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建築家の休憩室-3|冷蔵庫を見ると、日本と韓国の暮らし方の違いが見えてくる——なぜ韓国の家には、冷蔵庫がいくつもあるのか!?

韓国の住宅を見ていて、日本人が意外と驚くもののひとつに、冷蔵庫の数がある。

キッチンに一台。
その横に、もう一台。
さらに多用途室に、キムチ冷蔵庫。

最初は、ただ単純にこう思う。

「なぜ、こんなに冷蔵庫が必要なのだろう」

日本の住宅では、冷蔵庫は基本的にキッチンに置く家電である。
もちろん大型化はしているし、サブ冷凍庫を持つ家庭も増えている。
それでも住宅設計の前提としては、まず「冷蔵庫はキッチンに一台置くもの」と考えることが多い。

ところが韓国では、冷蔵庫が単なる家電ではなく、暮らしを支えるかなり大きな存在になっている。

一般の冷蔵庫。
キムチ冷蔵庫。
冷凍庫。
場合によっては飲み物用の小型冷蔵庫。

それらがキッチン、ダイニング、多用途室、補助キッチンまわりに配置される。

冷蔵庫の数は、単に「物が多い」という話ではない。
その家の食べ方、保存の仕方、家族の集まり方、そして住宅のつくり方まで映している。

つまり冷蔵庫を見ると、台所だけでなく、その国の暮らし方まで少し見えてくる。


日本では、冷蔵庫は「台所の家電」である


日本の住宅で冷蔵庫を考えるとき、まず前提になるのはキッチンである。

シンクがあり、コンロがあり、作業台があり、その近くに冷蔵庫がある。
いわゆる調理動線の中で、冷蔵庫の位置が決まる。

食材を取り出す。
洗う。
切る。
調理する。
配膳する。

その流れの中に冷蔵庫が組み込まれている。

もちろん日本でも、まとめ買いをする家庭はある。
冷凍食品を多く使う家庭もある。
共働き世帯では、週末に買いだめして平日に使うことも珍しくない。

それでも日本の冷蔵庫は、基本的には「毎日の食材を一時的に保管する場所」という性格が強い。

住宅設計でも、冷蔵庫置き場はキッチン計画の一部として考えられる。
幅、奥行き、扉の開き方、コンセントの位置、搬入経路。
そうした実務的な検討が中心になる。

つまり日本では、冷蔵庫はあくまで台所の中の家電として扱われやすい。


韓国では、冷蔵庫は「食文化の収納庫」になる


一方、韓国の住宅では、冷蔵庫の存在感がかなり大きい。

その理由のひとつは、食文化にある。

キムチ。
常備菜。
肉や魚。
スープ。
果物。
飲み物。
冷凍食品。
親族から届く食材。
季節ごとにまとめて保存するもの。

韓国の食卓には、保存することを前提にした食材や料理が多い。
一度の食事に並ぶ副菜の種類も多い。
また、家族や親族とのつながりの中で、食べ物が行き来することもある。

そのため冷蔵庫は、単に食材を冷やす箱ではなく、食文化を受け止める収納庫のような役割を持つ。

日本では、

冷蔵庫は、台所の家電。

韓国では、

冷蔵庫は、食文化の収納庫。

少し大げさに言えば、この違いが住宅の中にも現れている。


キムチ冷蔵庫は、家電ではなく食文化の延長である


韓国の冷蔵庫文化を語るうえで外せないのが、キムチ冷蔵庫である。

日本人から見ると、最初は少し不思議に感じるかもしれない。
キムチ専用の冷蔵庫がある。
しかも、それがかなり一般的に普及している。

しかし韓国の暮らしを見ていくと、これは単なる専用家電ではないことがわかる。

キムチは、ただの副菜ではない。
季節と結びつき、家族と結びつき、保存と結びつき、発酵と結びついている。

温度管理が必要であり、匂いの問題もあり、量も多い。
だから一般の冷蔵庫とは別に、専用の保存場所が求められる。

キムチ冷蔵庫は、韓国の食文化が現代住宅の中に生んだ、ひとつの装置だと思う。

参考までに、韓国で住宅の打ち合わせをしていると、まれに「キムジャンをするスペースがほしい」と言われることがある。

キムジャンとは、冬に備えて大量のキムチを漬ける韓国の伝統的な行事である。
今ではすべての家庭で本格的に行うわけではないが、それでも「大量に洗う」「切る」「漬ける」「保存する」という一連の作業を考えると、住宅の中にそれを受け止める場所が必要になる。

その延長線上に、キムチ冷蔵庫がある。

つまりキムチ冷蔵庫は、キムチを保存するための家電である前に、キムジャンという季節の行為を現代住宅に引き受けさせるための装置でもある。

ここがとても面白い。

家電の話をしているようで、実は季節の話をしている。
保存の話をしているようで、実は家族の時間の話をしている。
冷蔵庫の話をしているようで、実は住宅の話をしている。


冷蔵庫の数が、間取りを変える


冷蔵庫が一台であれば、キッチンの中に置けばよい。

しかし二台、三台になると、話は変わる。

どこに置くのか。
キッチンに並べるのか。
ダイニング側に見せるのか。
多用途室に置くのか。
補助キッチンに逃がすのか。
扉で隠すのか。
生活感として受け入れるのか。

ここから、住宅設計の問題になる。

冷蔵庫は大きい。
音も出る。
熱も持つ。
扉を開けるスペースも必要になる。
搬入経路も考えなければならない。
コンセントも必要で、壁との取り合いもある。

さらに韓国のアパートでは、キッチンまわりに冷蔵庫を複数台置くことを前提にしたような計画も見られる。
キッチン背面に大型冷蔵庫を並べる。
多用途室にキムチ冷蔵庫を置く。
補助キッチンやランドリー空間と連動させる。

こうなると冷蔵庫は、もう後から置く家電ではない。

間取りを決める要素であり、生活動線を決める要素であり、時には家の印象まで左右する存在になる。


多用途室という、韓国住宅らしい受け皿


韓国住宅を考えるとき、多用途室(다용도실)の存在も重要である。

日本の住宅でいう洗面脱衣室や家事室とは少し違う。
韓国の多用途室は、洗濯、乾燥、収納、食品保管、補助キッチン的な使い方など、かなり多くの役割を受け止める。

ここにキムチ冷蔵庫やサブ冷蔵庫が置かれることもある。

つまり多用途室は、生活の表に出しにくいものを受け止める裏方の空間である。

キッチンをきれいに見せる。
リビングをすっきり見せる。
生活感を少し奥に逃がす。

そのために、多用途室が機能している。

日本の住宅では、冷蔵庫はキッチンの中で完結しやすい。
韓国の住宅では、冷蔵庫がキッチンを超えて、多用途室や補助空間まで広がっていく。

ここにも、日韓の住宅文化の違いが見えてくる。


冷蔵庫の中には、家族の時間が保存されている


冷蔵庫の中には、その家の食べ方が入っている。

毎日少しずつ買って、少しずつ食べる家。
週末にまとめて買って、平日に使う家。
常備菜をたくさん作る家。
冷凍保存を多く使う家。
親族から食材が届く家。
外食が多く、冷蔵庫があまり埋まらない家。
キムチや発酵食品を大切に保存する家。

冷蔵庫は、食材を保存しているだけではない。
その家族の時間の使い方を保存している。

日本では、日々の買い物と調理のリズムが冷蔵庫に現れる。
韓国では、保存食、発酵、家族行事、まとめ買い、親族とのつながりが冷蔵庫に現れる。

だから冷蔵庫を見ると、暮らし方が見える。

そして建築は、その暮らし方を受け止めなければならない。

どんなに美しいキッチンを設計しても、冷蔵庫の置き場が合っていなければ、毎日の生活は少しずつ不便になる。
どんなに整った間取りでも、保存する文化を受け止められなければ、暮らしはどこかであふれてしまう。

住宅設計とは、大きな思想だけでできているわけではない。

冷蔵庫をどこに置くか。
その扉がどちらに開くか。
キムチ冷蔵庫を見せるのか隠すのか。
多用途室にどれだけ余白を残すのか。

そうした小さな判断の積み重ねの中に、実はその国の暮らし方が表れる。

冷蔵庫は、台所の中の小さな建築である。

そしてその中には、家族の時間が静かに保存されている。



冷蔵庫の中に家族の時間が保存されているように、住宅には日々の行為や記憶が少しずつ積み重なっていきます。

「空間は時間によってつくられる」という視点については、こちらの記事でも書いています。

あわせて読んでいただければ嬉しいです。


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