評価制度を変えても、現場が変わらない理由
皆さん、こんにちは。
BHLインターナショナルの東谷紳一です。
会社の人事制度や評価制度の見直しに関わっていると、よくこんな声を聞きます。
「評価制度を新しくしたのに、現場の動きがあまり変わらない」
「目標管理の仕組みを整えたのに、面談が形だけになっている」
「制度上は変えたはずなのに、結局、管理職の運用に差が出てしまう」
こうした悩みを持つ会社は、決して少なくありません。
もちろん、評価制度を見直すことは大切です。
等級、評価項目、目標設定、報酬との連動、昇格基準などを整理することで、会社が何を大切にしているのかを明確にすることができます。
特に、事業環境が変化している会社や、組織規模が拡大している会社にとって、人事制度や評価制度の見直しは避けて通れないテーマです。
ただし、ここで一つ考えなければならないことがあります。
それは、
制度を変えただけでは、現場は変わらない
ということです。
1. 制度は「仕組み」であって、現場を動かすものではない
評価制度は、組織にとって非常に重要な仕組みです。
どのような行動を評価するのか。
どのような成果を求めるのか。
どのような人材を登用していくのか。
こうした基準を明確にすることで、会社としての方向性を示すことができます。
しかし、制度そのものが現場を動かすわけではありません。
制度は、あくまで「仕組み」です。
その仕組みを現場でどう使うかによって、意味が大きく変わります。
たとえば、どれだけ良い評価項目を作っても、管理職がその意味を理解していなければ、現場では形だけのチェックになります。
どれだけ丁寧な目標管理シートを作っても、上司と部下の対話が変わらなければ、単なる記入作業で終わります。
どれだけ明確な等級定義を作っても、日々の仕事の中で「その等級に求められる役割とは何か」が語られなければ、社員の行動は変わりません。
制度を作ることと、制度が現場で機能することは違います。
ここを混同すると、制度改定はしたものの、現場には大きな変化が起きないということになります。

2. 現場を変えるのは、制度ではなく管理職の関わり方
評価制度が現場で機能するかどうかは、最終的には管理職の関わり方に大きく左右されます。
なぜなら、制度と現場の間には、必ず管理職がいるからです。
会社が掲げた評価項目を、部下の日々の行動にどう結びつけるのか。
目標設定の場面で、部下に何を期待しているのかをどう伝えるのか。
面談の中で、結果だけでなくプロセスや成長課題をどう扱うのか。
評価結果を伝えるときに、次の行動につながるフィードバックができるのか。
これらは、制度そのものではなく、管理職のマネジメント行動です。
つまり、評価制度を変えたとしても、管理職の関わり方が変わらなければ、現場は変わりません。
むしろ、制度だけが新しくなると、現場では別の問題が起きることもあります。
評価項目が増えた。
面談の回数が増えた。
記入するシートが増えた。
人事からの説明はあったが、実際にどう運用すればよいかわからない。
こうなると、制度は現場にとって「組織を良くする仕組み」ではなく、「また増えた業務」になってしまいます。
本来、評価制度は社員の成長や組織成果につなげるためのものです。
しかし、現場の管理職がその意図を理解し、自分の言葉で部下に伝え、日々のマネジメントに落とし込めなければ、制度は十分に機能しません。
評価制度を変えるときに本当に重要なのは、制度の内容だけではありません。
その制度を使って、管理職がどのような会話を現場で増やすのか。
部下の行動をどう見立てるのか。
成長課題をどう伝えるのか。
会社の方向性と一人ひとりの仕事をどうつなげるのか。
ここまで設計しなければ、制度改定は現場の変化につながりにくいのです。

3. 評価面談が「作業」になる会社と「成長の場」になる会社
評価制度がうまく機能していない会社では、評価面談が作業になっていることがあります。
シートを確認する。
点数を説明する。
評価理由を伝える。
最後に「次も頑張ってください」と言って終わる。
もちろん、こうした手続きも必要です。
しかし、それだけでは評価面談は、社員にとって「評価を告げられる場」で終わってしまいます。
一方で、評価制度をうまく活用している会社では、評価面談が成長の場になっています。
今期の仕事を通じて、何ができるようになったのか。
どこに成長の兆しがあったのか。
どの行動が成果につながったのか。
一方で、次に乗り越えるべき課題は何か。
来期はどのような役割を期待しているのか。
こうした対話を通じて、社員は自分の現在地を理解します。
そして、自分が次に何を伸ばすべきか、どのような行動を変えるべきかを考え始めます。
評価とは、本来、過去を裁くためだけのものではありません。
過去の行動や成果を振り返り、次の成長につなげるためのものです。
その意味では、評価面談は単なる人事イベントではなく、管理職にとって非常に重要なマネジメントの機会です。
しかし、その機会を活かせるかどうかは、管理職の力量にかかっています。
制度上、面談の場が用意されていても、そこで何を話すか、どのように部下の成長につなげるかが曖昧であれば、面談は形式的になります。
反対に、管理職が制度の意図を理解し、部下の成長に向き合う場として面談を使えれば、評価制度は現場を動かす力になります。

4. 制度改定と同時に、管理職の実践を変える
評価制度を変えても現場が変わらない会社に必要なのは、制度をさらに複雑にすることではありません。
もちろん、制度の設計が不十分であれば、見直しは必要です。
ただ、多くの場合、本当に問われるべきなのは、制度そのものだけではなく、制度を運用する管理職の実践です。
管理職は、評価制度の説明者ではありません。
制度を通じて、部下の成長と組織成果をつなぐ存在です。
だからこそ、評価制度を変えるときには、同時に管理職のマネジメントを変えていく必要があります。
目標設定で、会社の方針と部下の仕事をどうつなげるか。
日々の業務の中で、部下の行動をどう観察するか。
面談で、成果だけでなく成長課題をどう言葉にするか。
評価結果を、次の行動変容につなげるにはどう伝えるか。
管理職同士で、評価の目線をどうそろえるか。
こうした実践が伴って初めて、評価制度は現場で意味を持ちます。
評価制度を変えることは、組織を変えるための大切な一歩です。
しかし、その一歩を現場の変化につなげるためには、ミドルマネジメントの関わり方を変えることが欠かせません。
制度は、会社の意思を示すものです。
しかし、その意思を現場の行動に変えていくのは、管理職の日々の言葉であり、対話であり、判断であり、関わり方です。
もし評価制度を変えたのに現場が変わらないと感じているなら、一度立ち止まって考えてみてください。
制度は変えた。
では、管理職の関わり方は変わっただろうか。
評価項目は変えた。
では、現場の会話は変わっただろうか。
面談回数は増やした。
では、部下の成長につながる対話は増えただろうか。
ここに目を向けることが、制度改定を本当の組織変革につなげる第一歩になるのだと思います。

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