先祖返りが怖くて、数千枚を目視で見ていた。図面のリビジョン管理(最新版選別)を数秒に変えた話
新しい案件に着手するたびに、まず確かめることがありました。「この図面、最新版はどれだったか」。
図面のファイルは、フォルダの中に数千枚。同じ図面番号に「_R01」「_R02」「_R03」と版が積み重なっていて、その中から最新の一枚を選び出す。一見すると単純な確認作業です。でも、ここを一つでも間違えると、製造業では取り返しのつかないことになります。
古い版の図面で部品を発注してしまう。いわゆる「先祖返り」です。仕様が一つ前に戻ったまま手配が進み、出来上がってから気づく。納期は遅れ、手戻りが発生し、最悪は作り直し。たった一枚の選び間違いが、後工程をまとめて巻き込んでいきます。だから、数千枚を前にして、慎重に、神経をすり減らしながら、一枚ずつ目で確かめていました。
1.何が大変だったか(Before)
当時の状況は、こうでした。
図面PDFがフォルダ内に数百〜数千枚、版違いも含めて蓄積
ファイル名は「図面番号_R01.pdf」のように、リビジョン番号付きで保存
案件着手のたびに、設計担当者が最新リビジョンだけを目視で選別
所要時間はおよそ1〜2時間、集中力が切れればミスが入り込む
どの版で何が変わったかは、担当者しか知らない属人化の状態
つらいのは、時間がかかること以上に、「間違えられない」という緊張がずっと続くことでした。古い版を一度掴めば、誤発注から納期遅延へとドミノが倒れていく。そのプレッシャーの中で、目視確認を延々と続ける。これは、図面を扱う多くの現場で起きていることだと思います。
しかも、これを専用の図面管理システムで解決しようとすると、導入にはそれなりのコストがかかります。中小規模の現場では、なかなか手の出せないラインです。
2.「最新版を選ぶ」だけを、道具に任せた
そこで考えました。人がやるべきは、図面の中身を読んで判断することであって、「番号を見比べて最新版を拾う」という機械的な作業ではない、と。
そこで、その選別だけをやってくれる小さな道具を、AIアシスタントと一緒に作りました。やることはシンプルです。フォルダの中のファイルを集め、同じ図面番号ごとにリビジョン番号がいちばん大きいものを最新版と判断し、それだけを別フォルダに取り出す。ボタンを押せば、誰でも同じ結果を出せます。
仕組みそのものは難しくありません。ファイル名の付け方にルールがあれば、その規則どおりに最新版を選ぶ——ただそれだけです。大事なのは、人が神経を使っていた判断を、ルールにできる部分とそうでない部分に切り分けたことでした。

3.数秒で終わった(After)
道具ができてからは、1〜2時間かけていた選別が、数秒で終わるようになりました。
コーヒーを淹れる前に、最新版だけがそろったフォルダが出来上がっている。あの、数千枚を前に一枚ずつ目で追っていた時間と、古い版を掴んでいないかという不安を思うと、ずいぶん身軽になりました。誰がいつ実行しても同じ結果が出るので、「担当者がいないと分からない」という状態も解消されました。

4.本当に効いたのは「時短」ではない
1〜2時間が数秒になったのは、分かりやすい成果です。でも、現場で本当に効いたのは、その先でした。
最新版を一覧で抜き出せたことで、止まっていた「現状把握」が一気に進んだのです。並べて眺めてみると、見えてきたものがありました。設計担当者しか知らなかった改定が、いくつも見つかった。しかも他部署では認知されていないものが含まれていた。さらに、その改定にともなってコストが上がっていた部品まであったのです。
これまで「担当者の頭の中」にしかなかった改定情報が、一覧という形で外に出た。すると、部門をまたいで「次にどうするか」を一緒に考えられるようになりました。最新版を選ぶという単純作業の自動化が、結果として、部門間に詰まっていた情報共有の目詰まりまで押し流してくれた。これが、この道具のいちばんの価値だと感じています。
速くなったというより、止まっていた仕事が前に進むようになった。そして、私一人の目視ではなく、誰でも回せる仕組みになった。
なお、こうして見つかった「コストが上がっていた部品」のような気づきを、「金額」に翻訳して経営層に伝える話は、別の記事に書きました。あわせてどうぞ。
5.こんな仕事にも応用できます
「ファイル名にバージョン番号が入っている」仕事なら、同じ考え方がそのまま使えます。
契約書PDFのバージョン管理(最新版だけを抜き出す)
設計仕様書の改訂版整理
レポート類のリビジョン管理
提案書ファイルの最新版抽出
ファイル名の付け方にルールさえあれば、最新版だけを自動で拾い出す仕組みは、特別な専門知識がなくても組み上げられる時代になりました。ポイントは、人が判断すべきことと、ルールに任せられることを分けることだと思います。
6.最後に
図面管理の「先祖返り」は、製造業の現場でじわじわとコストを増やす問題です。専用システムを買うほどではないけれど、目視確認はミスが怖い。その中間にあったニーズを、小さな道具で埋められました。今回いちばんよかったのは、神経をすり減らしていた確認作業から解放されて、本来集中すべき仕事に頭を戻せたことでした。
製造業の現場で「図面のリビジョン管理が属人化している」「最新版がどれか分からなくなる」というお悩みがあれば、コメントをください。解決に役立つ、もう少し深掘りした記事をお届けします。
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