巻く、催眠、ディスク、幻想
My command becomеs your reason
私の命令が、あなたの理由になる
[Maya]
In your consciousness
あなたの意識の中で
Now your mind is of no consequence
今あなたの気持ちは重要じゃない
I bet ya never seen a girl so confident
こんなにも自信満々な女の子見たことないでしょ
Cut the compliments, that's just common sense
褒め言葉はいらない、こんなの常識だから
Verse 2では、「あなた」が海妖の魅力に負け翻弄される様子が描かれます。
これは、XGがリスナーを魅了する様のメタファーでもあります。
Chisaパートの意味は、「あなたは欲望を満たすために毎晩戻ってくるが、その欲望は実は私の催眠指示である」ということです。
「渦巻く、催眠、ディスク、幻想」は良くわからないですが、「渦巻きで催眠をかけられたあなたは、毎晩私が望む場所である幻想のディスク(=XGの音楽)に戻ってくる」ということかもしれません。
Chisaのラップ披露は初めてじゃないでしょうか。
言葉を丁寧に置いていくようなフローが独特です。
このChisaのパート、凄く良いです。
MVで見せる、Chisaの歪んだ表情がたまりません。
海妖って感じで怪しい美しさがあります。
この眼には魔力があります、魔眼(evil eye)です。
Mayaのパートは、「あなたの気持ちは重要じゃない」、「褒め言葉はいらないこんなの常識だから」と自信に満ちています。
XGの自信に満ちたアートパワーを代弁しています。
Mayaのパートはいつも心地良く安定感があり、自然とライミングに耳がいきます。
"consciousness"、"consequence”、"confident"、"compliments"、"common sense"と、韻を踏むところのボーカルが、よく聴くとダブルトラックになって強調されています。
とても細やかなプロダクションです。
また、ChisaからMayaに移行するときにストリングスのようなシンセ音が加わります。
Chisaのパートではサウンドにスペースがありパーカッシヴでしたが、シンセが入ったMayaのパートは包み込むように滑らかです。
ビートとボーカルは明るく力強いのに、このシンセだけがメランコリックな音を鳴らしています。
この曲は明るさとメランコリックが波のように行ったり来たりして、リスナーの感情を揺さぶるのが本当に上手い。
Pre-Chorus(2回目):再び催眠の宣言
[Harvey]
So watch me hypnotize you with my eyes
だからこの目であなたを催眠にかけるから見てて
[Cocona]
Make you fantasize about me tonight
今夜私のことを空想させてあげる
2回目のPre-ChorusはHarvey+Coconaです。
ここでの二人の歌声も凄く柔らかくて良いですね。
この曲は全体的に声の質感にこだわって歌われているように思います。
MVではHarveyが巨大なビーカーの様なものに囚われています。
凶暴な未知の海洋生物が実験台にされている感じです。
Harveyは、堕天使(WOKE UP)、バーサーカー射手(HOWLING)、ゴキブリ星人(GALA)と、MVでは凶暴な役が多いですね。
MVのCoconaのシーンでは、〘ダゴン〙の触手が渦巻きへと変わります。
渦巻きには、古代海洋生物(アンモナイト)、DNAの螺旋、フィボナッチ数列(黄金比)、銀河系の形状、そして催眠といったイメージがあります。
そこから、原始としてのコア、生命のコア、法則のコア、銀河のコア、心のコアといったイメージが湧きます。

デザインとか勝手につけられたキャプションとか、
絶妙にダサくてちょっとツボ
MVの最後のシーンでは、深海でメンバーが下をのぞき込みます。あれは地球のコアを覗いているのではないでしょうか。
この曲は、このアルバムの最深部にして、アルバム・テーマを象徴する曲ではないかと思います。

そして、XGが地球に到来して深海で地球のコアを覗く事は、〘アブドゥル・アルハザード〙が予言していました。
Chorus(2回目): 再び催眠状態
[Cocona]
I'm hypnotizing
私はあなたを虜にする
[JURIN]
Hypnotizing
催眠にかける
[Hinata]
Side to side, got you hypnotized
左右に、あなたを催眠術にかけた
[Maya]
'Cause every time my clock, tick-tock like this
だって、私の時計がチクタク鳴るたびに
[JURIN]
Every little spell I cast, don't miss
私の小さな呪文はどれも外さない
[Harvey]
Always on top, top, top
いつだって主導権は私
[Chisa]
I'm hypnotizing
私はあなたを虜にする
[Cocona]
Got ya doing what I want, want, want all night
あなたを思い通りに動かす、一晩中ずっと
[Hinata]
Wake up to the click of sound
クリック音で目を覚ます
[Juria]
Follow with your eyes
目で追って
Watch me, watch me hypnotize
私が催眠術をかけるのを見て
Post-Chorus: [覚醒]XGからリスナーへの核となるメッセージ
[Hinata]
When you fall asleep, what do you see?
あなたが眠るとき、何が見える?
I know it's me
それは私だってわかってる
[Harvey]
Dreams when you're fast asleep
あなたが深い眠りに落ちたときの夢
It's all we have
それが私たちの全て
Post-Chorusのリリックとプロダクションが素晴らしいです。
まず、このPost-Chorusの歌詞を要約すると「夢で会おう、あなたの夢が私たちの全て」です。
そして、曲中ではこのPost-Chorusで「ピピッ、ピピッ」というクリック音が聞こえます。
このクリック音はいわば〘銀の鍵〙です。
Chorusにて「クリック音で目を覚ます」ことは既に示されています。
ということはおそらく、このPost-Chorusは「あなた」を覚醒させようとしているように僕には感じます。
これまでのVerse~Chorusでは、「あなた」を催眠にかけた状態が描かれてきました。
このPost-Chorusでは、「あなた」を一旦覚醒させ、「夢の中で会おう、あなたの夢が私たちの全て」と伝えられます。
重要なメッセージとして聴かせるために、一度「覚醒」の演出を挟んでいるように僕には感じます。
また、歌唱がウィスパーなのは、「あなた」がまだ半覚醒状態であることを比喩的に表現しているのだと思います。
起きかけの半覚醒状態は、夢と現実の境界がまだ曖昧です。
理屈よりも感覚が先に届く状態だと言ってもいいかもしれません。
だからこそ、このウィスパーは、「理解させるため」でなく「刻み込むため」に置かれているように、僕は感じます。
重要なメッセージだからこそ、心の深い領域に残るように演出されているのではないでしょうか。
だとするとこのPost-Chorusは、「夢の中で会おう、あなたの夢が私たちの全て」と、「あなた」の深層に語りかけています。
MVでは「あなたの夢が私たちの全て」と歌ったHarveyが、深海のポッドに閉じ込められる様な描写があります。


これは、「あなたの夢が私たちの全て」というメッセージが、「あなた」の心の深層にしまわれた事を、比喩的に表現しているのだと思います。
制作者がどこまで意識していたかは分かりませんが、これらのプロダクションは、心理学をかじった僕から見れば実に理にかなっていると感じます。
天才的な感性です。
Post-Chorusはこの曲の最重要パートです。
「夢の中で会おう、あなたの夢が私たちの全て」は、XGからリスナーへの核となるメッセージです。
メッセージ、ボーカル、プロダクション、心理学、全て噛み合っています。
実に素晴らしいパートです。
それにしてもHinataのウィスパーはヤバいですね。Harveyも素晴らしいですが、Hinataのそれはちょっと別格です。
ウィスパーなのに胸で響かせており、太くウェットです。
あまりのエモさにトリハダが立ちます。
Hinataは、こうしたシアトリカルな表現がずば抜けて優れているように思います。
Bridge: 映画のようなワンシーン
[Juria]
You wake and stare like you're lost in the room
あなたは目覚めて、部屋の中で迷子になったみたいに見つめる
[Hinata]
Too late, too bad, boy, you know what to do
もう遅い、残念、何をするべきかは分かってるよね
[Jurin]
Now you're playing my game, I keep you doing my favors
あなたは今私のゲームの中、私のお願いを聞き続ける
[Chisa]
Side to side, got you hypnotized
左右に、あなたを催眠術にかけた
このBridgeはまるで映画のワンシーンのようです。
下記のような様子がイメージできます。
Post-Chorusでは半覚醒の状態でしたが、Bridgeであなたは完全に目覚めました。
半覚醒で受け取ったメッセージ「夢の中で会おう、あなたの夢が私たちの全て」は、心の奥底にしまわれ意識には昇ってきません。
あなたは、「何か重要なメッセージを受け取った気がする」と迷子になったように部屋を見つめます。
すると海妖たちが現れ、あなたを再び催眠にかけます。
Chorus(3回目): 約束の成就
[Maya(Chisa)]
'Cause every time my clock, tick-tock like this (Every time we kiss)
だって、私の時計がチクタク鳴るたびに(私たちがキスをするたびに)
[Jurin]
Every little spell I cast, don't miss
私の小さな呪文はどれも外さない
[Harvey]
Always on top, top, top
いつだって主導権は私
[Chisa]
I'm hypnotizing
私はあなたを虜にする
[Cocona]
Got ya doing what I want, want, want all night
あなたを思い通りに動かす、一晩中ずっと
[Hinata]
Wake up to the click of sound
クリック音で目を覚ます
[Juria]
Follow with your eyes
目で追って
Watch me, watch me hypnotize
私が催眠術をかけるのを見て
最後のChorusではメンバーのオブリガート(合いの手的な歌唱)が入り、最高潮に盛り上がります。
Chisaのオブリガートでは、Mayaの「時計がチクタク鳴るたびに」に合わせて「私たちがキスをするたびに」と歌われます。
この部分では僕は、夢の中で二人が振り子の様にキスをしている様子を想像してしまいます。
「夢の中で会おう」という、無意識に対して伝えられた約束が果たされています。
これは、XGとリスナーの一体化を比喩的に表現しているのではないでしょうか。
そしてこのChisaのオブリガートが凄く良いんですよ。
アクセントがつく度にクレッシェンド(だんだん強く)して、その度に花が開くかのようなエモさがのります。
オブリガートなのに、メインメロディーを喰うほどの主役級の存在感があります。
まるでメインメロディーとオブリガートが、渦巻きのように絡み合っています。
歌声、プロダクション共に素晴らしい!
胸が締め付けられます。
凄く偏狭な事を言ってしまうと、僕はこのChisaのオブリガートを聴くためにこの曲を聴いていると言っても過言ではありません。
だってそうでしょう?
XGが我々リスナーの無意識に「約束」をそっと残し、「その約束は必ず守られる」と歌ってるんですよ!
そしてこのChisaの歌声ですよ。
この胸が締め付けられるような一瞬に、全てが凝縮されています。
最後はビートも消え、Juriaのボーカルだけで幕を閉じます。
歌詞全体を振り返ると、「催眠をかける」という表層のストーリーの裏で、胸を締め付けられるようなエモさを秘めています。
深海からの呼び声→催眠→覚醒(約束)→催眠(約束の成就)。
まるで短編映画の様です。
この曲は現代の〘ネクロノミコン〙であり、XGとそのクルーは〘Great Old Ones〙です。
とても感動しました。
参考
英語詩の解説、それもXGと言えばShotGunDandyさんです。
僕も本稿を書くにあたり、もの凄く参考にさせていただきました。
皆さんも良かったら見てみてください。
サウンドとプロダクション
プロデュースはJAKOPS、Chancellor。
作詞作曲はJAKOPS、Chancellor、Lukas Costas、Rence、Alex Schwoebel、Allegra Miles、Xansei、Kwonです。
曲調とグルーヴ
曲調はディスコをベースとしたテクノ/ハウスといった感じです。
懐かしくも新しく、派手でアッパーなサウンドです。
4つ打ちドラム+シンセのテクノ/ハウスサウンドですが、尖りよりも、柔らかなグルーヴが強調されています。
特にベースが効いてます。
裏拍だったり、シンコペーションしたり、グリッサンドしたり、曲にグルーヴを与えているのはベースです、ベースがキモです。
ベースプレイは”NOOGIE"となっています、韓国の方の様です。
エモとメロディー
曲調は明るいのですが、メロディには所々「泣き」が入ります。
XGのプロデューサー陣は、明るいメロディにメランコリックなニュアンスを入れ込むのが本当に上手い。
こういうのがエモいんだよなぁ。
ボーカルはめちゃめちゃ質感にこだわって歌われており、これがエモさを支えています。
衝撃的なのはサビメロです。
4分音符4つでちょっとづつ音階が上昇するだけ。
このシンプルさで、キャッチーかつ印象的なサビメロに仕上げるとは、なんという制作能力よ!
恐ろしく中毒性のあるメロディです。
僕の感覚では、このミニマルさはベートーベン交響曲第九番に通ずるところがあります。
第九の第四楽章のテーマは、ほぼ4分音符のみで構成され、音程の移動も極めてミニマルです。
作曲技法の限界を求めるクラシックにおいては、衝撃的なほど斬新な曲です。
名曲の佇まい
初めてこの曲を聴いた時、最初の"Hey, You're runnin' from what you can't escape"で訳もわからず涙が流れたのを覚えています。
この曲が始まって5秒、曲の本体が現れないうちに「あ、これ『持ってる』ヤツだ、完全に名曲だ」と確信していました。
Introだけで名曲を確信するときってあるでしょう?
例えばU2の"Sunday Bloody Sunday"って、イントロのドラムだけで超ド名曲だってわかるじゃないですか。
オーラを纏った名曲と言うものがあります。
こういうのって、「まだ音が鳴って無い」んじゃなくて「休符が鳴ってる」んです。
"HYPNOTIZE"はそう言うたぐいの曲だと思います。
初聴でも、歌詞なんか分からなくても、スピリットが伝わります。
よくぞ、よくぞここまで、という想いになります。
これぞ"THE CORE"です。
勝手なサイドストーリー
MVを見て、Harveyのシーンに何か物悲しく美しい印象を受けました。
これが凄く良くて、自分の中で勝手にストーリーが湧いてきました。
まずこのカットです。

巨大ビーカー内にはHarveyの同種族の人がいて、彼(彼女)は〘インスマウス〙化してしまう深海の呪いのようなものに侵食されています。
Harveyは同族の解呪にあたるのですが、この呪いは解く方法がありません。
別のシーンではHarveyが巨大ビーカーに入れられています。
Harveyもこの呪いに侵されてしまい、今度は彼女が解呪を受ける立場になります。
Harveyの呪いは徐々に進行しており、時々発作で凶暴になります。


最後のシーンでは、Harveyは自身を解呪不可と判断します。
これ以上呪いで自分自身を失う前に、自らを隔離して深海のポッドに閉じ込める決断をします。


シーンの順番と僕のイメージしたストーリーの順番が合わないし、自らを閉じ込めるシーンでは同族のインスマウス人の手が映っているので、僕のイメージしたストーリーはもちろん間違っています。
それでも僕は、この悲しく美しいストーリーが頭から離れません。
曲とMVが素晴らしいので、勝手にイメージが広がってしまいました。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
大変お疲れさまでした。
この『THE CORE』考察シリーズでは、アルバムを1曲ずつ深掘りしています。
続きはこちらです。
シリーズ全体はこちらから読めます。
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