起承転結≒PDCAサイクルに変換でき、解像度を上げると三幕構成に。漫画や小説、脚本に使える三幕構成やいろんな考え方を並べてみたら基本構造は同じっぽい
40代半ばで商業漫画連載を目指すオッサンです。
自分自身は”仕組みを解明する”ことが好きです。
直感的に理解することは苦手で、事象をかみ砕いて再解釈し、システムを組む…そういうのが得意なタイプなのです。
なのでキャラクターの心をシステマチックに解決しようとするなど、心無いことを試してみたりしてます(だからキャラ作りが苦手なんでしょうね…)
今回は、なかなかとっつきづらい「創作論」のうち、「三幕構成」を分解し再解釈してみたいと思います。
先に示しておくと、「三幕構成」とは起承転結、またはPDCAサイクルのことであり、解像度に差はあれど基本は同じではないかという考察です。
「創作論なんてなくてもできらぁ!」「自分の才能を信じたいんじゃ」って人も多いと思うのですが、好き勝手描ける同人誌では無視できても、漫画の商業連載を目指すならば「三幕構成」の理解は避けて通れないと思います。
また、若い人に比べると編集者からは完璧を求められがちなオッサンなので、できるだけ多くの知識を取り入れておく必要がありました。
それに若い人でも「わかってるな」と思われたほうが得だと思うんですね。
「ある程度描いて実動している方」や、「新人に三幕構成を勧めてるけど違うアプローチがないかな」と考えてる編集者の皆さんの参考になれば幸いですが、私なりの考えなので解釈が正しいかはわかりません。
とりあえず文字や図表にすることで「見える化」を試みるとともに、脳みその棚卸作業を記事に残します。
起承転結の「承」ってなんね?
ひょんなことから「キャリア教育」の講話を依頼されたことがあります。
私はキャリア教育の講座をした事がなく、また、内容がよくわかっていませんでした。
キャリア=経験とした場合、自分の経験談や自慢話をしても何の役にもたたないだろうと思ったので、私のモットーである「PDCAサイクルを回す」にまつわる話を、本業の刺繍製品製造や釣り、漫画描きに絡めて話すことにしました。
後に中学生たちから感想文をいただきましたが、それなりにウケは良かったと自負しております。
その講話の冒頭、島の中学生に問いかけたのが「起承転結の『承』ってなんね?」でした。
生徒からは文字通り「つなぐ」と回答されました。こういう時に、恐るおそる回答があるのは嬉しいですね。
そこでオッサンは、いじわるな質問をしました。
「なんでつなぐ必要があるの?起きて転んでオチじゃダメ?」と
「さぁ~」みたいなリアクションで困惑していたところ、オッサンは続けます
「文系の脳みその人は、起承転結の承は雰囲気でわかるが、理系の私のような人間は意味がわからないと効率で考えちゃうから”承要らなくね?”ってなっちゃう。そこで起承転結をPDCAサイクルに置き換えて考えると…」
PDCAサイクルとは「計画」「実行」「点検」「改善」で事業等を進める考え方なので
起(計画):必要性が出た。アイディアを考えた
承(実行):やってみたら
転(点検):その過程で問題が生じたので
結(改善):問題を解決して計画を完遂した
と紐づけることができます。
つまり、起承転結≒PDCAサイクルであり、承(実行:やってっみた)がないと過程がないため問題が生じない。
だからやってみた(承)は大事なのだと理解できたのです。
(「≒」としたのは、同じと言い切る自信はないためです。)
キャリア教育講話では、漫画を描いていることも紹介していたので、PDCAサイクルを物語に当た話もしました。
P(計画):サイヤ人が攻めてくる。地球が危ない。鍛えて迎え撃ったろ。
D(実行):戦ってみたらサイヤ人めちゃ強い。ヤムチャとかやられる。
C(点検):このままじゃ勝てねぇなぁ(全滅&地球の大ピンチ)…せや
A(改善):くい止めチーム、ドラゴンボール収集チーム、修行して強くなるチームに別れて戦ったろ(問題解決/勝利)
こんな感じですね。
中学生男子の食いつきは最高でした(笑)
とこのようにPDCAサイクルは応用範囲が広いんですね。
そして、「起承転結」のほうが理解が深まるのか、「PDCAサイクル」のほうが理解が深まるのかは自分次第(脳の作りが影響していると思われる)なので試して活用してほしい、という内容の講話だったのです。
※なお、物語にPDCAサイクルを応用する場合、PDCAサイクル+オチや次課題という考えもできそうだったので、下図にまとめました。

昔から物語は「起承転結」だと言われます。
これをPDCAサイクルに置き換えて考えることもできますが。PDCAサイクルも起承転結も、物語を作るには解像度が低すぎてどう手をつければ良いのかわからない。
ここで登場するのが、「三幕構成」です。
起承転結(PDCAサイクル)の解像度を上げる
私は三幕構成については、難しい創作論の本を読んだわけではなく、ウィキペディア程度の把握しかありません。ウィキペディアで十分活用できるほど、わかりやすい仕組みだったためです。
また、私の解釈ですが三幕構成とは「国や言語、価値観の違いを越えてわかりやすく、面白いと感じるリズム」ととらえています。
「なんで心地よく面白いのか」までは説明できないのですが、統計的に調べていったら三幕構成にたどり着いたとか、そういう成り立ちなのかもしれません(※ウィキペディアレベルなので、そこまで深掘りで着ていません)。
知らない人にとっては得体のしれない三幕構成ですが、実際は「1幕目」「2幕目前半」「2幕目後半」「3幕目」があるので、起承転結やPDCAサイクルのように4つのパーツで構成されています。
なので、なぜ三幕構成と呼ばれているのかイマイチ理解ができないのですが、皆に習って三幕構成と呼ぶことにします。
つまり「三幕構成≒起承転結≒PDCAサイクル」なのですが、物語作りにおいては三幕構成のほうが解像度が高いです。
たとえば
・1幕目(起)の早い段階で概要を見せ、事件を起こして観客(読み手)を釘付けにする
・2幕目前半(承)で小さなピンチを作る
・2幕目後半(転)でどん底に叩き落とす
という具合です。
「起承転結≒PDCAサイクル」において、承は「実行(やってみた)」としました。
行動しなければ転ばないよね。だから行動は大事と考えたのですが、主人公らがだらだらと行動していただけでは読者(視聴者)は面白くないですよね。
三幕構成では、2幕目前半(承)に「小さなピンチ(複数でも良い)」を設定して「なんか上手くいきそう」というワクワク感を見ています。
ここで「承(しょう)」≒小(しょう)ピンチ」と覚えると、物語作りにおける起承転結の承の理解が深まります。
ちなみに、どん底に叩き落とされる2幕目後半(転)より大きなピンチを作ってはならないし、逆に2幕目後半(転)は小ピンチより明かなピンチを設定する必要があります。
転のピンチが小ピンチ程度だったり、小ピンチより弱かったりしたら後半面白くないのは目に見えてますね。
ピンチを応用することはできそう
私は経験を活かして釣りの漫画を描いていますが、「魚が仕掛けを見つけ、ヒットし、やりとりする」という釣りの醍醐味を「転(大ピンチ)」に置き換えられることに気付きました。ピンチにもいろんな形態がありそうです。
また、三幕構成の「ピンチ」を「チャンス」に変えると、コメディが成立します。
たとえば…
起:古い模型屋に立ち寄ったら
承(小チャンス):レアな模型を見つけて興奮する
転(大チャンス):在庫をたくさん発見したので
桔:大儲けしようとしたら上司にバレる
こち亀の出来上がりです。
コメディは失敗を楽しむ作品なので、三幕構成の「ピンチ」を「チャンス」に置き換えるだけで成立しちゃいそうです。
参照したい書籍やアカウント
三幕構成をもっと深掘りしたいなら、多くの漫画編集者が参照しているとされる「SAVE THE CATの法則」の15ビートシートなども参照してみてください
私は外国人特有の言い回しに慣れず、15ビートシートの理解は浅いのですが、著者のブレイク・スナイダー氏は「三幕構成では不十分だったので15ビートシートを作った」と書かれていますから、15ビートシートはより解像度の高い三幕構成と言えそうです。
ツイッター(X)で小説に関する情報発信をされており、定期的なWEB講座をされているDK先生も「15セクション」という仕組みを開発し提唱されています。
スランプとまでいかなくても、人間なんでも“飽きる”。
— DK (@game_sennin) December 19, 2025
それは創作方法も例外じゃない。
私はストーリー構成に15セクションを提唱してるし、基本的にはそれを使ってるけど“飽きる”から、それこそ榊先生が「起承転結をこんなふうに考えて書いてる」みたいな話を… https://t.co/chG99UUZji pic.twitter.com/nv6UbmRSIQ
15セクションはより解像度を上げた作りの印象で、基本は三幕構成なのだけど細部で迷ったときに15セクションを参照する、という感じで活用させていただいています。
また、樹崎聖先生の漫画教本「10倍面白くなる漫画創作論(2025.7)」では、「三幕式構成」として
・(読者を)期待させ
・(読者を)焦らし、盛り上げ
・(読者を)期待以上の満足を与える
と、既存の三幕構成のようだけど少し違った切り口で解説されています。
それぞれの関係を図に整理してみました。ごちゃごちゃしていますが、拡大するなどして参照してみてください。
読み方や言い方が違えど基本的構造はほぼ同じなので、理解が進む手法から深掘りしてみることをお勧めします。

「そんな物に頼らず、オリジナルで構成を作りたいんじゃ」って人もいると思いますが、誰かに漫画を読んでもらって「わかりにくい」「意味がわからない」とリアクションされた事があるなら、騙されたと思って三幕構成などを取り入れてみてください。
ちゃんと取り入れることができれば「わかりやすい」「心地よい」構成になると思います。
幼児向けアニメもほぼ三幕構成だった
私が三幕構成=わかりやすいと言いきるのには、私なりに試してみたことがあるためです。
幼児向けアニメのアンパンマンを視聴しながら、ストップウォッチを手に、時間とともに出来事や登場人物をメモしていったのです。
結果、ほぼ三幕構成でした。
「ほぼ三幕構成」としたのは、冒頭部分のゲストキャラが登場し世界観を示す第1幕(起:計画)が極端に短いためです。
おそらく幼児は集中力が続かないので、第1幕を短くして、誰もが知っているアンパンマンやバイキンマンを登場させるアレンジがなされているわけですね。
このように三幕構成を踏まえたうえで、対象者の事情にあわせて応用するというのはアリと思います。
新人のデビューは、「前提知識ゼロの読者」を相手にする超難易度の高い作業なのかも
三幕構成を応用する場合、読者の年齢層というよりも「どの程度前提知識を有しているか」に注意する必要がある気がします。
例に出したアンパンマンの場合、幼児は「アンパンマン」「バイキンマン」というキャラクターを前提知識として持っています。
アンパンマンと同様にプリキュアシリーズの1作品を分析したのですが、私が視聴したのは二幕目前半(承)に「小ピンチ」が設定されていない回でした。
つまり基本的な起承転結であり、承の部分に「やってみた(楽しんだ)」が入っています。ちなみに小ピンチはなくとも、悪い奴が登場する前フリは設定されています。
これは「プリキュアは(二幕目後半の転に)悪い奴が出てきて退治する」という前提知識が視聴者にあるため、二幕目前半(承)ではあえてピンチは作らずに「楽しい」に特化した構成にアレンジされていると見ることもできました。
機動戦士ガンダムのように息の長いシリーズであれば、全くガンダムを見たことがない人でも「シャアは赤くて3倍で仮面をかぶっている」という前提知識を得ていたりします。
「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(映画版,2025)」では、前半のごく早い段階でシャアを登場させることで、既存のファンを驚かせつつ、初見の人にも宇宙世紀の難しい世界観の入り口を作っています。
いつか廃れると言われ続け、今なお人気が高い作品群に「異世界転生もの」があります。
編集者さんからは「死の向こうにある身近な世界だから人気なのでは」と教えてもらったのですが、私なりの分析としては「世界観が前提知識として共有されているので理解が早くタイパが良い」、つまりコンテンツにあふれた現代人的と相性の良いプラットフォームなのではと私なりにとらえています。
ちなみに私は異世界もの=魔法や設定でなんとでもなるだろうという感触があり、いまいち没入できてないです…唯一「GATE」は好きです。自衛隊ものとして楽しんでいるふしがあります。
一方で、私のような漫画家志望がオリジナル作品を描く場合、読者が前提知識ゼロの状態から興味を持ってもらう必要があります。
そのさい、少しでも「わかりにくい」があると、興味を持つ前に読者はドロップアウトしてしまう恐れがあるのです。
担当編集者が付くまで、たは担当編集者がついてからデビューするまでの道のりが険しいのは、知名度ゼロ、作品にまつわる知識がゼロの読者相手に「わかりにくい」を徹底して無くす必要があるためだと思います。
なお、「前提知識」については担当編集氏から勧められたこちらの本が参考になります。ドキュメンタリー作家によるビジネス書ですが、色々役立つ話があるので興味がある方は是非どうぞ。
三幕構成等を踏まえて損はないと思う。
三幕構成が「国や言語、価値観の違いを越えてわかりやすく、面白いと感じるリズム」であるならば、前提知識ゼロの読者に製品を提供するツールとしても使わない手はないと思うのですね。
ただ、三幕構成と漠然に言われてもわからないし、向き不向きがあると思うのです。
なので今回は「起承転結≒PDCAサイクル」という観点から、私なりに解釈した複数の似た要素(三幕構成等)について情報の棚卸をしてみました。
ある程度理解して自分の作品に取り入れたならば「なるほど、読みやすくなったよね」は体感できるはずです。
