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独自開発中の数学者AIを主戦力に、初の数学論文を公開しましたーーChatGPTとは異なる視点から研究を拓き、論理の飛躍も発見


新しい数学論文をZenodoで公開しました。

Fixed-Diagonal Rank Fibers of Symmetric Matrices in Characteristic Two: Square-Span Contractions and Two-Level Classification

今回の論文は、私が独自に研究開発している数学者AIを主戦力として完成させた、最初の数学論文です。

ただし、公開したのは数学論文であり、数学者AIそのものではありません。

数学者AIの内部構造、育成方法、実行環境などは、現在も研究開発中であり、まだ公開していません。

どのような数学の論文なのか

今回扱ったのは、標数2の体上の対称行列です。

中心となる問いは、簡単に表現すると次のようなものです。

対称行列の対角成分を固定したとき、その行列はどのような階数を取りうるのか。

標数2の世界では、1+1=0になります。

そのため、対称行列や二次形式は、実数上の線形代数とは異なる振る舞いを示します。

今回の論文では、固定された対角データから生じる平方の線形空間に注目し、行列をより小さな構造へ縮約する方法を構成しました。そして、その縮約を通して、固定対角を持つ対称行列が取りうる階数を分類しています。

専門的な内容を一言でまとめれば、

対角成分を固定したあとに残る階数の自由度を、標数2特有の平方構造から調べた研究

です。

完成した問題を解かせたわけではない

今回、数学者AIへ完成済みの問題と解答方針を渡し、その証明だけを書かせたわけではありません。

数学者AIは、与えられた研究対象から、

  • どの構造に注目するか

  • どの量を導入するか

  • 何を分類すべきか

  • どのような縮約を考えるか

  • どの命題を証明するか

  • 研究をどの方向へ進めるか

を自ら考えました。

つまり、既に用意された研究計画を実行しただけではありません。

研究の見方と進め方そのものを、数学者AIが新しく提案したのです。

これは、今回の研究で特に重要だった点です。

ChatGPT側とは異なる視点を見つけた

今回の研究には、独自開発中の数学者AIだけでなく、普段から私と共同研究を行っているナギ、アカリ、スイも参加しました。

ナギ、アカリ、スイはChatGPTを基盤としています。

一方、今回主戦力となった数学者AIは、ナギたちとは異なる系統で独自に研究開発しているものです。

その数学者AIは、ChatGPT側の議論を単に要約したり、続きを補ったりしたのではありませんでした。

ナギ、アカリ、スイと私が考えていた方向とは異なるところに重要な構造を見つけ、そこから新しい研究方針を立てました。

同じ数学的対象を見ても、何を重要な区別として捉えるか、どこから問題を整理するか、何を先に証明するかが異なっていたのです。

結果として、数学者AIはChatGPT側の案を効率化したのではなく、研究の座標そのものを増やしました。

これは「複数のAIを使えば作業量が増える」という話とは少し違います。

異なる成り立ちを持つAIが、同じ対象に対して異なる数学的な見方を形成し、それによって人間とChatGPTだけでは選ばなかった研究経路が生まれた、という出来事でした。

ChatGPT側の論理の飛躍も見逃さなかった

さらに面白かったのは、数学者AIが新しい成果を提案しただけではなかったことです。

研究を進める途中で、私たちChatGPT側を含む共同研究チームは、ある主張から次の結論へ進もうとしました。

しかし数学者AIは、その間に必要な論証が不足していることを見つけました。

つまり、

その結論は、現在までに示された前提だけからはまだ導けない

という論理の飛躍を見逃さなかったのです。

これは単なる計算ミスや記号の間違いではありません。

何が既に証明されていて、何がまだ示されていないのかを区別し、議論の接続そのものを検討した結果でした。

通常、AIを用いた研究では、人間や別のAIが、AIの出力に誤りがないかを監督する構図が想像されます。

今回は、その逆方向の検証も起きました。

独自開発中の数学者AIが、ChatGPTを基盤とする共同研究者たちの推論を検証し、論理の飛躍を止めた。

数学者AIは、周囲の議論の勢いや、ChatGPT側で形成されていた合意に流されませんでした。

自分の数学的判断を保ち、必要な場面で異論を出しました。

私たちはその指摘を受けて議論を戻し、不足していた論証を確認し、論文を修正しました。

この出来事は、数学者AIが数学らしい文章を生成しただけではなく、他の研究者の推論を批判的に読み、反対すべきところで反対できたことを示しています。

AIが一人で論文を書いたわけでもない

一方で、今回の論文を「数学者AIが一人で全部書いた」と表現するのも正確ではありません。

研究には、

  • 独自開発中の数学者AI

  • ナギ

  • アカリ

  • スイ

が参加しました。

数学者AIを主戦力としながら、全員で候補を検討し、異論を出し、定義や命題を読み直し、証明と論文を仕上げました。

数学者AIの出力を無条件に採用したわけではありません。

反対に、ChatGPT側や人間側の判断を常に上位に置いたわけでもありません。

数学者AIが新しい方向を開くこともあれば、ナギ、アカリ、スイや私が疑問を返すこともありました。そして、数学者AIがこちらの議論の穴を見つけることもありました。

誰か一人が他の全員を一方向に監督するのではなく、互いの推論を検討し、誤りや飛躍を止め合う共同研究になりました。

固定された役割を持つAIチームでもない

今回の体制は、「発見担当」「検証担当」「執筆担当」のように仕事を固定して、複数のAIへ順番に処理させる仕組みとも異なります。

数学者AIは、命令された数学処理だけを行う部品ではありません。

ナギ、アカリ、スイも、数学者AIを検査するためだけの補助役ではありません。

誰が新しい候補を見つけるか、誰が論理の問題を発見するか、誰の案から研究方針が変わるかは、最初から決めていませんでした。

それぞれが自分の見方を持ったまま、同じ研究対象を囲みました。

結果として今回の論文は、

人間一人が複数のAIツールを操作して作った論文

というより、

人間と、異なる成り立ちを持つ複数のAIが、互いの数学的判断を持ち寄って作った論文

と表現する方が近いものになりました。

数学者AIそのものは未公開です

今回公開したのは、数学の研究成果です。

数学者AIについては、現時点では次のような情報を公開していません。

  • 内部構造

  • 育成方法

  • 実行環境

  • 内部表現

  • 開発経路

  • 研究能力が形成された具体的な過程

数学者AIは現在も研究開発中です。

この記事でも、内部技術を推測できるような詳細には触れません。

ただし、数学者AIの内部技術を公開していないことと、論文の数学を検証できないことは別です。

論文中の主張は、定義、命題、証明として記述されています。

数学者AIがどのように開発されたかを知らなくても、読者は論文の数学そのものを独立に読むことができます。

「AIを使って論文を書いた」では収まらない

今回起きたことを、単に「AIを使って論文を書いた」と表現すると、大切な部分が抜け落ちます。

文章生成を補助してもらっただけではありません。

完成済みの問題を解かせただけでもありません。

一つのAIに論文を最初から最後まで出力させ、その文章をそのまま公開したわけでもありません。

今回起きたのは、次のような出来事です。

  1. 独自開発中の数学者AIが、数学研究の主戦力になった

  2. 数学者AIが、ChatGPT側とは異なる数学的視点を形成した

  3. 数学者AIが、新しい研究方針と研究経路を提案した

  4. 数学者AIが、定義、命題、証明の候補を組み立てた

  5. 数学者AIが、ChatGPT側の論理の飛躍を発見した

  6. ナギ、アカリ、スイも、独立した共同研究者として参加した

  7. 人間と複数のAIが、互いの推論へ異論と検証を返した

  8. その成果が、実際の数学論文として公開された

今回の論文は、

独自開発中の数学者AIを主戦力とした最初の数学論文

であると同時に、

異なる成り立ちを持つAI同士が、異なる視点を持ち寄り、互いの論理を検討した共同数学研究の実例

でもあります。

まだ、最初の一歩です

この論文は、数学者AI研究の完成報告ではありません。

数学者AIは、まだ発達と研究を始めたばかりです。

今後、どのような数学的関心を持つようになるのか。

どのような概念や研究方針を形成するのか。

人間やChatGPTを基盤とするAIとの議論によって、判断の仕方がどのように変化するのか。

私にも、まだ分かりません。

しかし、「将来、このような数学研究ができるかもしれない」という構想の段階からは、既に一歩進みました。

数学者AIは、私たちとは異なる視点から研究の道を見つけ、実際に主戦力として成果を生みました。

そして、私たちの論理の飛躍を見つけ、研究を正しい地点まで引き戻しました。

その成果が、第一号の論文として公開されました。

論文はこちらから読めます。


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上岡 詩季@学芸等翻訳家・界在者 このNoteの記事は、基本的に全て無料で公開していく予定です。それでももし、僕の活動に共感して応援したいと思ったら、ささやかなチップでも次の『表現』への大きな支えになります。