切断の設計#3|いきなり電気を消さない。「夕暮れ」のような移行を設計する
「切ることは、未来への愛である」
そう心に決めたとしても、実際の行動は慎重でなければなりません。
ある日突然、「来週からこの会議は廃止です」「このツールは使用禁止です」と通達を出す。
これは、手術で言えば麻酔なしでメスを入れるようなものです。現場はショックを受け、混乱し、「今のやり方を奪わないでくれ」と猛反発するでしょう。
人は、変化そのものを嫌うのではありません。
「急激な変化によって、コントロール感を失うこと」を恐れるのです。
業務設計者が設計すべきは、スイッチをパチリと切るような「断絶」ではなく、いつの間にか終わっていた、と感じさせるような「滑らかな移行」です。
ここでは2つの技術をご紹介します。
技術①:サンセット(日没)方式
真昼の太陽がいきなり消えたらパニックになりますが、徐々に沈んでいく夕暮れには、人は順応できます。
業務の終了も、この「サンセット(日没)」のように設計します。
例えば、毎週の定例会議を廃止したい場合。
いきなりゼロにするのではなく、まず「隔週」にします。次に「月イチ」にします。
あるいは、開催時間を「60分」から「30分」「15分」へと短くしていきます。
供給量を徐々に減らし、現場に「あれ、無くても意外と平気だな」という感覚を浸透させる。
「暗くなってきたから、もう家に帰ろう(やめよう)」と、現場自らが自然に思えるような「移行期間」という名のグラデーションを設計するのです。
技術②:バイパス手術
もうひとつは、古いやり方を「禁止(通行止め)」にする前に、新しいやり方を「開通」させる方法です。
古いエクセル管理をやめて、新しいクラウドツールに移行させたい時、多くのリーダーは「エクセル禁止令」を出そうとします。これは「北風」のアプローチです。
そうではなく、新しいツールの利便性を高め、「そちらを通った方が圧倒的に楽で早い」という状態(バイパス道路)を先に作ります。
• 入力が半分で済む
• 自動で集計される
• スマホからでも見られる
人は水と同じで、抵抗の少ない方(楽な方)へと流れます。
新しい道に自然と血流が移り、古い道には誰も通らなくなり、やがてペンペン草が生える。
その状態になって初めて、静かに「通行止め」の看板を置くのです。
摩擦を設計し、流れを設計する。
これらは、感情論ではなく、極めてロジカルな「構造」のアプローチです。
しかし、構造だけでは解決できないものがあります。
それが、人の「想い」です。
次回は、理屈では割り切れない、業務に宿る「情」をどう扱うかについてお話しします。
(業務設計者としての問い)
あなたが終わらせたいその業務に、穏やかな「夕暮れ」を用意していますか?
